サービスの烏龍茶②
前回までのお話。
「初めて『美容院』なるものに行くことになった藤島。
意気揚々と出向くも、美容院の先制攻撃を喰らってしまう。
藤島の運命やいかに。」
ということで、カットに入りました。
美容師さん「今日はどのように?」という質問に対し
藤島「あ、はい。あの全体的に短めにしていただきたいんですけど…
あ、でも両サイドはもっと短くしてほしくて…」
美容師さん「ツーブロックみたいな感じですか?」
藤島「あ、いや、そんな感じなんですけど、そこまでいかないくらいというか…すいません。」
美容師さん「(にこやかに)大丈夫ですよ!」
自分でもびっくりするくらいか細く聞き取りにくい声、そしてよくわからない要求。
本当に温厚で、優しい美容師さんに巡り合えて助かりました…
たぶん温厚でない美容師さんであれば、既に椅子に座り身動きの取れない私の背後で持っている刃物をグッと握りしめていたかもしれない。
【もう少し、下調べしてからここに来ればよかった。】
丸腰できたことを後悔しながら、カットが始まりました。
カットは滞りなく進みました。私のイメージではこういう時、軽快なトークを求められるものだと思っていましたがそういうこともなく淡々と切られていました。
(初対面だけど、嫌われたのかなとも思いましたが、シンプルにコロナ禍だから配慮されていたのだと思います。)
ちょっと話変わりますけど、
切られているときってどういう体制で何をしているのが正解なんでしょうか。
席に案内された時、
「こちらのタブレットに雑誌など入ってますのでお好きにご覧ください。」
と説明していただけましたが、
1000円カット出身の私には「切られている時間に雑誌を読む」という文化がありませんし、そもそもカット中に雑誌って読んでいいの?わからん。
隣の女性はすっごい読んでいましたが。
カット前にちょこっと触って、出だし2行だけ読んだ黒柳徹子さんの記事が気になりつつも、動いて良いのか、わからないのでジッと鏡に映る自分の眉間を凝視していました。
(誰か教えてください。)
【めちゃくちゃ顔こわばってるな…】
そんな事を考えていると、カットしてくれている美容師さんがアシスタントにコソっと耳打ちしているのがわかりました。
【なんだ?】
と思うと同じくらいのタイミングで、そのアシスタントさんらしき方が
「サービスでお飲み物ありますがどうしますか?」と。
【あぁ、覗ってみたいなことを耳打ちしてたのか…いただこうかな、いや、これはもしかして自分が今何をチョイスするか試されているのか?もしここで選択をミスったら…バッドエンドか?それとも別のルートにつながるのか。コーヒーか?いや、コーヒーはもしかしたらガムシロップとミルクを入れてもらう手間があるからダメだ…そもそもサービスってなんだ?このサービスを受け取ることを決めた時点で間違いなのか?え?気を使っていただいてるだけ?これ何?サービスって追加料金発生するんだっけ?これどっち?え、ヤダ。落ち着いて。大丈夫だから。】
「え、あ、じゃあー、その、うーん、烏龍茶で。」
心の中では底辺デスノートの心理戦繰り広げながら、返答にはあたふたしていました。
私の烏龍茶を聞いてニコッと微笑みながら
「かしこまりました」
と去っていくアシスタントさん。
【あぁ、情けない。何をしているんだ私。SUBWAYの注文をお前はうまくできるだろう。あの要領で頑張れよ!!!】
そう自分を鼓舞しました。
しばらくして、蓋をし、細いストローをさした烏龍茶と茶菓子をオシャレなお盆に乗せて、目の前のテーブルに置いてくださいました。
この時点で、私は緊張もあり喉がカラカラ。一刻も早く烏龍茶を頂きたかったのですがここで先ほどと同じ問題が発生しました。
【え、これいつ飲めば良いの???】
【今は、カット中。でも、髪の毛が入らないように蓋をしてくださっているということは、これは今飲んでいいのか。
でも、切ってる最中に動くのは違うよね?
で、これ雑誌の場合は、
テーブルの上の端末を取る。→読む。
で良いけど、烏龍茶の場合は
テーブルの上の烏龍茶を取る。→飲む。→テーブルに戻す。
って2回行動しなきゃいけないよね。めっちゃ迷惑じゃない?
しかもスムーズに2回行けるか?私バラモスじゃないよ】
(薄いドラクエの知識)
とテンパってるのを察してくれたのだろう。
「あ、今飲んで良いですよ!」
と美容師さんが声をかけてくれました。
(今思うと、美容師さんはだした烏龍茶に手を付けないのが不気味で戸惑っていたのかもしれない。)
【あぁ、情けない(2回目)】
また自分がみじめに感じました。
でも、ここでそういって貰えなかったらあと少しで
「すいません、この烏龍茶はいつ飲むのが正しいですか?」
と聞いていた。助かった。
思えば、ずっと美容師さんに助けられている。
最初に、オシャレ過ぎて先制攻撃喰らったけど、出迎えてくれてたんだな。なんかもっと私もオシャレな服にすればよかった。
【悔しいな】
ついには美容院で、しかもカットされる側の人間が抱くはずのない感情になりました。
その後は何事もなく、無事にカットが終わり2回目のシャンプーへ。
シャンプーが終わり席に戻った時に、無意識に私の口から
「すいません。」
と発せられていました。
美容師さん「何がですか?」
藤島「すいません、初めてで。本当にどうしたらいいかわかりませんで、やりにくかったですよね…」
美容師さん「いえいえ、大丈夫ですよ、気にしないでください!何で今回美容院を予約していただいたんですか?」
藤島「あ、常々『美容院で切ってみなさい』と言われてまして…」
美容師さん「そう言われてくる方は、初めてですね。」
今思えば、「やりにくかったですよね」とお前が心配することじゃねーよとは思いながらも、少しだけ気持ちがほぐれました。
ブローも終わり、お会計後
「こちら、メンバーズカードをおつくりしました。また、お待ちしております。」
と言いながら、出入り口まで見送りに来てくださる美容師さん。
最後まで凄く丁寧に対応していただきました。
こうして私の初めての美容院は幕を閉じました。
なんやかんや言いましたが、とても楽しかったです。
そして烏龍茶の攻防辺りから、
【絶対にまたこよう。リベンジしよう。】
そう心に決めました。
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以上が、藤島の初めての美容院でした。
はぁ、こんなこともうまくできないのかと痛感させられた苦いデビュー戦でしたね。
分けるほどでもない文章を分けてしまい申し訳ありません🙇♂️
これにて、「サービスの烏龍茶」は完結です。
ありがとうございました!!!