メンバーシップ執筆者紹介 #2 佐藤実紀代

能登半島復興支援メンバーシップ「つなぐSupport NOTO note」に向けて

こんにちは、初めまして。私は福井県大野市に住みながら、本を作る本屋「HOSHIDO」を営む編集者・佐藤実紀代と申します。今回、「受け継がれたローカル線 〜富山・石川・福井 北陸三県鉄道讃歌〜」の書籍編集をきっかけにご縁をいただき、能登半島復興支援メンバーシップ「つなぐSupport NOTO note」の発信者の一人として参加させていただくこととなりました。
 
私がこのメンバーシップの中で発信していきたいテーマは、「北陸の本屋さん」です。
 
このテーマに至るまで、まずは私の本屋にまつわる生い立ちをお話ししたいと思います。
 
私は福井市の山間に生まれ、まわりには本当に山しかない、自動販売機に行くにも自転車で10分、バス停までは30分かかるような田舎に育ちました。店もない、友達もいない環境にあった私は、幼い頃から「本」が好きで、本さえあれば何時間でも部屋で退屈しない毎日を過ごしました。

とっても山が穏やかな地元の田舎の風景です

週末になると、父や母が街の本屋に連れて行ってくれ、本棚から本棚へと新たな本を探し回ることが本当に楽しみでした。さまざまな分野の本に触れ、世界が広がっていくことで、小さな私の想像力は外へと飛び立つことができました。
 
高校になるとバスや電車を利用して、自分で自由に移動ができるようになり、本屋や図書館など、本のある場所へ片っ端から訪れるようになりました。すると、本を作る現場に興味を持ち始め、ライターやブックデザイン、DTPといった仕事があることを知りました。
 
私は大学を卒業し、金沢市の印刷会社に就職すると、書籍用のDTPの仕事に就きました。しばらくその仕事を続けた後、本にまつわる仕事を経験したいと福井に戻り、書店に転職。さらに、編集の仕事を身につけるため、デザイン事務所に転職し、フリーランスの編集者として独立しました。

自分で作った本や古本、リトルプレスなどを並べてイベントに参加することもあります

スマートフォンが一般的になってきた頃でしょうか、徐々に本の売れ行きが下がり始め、コロナウイルスによってそれに拍車がかかり、多くの本屋さんが街から姿を消していきました。ちょうどその頃から、私はライターとして各地の本屋さんに取材し、声を聞き、記事を書くようになりました。(主に「新文化」という業界専門誌で書店ルポを担当しています)
 
本を作る人があれば、それを読者に手渡すための人が必要です。作り手に対し、本屋は「渡し手」として大事な役割を担います。しかし、本屋さんの減少の波は今もまさに続いており、どの本屋さんもアイデアを駆使して、いかに生き残ることができるかを模索しておられます。
 
そして、2024年1月1日、能登半島を中心として、北陸地方を大きな地震が襲いました。それによって休業・閉業に追い込まれた書店は18店舗にも及ぶと知りました。(日本出版取次協会【第6報】「2024年1月1日能登半島地震」書店被災状況より 2024/1/17付
 
自然災害は、どこにいても起こる可能性があり、仕方のないことであるとは知りながらも、本屋という本を手渡す場所、本に触れられる場所がことごとくなくなっていく未来が来てしまうようで、私は大きな恐怖を覚えました。

ショッピングセンター「エルパ」の中にある本屋さん「AKUSHU」の店長・美香さんの選書は愛に溢れています。

私が今できることは何だろう?と考えた時、この北陸の地に根付く街の本屋さんの今を伝えたいと真っ先に思い付きました。北陸地方には、新刊書店はもちろん、古本屋、雑貨屋のような本屋、ブックカフェなど、個性的なお店がたくさんあります。それに応じて、魅力的な店主がおられます。
 
この記事を書くことは、私にとって本屋さんへの恩返しです。本屋さんが無かったら、今の私はありません。正直に言うと、途中で息絶えていたかもしれない時期もあります。そっと寄り添い、支えてくれた場所が、これからもずっと残っていて欲しいという願いを込めて、「北陸の本屋さん」を書き、伝えたいと思います。
 
気になった本屋さんが見つかったら、ぜひ足を伸ばして、お店を訪れてみてください。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
 
HOSHIDO 佐藤実紀代


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