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10万人の研究によって明らかになった「こんな人は離婚する可能性が高い」
「どういう人が離婚しやすいのか?」と聞かれると、あなたはどんなイメージを持ちますか? 性格の不一致、金銭トラブル、不倫……夫婦に起きる問題はいろいろありますが、実はその背景には、もっと根本的な“価値観”が大きく関わっているという研究結果があります。
今回ご紹介するのは、ヘブライ大学の研究者サリー・メンサー(Sari Mentser)さんらが行った国際大規模調査。世界55か国以上、10万人を超える人々を対象に、離婚のしやすさと「個人の価値観」「社会や文化の価値観」の関係を分析したところ、興味深いパターンが浮かび上がりました。この記事では、その研究のポイントをわかりやすくまとめつつ、「夫婦関係をどうすれば円満に保てるのか」について、私が日々のカウンセリングで感じていることも交えながら解説していきます。
1. 離婚リスクに影響する「2つの価値観」
サリー・メンサーさんらの研究の核心は、「離婚リスクを左右するのは“個人の価値観”だけではなく、その人が所属する文化や社会の価値観も大きく絡んでいる」という点です。これは、直感的に「そりゃそうだよね」と思われるかもしれませんが、実際にこれを複数の国・大規模サンプルで実証したところに意義があります。
個人の価値観
「自分が人生で最も大切にしていることは何か?」
たとえば、「家族を守るのが第一」「自己実現や夢を最優先にしたい」など、人によって異なりますよね。文化・社会の価値観
「周囲は離婚をどう捉えているか?」「家族の伝統や社会ルールが重視されるのか?」
国や地域によって、離婚を受け入れる度合いは大きく違います。
研究では、「自律性 vs. 集団帰属」という文化の軸と、「保守 vs. 開放」という個人の軸が、特に離婚のしやすさに深く関わっていると示されました。ざっくり言うと、「自分のやりたいことを重視する人」が「離婚に寛容な文化」にいれば、そりゃ離婚しやすくなるよねという話です。ただし、それを世界55か国以上・10万人以上を対象にデータ検証したことで、曖昧な印象ではなく、かなりはっきりとした傾向として裏付けられたのがポイントです。
2. 文化レベルの価値観:自律性 vs. 集団帰属
まずは「文化」の価値観について。サリー・メンサーさんらは、世界のさまざまな国・地域を比較するにあたって、次の2つを軸にしています。
● 自律性(autonomy)を重視する文化
個人の自由や独創性、自己表現を大切にする
「嫌なら離婚も選べばいい」「人生は自分で切り拓くもの」という考え方が受け入れられやすい
結果として、社会全体の離婚率は高くなる傾向がある
● 集団帰属(embeddedness)を重視する文化
社会や家族の一員としての役割やルールを尊重する
「家族の和を守るのが当然」「離婚なんて世間体が悪い」といったプレッシャーも強い
結果として、離婚率は低くなる傾向がある
いわゆる「個人主義が強い国は離婚しやすい」と言われるのを、データで裏づけたかたちです。日本も近年は離婚が増えてきたといわれますが、欧米と比べるとまだ「結婚を解消するのはなるべく避けたい」という空気も根強いですよね。これはまさに、日本が「自律性」と「集団帰属」の中間くらいに位置しているからかもしれません。
3. 個人レベルの価値観:保守(伝統・安定) vs. 開放(刺激・自由)
次に、「その人自身が何を大事にしているか」という個人レベルの価値観です。研究では、「保守(conservation)」「開放(openness to change)」という2つの方向性が、離婚リスクを予測するうえで非常にわかりやすいと示されました。
● 保守(conservation)
伝統や社会規範、安定を重んじる
「多少の不満があっても、結婚は守るべきもの」「家族は絶対に壊しちゃいけない」という意識が強い
結果として、離婚は最終手段になりやすく、実際の離婚率も低め
● 開放(openness to change)
刺激的な体験や自由度の高い生活、自分のやりたいことを優先
「合わないなら別れるのも仕方ない」「我慢してストレスを抱え続けるよりは離婚して新たな道を探したい」
結果として、離婚率は高くなる傾向がある
もちろん、「保守vs.開放」のどちらか一方に完全に振り切れている人ばかりではありません。人によっては「状況に応じて態度が変わる」ということもあるでしょう。それでも傾向として、「伝統や安定を最重視」する人は離婚しにくく、「自分の自由や変化を求める」人は離婚を選びやすいというのは多くの人が納得できる話ではないでしょうか。
4. 具体的な事例:こんなタイプの人は離婚しやすい?
では、もう少し具体的にイメージしてみましょう。ここでは架空のAさん夫婦を例に挙げますが、私が日々いただくご相談でも「似た構図だな」と感じることがよくあります。
事例:Aさん夫婦
Aさん(夫)
趣味や仕事に情熱を注ぎたいタイプ。新しい挑戦や刺激が好き。
親戚付き合いや冠婚葬祭など、昔ながらの習慣にはあまり興味がない。
結婚しても「自分の時間と自由を大切にしたい」と思っている。
Aさんの妻
実家や親戚とのつながりを重んじる。家族行事や家系の伝統も大切にしたい。
安定して平穏な暮らしを築くことが幸福と考える。
「結婚したからには協力して家を守るもの」と強く思っている。
離婚リスクはどうなる?
Aさん(夫)は、ある程度うまくいっていたとしても、結婚生活が自分を束縛するように感じられるとストレスが溜まりやすい。
妻は妻で、「夫が家族付き合いを嫌がる」「そもそも伝統を軽視している」と感じると不信感を抱く。
もし周囲の文化が「合わないなら離婚も仕方ない」「再スタートも自由」という雰囲気なら、Aさんは不満が爆発したときにサッと離婚を選ぶかもしれない。
逆に、「離婚なんて絶対にダメ」「みんな我慢して結婚を継続しているのに」という環境だと、苦しいまま関係を続ける可能性も高い。
このケースでは、夫が「開放」寄り、妻が「保守」寄りですよね。もし二人とも「自分こそ正しい」と譲らないまま、さらに外部の圧力(社会や家族の価値観)がそこに加わると、どこかで大きな衝突が起きるリスクが高まります。実際、私のカウンセリングでも、この価値観のズレが根本にあってギクシャクしている夫婦は多いです。
5. 夫婦関係を保つためのヒント:価値観の違いを乗り越えるには
ここまで読んで、「うちは価値観が違うかも…もう離婚一直線?」と不安になる方もいるかもしれません。でも大丈夫。価値観の違いがあっても、夫婦が互いに理解し合い、協力して乗り越える余地は十分にあります。以下、私が日々のカウンセリングでお伝えしているポイントを簡単にご紹介します。
1. まずは「お互いの価値観」を言葉にして確認する
「あなたは何を大事にしてる?」「私はここを譲れない」など、具体的に話す機会を設ける。
普段の会話は、どうしても日常の用事や愚痴ばかりになりがち。意識的に「価値観」にフォーカスした対話の場をつくるだけでも、驚くほど理解が進むことがあります。
2. 自分たちがどんな文化的な影響を受けているかを自覚する
日本であれば「親族からの反対」「職場の目」「子どもがいるなら離婚は避けたい」という社会的プレッシャーも。
逆に都市部や欧米的な風潮が強いコミュニティでは、「離婚なんて珍しくない」という後押しがあるかもしれない。
周りの文化や常識を客観視できると、自分たちの問題を整理しやすくなります。
3. 第三者の意見を取り入れる
夫婦だけで話し合うと、どうしても感情的になったり平行線になりやすい。
信頼できる友人やカウンセラー、あるいは夫婦カウンセリングに行くのも一つの手です。
「どちらが悪い」を決めるのではなく、お互いが納得できる落としどころを探すのが目的。
4. “離婚しない”だけがゴールではない
もちろん、離婚せずに仲良く暮らせるならそれがベストかもしれません。でも、長年苦しんでいるなら、別の選択肢を検討すること自体が悪いわけではありません。
大事なのは、「自分たちは何を優先したいのか?」をきちんと話し合ったうえで決めること。
どちらかが強いられる形だと、結局どこかで不満が爆発してしまいます。
6. まとめ:離婚を選ぶかどうかは、「自分たちが何を大事にするか」で決まる
ここまで、サリー・メンサーさんらの研究をもとに、「文化レベルの価値観(自律性vs.集団帰属)」と「個人レベルの価値観(保守vs.開放)」が、離婚リスクに大きく影響するとお話ししてきました。要するに「自由を求める人が、離婚を肯定的に捉える文化の中にいれば離婚しやすいし、伝統を重んじる社会ではよほどのことがない限り離婚に至りにくい」ということですね。
ただ、何度も強調しておきたいのは、離婚に「絶対にこうすべき」という正解はないという点です。結婚を続けるにしても、別れるにしても、結局は「自分たちが納得できるかどうか」が重要です。価値観のズレに気づいたとき、すぐに離婚するのではなく、お互いがどこまで歩み寄れるのか話し合う余地はあるかもしれませんし、逆にずっと我慢していて心身を害するくらいなら、離婚を選んだほうが前向きに生きられる場合もあります。
僕がこれまで多くの夫婦と接してきて感じるのは、「実は自分でもはっきり意識していなかった価値観」が衝突の原因になっているケースが多いということです。たとえば「自分はもっとキャリアを重視していいと思っていた」「相手は家族優先が当たり前だと思っていた」など、その当たり前がぶつかるとき、初めて深刻なケンカが発生する。これは、お互いが同じ価値観だと思い込んでいたからこそ起こる悲劇かもしれません。
そう考えると、「価値観を意識的に話し合う」ことは、夫婦関係をより良くするうえで非常に有効なステップです。離婚する・しないに関わらず、一度じっくり時間をとって、「何を最優先したいのか」「どこなら譲れるのか」を確認してみることを強くおすすめします。それでも解決しない場合は、専門家の力を借りてみてもいいでしょう。「カウンセリングなんて大げさ」と思う方もいるかもしれませんが、人生の大切なパートナーシップを守るためなら、一度試してみる価値は十分にあるはずです。
おわりに
離婚は人生を左右する大きな問題ですが、それを「ただ嫌だから」と感情的に決めてしまうと、後になって「もっと早く相談すればよかった」「ちゃんと価値観をすり合わせておけばよかった」と後悔するかもしれません。逆に、価値観をしっかり理解したうえで離婚を選択すれば、その後に晴れやかな気持ちで新しい一歩を踏み出す人もいます。
この記事が、少しでもあなたやあなたの周囲の夫婦関係を考えるきっかけになれば嬉しいです。何か迷ったときは、この研究が示す「個人の価値観 × 文化の価値観」という視点を思い出してみてください。そして「自分たちは何を大事にしているのか?」という原点に立ち返ってみると、意外な解決策が見つかるかもしれませんよ。
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