育児戦争/家政夫と一緒。~その38~
春眠暁を覚えず
「むにゃ⋯⋯すぴすぴ⋯⋯」
「⋯⋯ねーさん?
わ、ねーさんねちゃってますよ!」
「こら、凛。
起きたばかりだろうが。さっさと目を覚ましたまえ、片づけが始まらん」
「むにゃ⋯⋯。
しゅんみんあかつきをおぼえず、っていうじゃない⋯⋯。
はるなんだからすきなだけねかせてよー⋯⋯」
「やれやれ⋯⋯。
孟浩然には悪いが、ねぼすけがコレを詠うとずぼらの言い訳にしか聞こえんな」
「あう?」
春眠暁を覚えず
処処啼鳥を聞く
夜来風雨の声
花落つること知んぬ多少ぞ
「春は夜明けに気付かぬほどに深く眠ってしまう。
目覚めればあちらこちらで鳥が鳴いている。
夜半の嵐のおかげで花もたくさん散ってしまったらしい。
⋯⋯さて、桜。姉の吐いた言葉にこの歌をどう取る?」
「えと⋯⋯おはながたくさんふきちらされてしまうほどのあらしがあっても。
それにきがつかないくらい、いっぱいねむっちゃったんですよね⋯⋯?
くすくす⋯⋯なんだか⋯⋯」
「(ぴくっ)」
「ク、まあ普段がずぼらな輩が吐いてよい言葉ではなかろうな。
ああ、自称乙女が聞いて呆れる。
孟先生に同情せざるを得ない」
「(がばっ!)
ちょ、ちょっとーー! ひどいよー!
しょうらいまちがいなく”こくみんてきアイドル”にすいせんされちゃうようなおとめ、りんちゃんにたいして、ひどいいいようじゃないー!
そんなにずぼらじゃないし、わたしはせんさいなおんなのこなんですー!」
「ああ、繊細ね。
地獄耳の間違いのような気もするが」
「むうー⋯⋯。
もーいいもん。めがさめちゃった。
で、なにをやるって?」
「にわのおかたづけですよ」
「え? にわがどうかしたの?」
「⋯⋯⋯⋯」「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯えと⋯⋯。
ねーさん⋯⋯きのうのよる、すごいあらしがあって⋯⋯」
「ん? あらし?」
「何も言うまい⋯⋯」