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  • 妄想フルスロットル

    欲望のままに爆発させたありがちな妄想。 誰でも一回はしたことのある妄想。

  • --キリトリ--

    短編集。 色んな人の日常のキリトリ。 頭の中のおはなし。

最近の記事

不幸な小説家

さゆりは小説家だ。 小説家といっても、素人に毛が生えた程度だ。 いつもはブログに短編ストーリーを掲載している。 コメントが大体100くらい、いいねが300くらい。 これ1本で食べていけるわけもなく、昼間は一般企業に勤めている。 小説の収入は月に約8万円。会社からの給料が20万円。 二つ合わせるとまあまあの収入になる。 でも、どちらかが欠けたらやっていけない。 さゆり自身、どちらかの専業になりたいとも思っていない。 社会で生きるには、会社なり何かしらの団体に所属していること

    • 砕けて、それから。

      見えるものから色が無くなっている。 いつからだろう。 どうして今まで気付かなかったのだろう。 もう長くこんな感じの景色を見ていた気がする。 たまに寄っていた商店が潰れていたことに初めて気づいた。 毎日通っているのに。 いつもの通勤ラッシュ。 乗車率は100パーセントをゆうに超えている。 これに毎日40分揺られる。 社会人とはこういうものだ。 会社に着くとデスクにはまた大量の書類が置かれている。 どうしてだろう。 昨日終電間際まで残業して全部片付けたはずなのに。 「追加

      • 3番線上の情操

        電車はダイヤの乱れもなく、通常通り順調に進んでいる。 行きたくもない目的地が刻一刻と迫ってくる。 私は大きくため息をついた。 今日は結婚式。 天気は快晴。雲ひとつない。 秋も深まり昨日は肌寒かったが、今日は日差しが暖かい。それはそれは結婚式日和だ。 グリーン車の窓から見慣れた景色を眺める。 ああ、本当に行きたくない。 今日の主役は私にとってはどうでもいい人間だ。 大学時代、同じダンスサークルにいただけ。 私は彼女と2人で遊びに行ったこともないし、卒業してから会っ

        • ガラス窓の向こう

          私の職場の真向かいは美容室だ。 1ヶ月前にオープンしたばかりの新しいお店で、男の人が1人でやっている。 大きなガラス窓からは中がよく見えて、私は仕事中ついそのお店を見てしまう。 新作のワンピースは珍しいデザインで、桜の花柄だ。白地に淡いピンクが良く映えている。 少し寒い日はカーディガンと合わせるのも良いかもしれない。 今日はこれを着せよう。 ショーウィンドーに並べるマネキンの着せ替えは新入社員の私の担当だ。 作業は手早くやらなければならない。 ショーウィンドウは通りから丸

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        記事

          13:30の憂鬱

          晴れている。 こんなに雲ひとつない青空は久しぶりだ。 青さが目にしみる。 冬物のスーツでは少し暑い。 そういえば今日は天気予報を見ていなかった。 こんなに気温が上がるなら着てこなかったのに。 コーヒーを買いに早くコンビニに行こう。 どうもここの会社とは合わない。 営業先の担当者で好きなヤツなんていないが、ここは特に嫌いだ。 呼びつけておいて無駄話で時間を潰し、結局何も買わない。いつものことだ。 田舎の中小企業は相当暇なのだろう。 自慢じゃないが、俺の会社はそこそこ名の

          13:30の憂鬱

          無難なプレゼント

          女性へのプレゼントといえば、 コレでまぁ、いいでしょ!というものがいくつかある。 その代表が石けんだ。 特に、LUSHやBody shopなんて鉄板中の鉄板。 貰ったことのない女子はたぶんいないと思う。 女の子はいい匂いのものや綺麗なものが好きだという単純な思考によって選ばれた石けん。 大きく外れもしないが、当たり前すぎてたいして喜ばれもしない一品だ。 かくいう私も何度か石けんを貰ったことがある。 1番覚えているのは、大学4年のことだ。 3

          無難なプレゼント

          新宿の占い

          私はアラサーOLである。 お察しの通り悩み多きお年頃だ。 そこに独身彼氏なしなんて付加価値もつけば、もうやってられなすぎて天を仰ぎたくなるほどだ。 土曜日。 昼過ぎに携帯のバイブレーションで起こされた。 半開きの目で確認したメッセージには「結婚することになりました!結婚式にはぜひきてね!」とビックリマークとハートが飛び交った文章だった。 こんなメッセージは今年に入ってもう4通めだ。 既読を付けてしまったからには返さざるを得ない。 「おめでとう!!ぜひ行くよ!!」と同じ

          新宿の占い

          8月の月曜日

          傷心である。 月曜日はただでさえ最悪なのに輪をかけて最悪な気分だし、相変わらず死ぬほど暑い。 たぶん人生で1番最悪な月曜日だ。 別に告白した訳じゃない。 人伝てに彼女がいると聞いたのだ。 プライドの高い私は、「えーがっかりー!でもかっこいいもんねぇ!じゃあ今日の合コンは尚更イケメン来てもらわないと困っちゃう!」なんて思ってもない事を言ってヘラヘラしていた。 彼は営業マンで、私はその取引先の事務員。 彼にしてみればただのビジネススマイルだったのだろうが、それは見事に私を

          8月の月曜日

          土と東京

          東京に行きたいレストランがある、奢るから行こうと言われ、遥々2時間かけて来た。 着いたのはおしゃれなレストラン。 しかも1万円もするコースを予約してくれたらしい。 テンション高めに席に着く。 何料理かはお楽しみにって言われてた。 フレンチ?イタリアン? わくわくしながら発表を待つ。 「今日はね、土料理を食べに来たんだよ」 は?何言ってるのこいつ。 冗談下手すぎでしょ。 しかも聞き直しても頑なに土料理と言い続けてる。 しつこい。大概にして。 しばらくして本当に「