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嫁という生き物は、いつもたった一つの言葉を望んでいる。

嫁仕事が増えた。

嫁仕事とは私が勝手に作った言葉で「嫁として期待される役割を果たすこと」であり、そのほとんどが義両親との会合や、夫の友人たちとのホームパーティーで発動する。

まだよく知らない相手とニコニコ当たり障りのない話をすることは、人見知りにはなかなか辛い時間なのだ。


大前提として、夫や夫を取り巻く皆様は、みんな神のように優しい。


夫が根っからのピースフルフューマンだということと、「長年転勤族だったあいつが、地元に嫁を連れて戻ってきた」ことで、より一層私への当たりも柔らかいものになっている。

そんな状況であっても、これまでの過去を何一つ共有していない相手と、長時間笑顔で過ごすのはパワーを使うものである。


結婚前に一度、夫に泣いて不満をぶちまけたことがある。

まだ付き合って半年ほどの初々しい時期に、初めての夫の地元で、幼馴染が集うハロウィンパーティーにお呼ばれした。

「地元の友達に紹介する」

この通過儀礼はアラサー女子にとてつもない期待を抱かせる。

しかも、「人生で初めて彼女を見せるんだ」なんて言われれば、私の猫かぶり具合も相当なものである。

それがいけなかった。


夫(当時は彼氏)の久しぶりの帰省、しかも彼女連れ、ハロウィンの仮装のテンションも合間って、昼から始まった地元民の宴は長期戦になだれ込んだ。

みんながお酒を飲み、夫の妻たちが顔見知り同士で内輪の話をはじめ、当の夫たちは地元のアイツはどうしてる、だのの昔話にふけっている。

散々かぶってきた猫も、いい加減、夜の21時も過ぎれば化けの皮が剥がれてくる。

夫は男勢の輪に入って帰ってこない。

最初は気を使ってくれていた妻たちは、すっかり酔っ払って各々マシンガントーク。

妻の輪の端っこで、ちびちびお酒を飲みながら、ひたすら笑顔を作る私。


なんだろう、孤独でしかない。


なぜ夫はこちらに帰ってこない?

なぜ知り合いが一人もいないこの場で、何時間も過ごさねばならない?

笑顔を作ってはいるけれど、初対面の人の輪に置き去りにされて本気で楽しいと思ってるの???


そんな夫への「わかってくれよ」の思いが溢れ、こっそりトイレで涙が爆発。

運よく30分後におひらきになったが、何も知らずにほろ酔いの夫に、初めて関西弁で本気の激切れ&号泣をかましたのでした。


この事件で夫は相当反省したようで、その後は必ず、友人の飲み会でも義実家との外食でも、長時間わたしの隣を空けることはなくなった。

そして、会合が終わるとその都度「今日も頑張ってくれて、ありがとう」と声をかけてくれるように。


結婚して3年。

夫の地元に引っ越して、もうすぐ1年。


知り合いが誰もいない土地で、夫以外の知り合いがいないこの世界で、ふとした時のこの一言は本当に、救われる。


嫁はみんな、人知れず頑張っている。


名もなき家事と戦いながら。

嫁という立場と戦いながら。


もしこのnoteを男性で読んでくれている方がいるならば、今日は一言奥様に「いつも頑張ってくれて、ありがとう」と声をかけてあげてほしい。

それが本音でも、たとえ本音じゃなくても。

きっとあなたが気づかない何かを、頑張ってくれているはずだから。




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ぱる子
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