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営業メンバーの育成に”BANT”情報を応用する方法

営業プロセスにおいて案件の質を評価する手法として広く知られる「BANT(Budget、Authority、Need、Timeframe)」。

従来、この手法は主に案件の確度を判断するために用いられてきました。しかし、その適用範囲はそれだけにとどまりません。実はメンバーマネジメントで活用することで大きな効果を産む事ができます。

本記事ではBANTを営業メンバーの育成に応用するアプローチ「BANTマネジメント」について解説します。


1.BANT条件

まず、BANTの基本的な概念を再確認しておきましょう。

・Budget(予算):顧客が製品やサービスに投資できる金額
・Authority(決裁権):決定権の有無ならびに決裁権を持つ人物の特定
・Need(必要性):顧客のニーズと提案内容のマッチ度
・Timeframe(タイムフレーム):導入時期

多くの企業では、このBANT条件の埋まり具合を見ながら、案件の確度をデジタル化して、当月予算の達成確率をはかります。

もう一歩踏み込んで、このBANT情報を営業組織の底上げに活用する考え方が「BANTマネジメント」です。

2.営業メンバー育成におけるBANTの活かし方「BANTマネジメント」

もし、社内の営業ダッシュボードにBANT情報が記載されているのであれば、それを営業メンバーごとに分類、分析してみてください。

メンバーごとに傾向が分かれるのではないでしょうか?

複数プロダクトやソリューションを扱う企業であれば、プロダクト/ソリューションごとに傾向が分かれるのではないでしょうか。

・Bが埋まらないケースが多く見受けられるメンバー。
・Tが埋まらないケースが多く見受けられるメンバー。
・Nが埋まっていないのにTが埋まっているメンバー←これはちょっと問題ですね・・汗

この傾向をもとに「メンバーの営業トークやヒアリング項目を見直す」マネジメントを行うことで見違えるようにメンバーの成果が上がるケースがあります。

実は上記の傾向はちょっとした「ノウハウ」の不足や「メンタルブロック」により発生しているケースが多いからです。

3.「B」が埋まらないメンバーへのフィードバックとトレーニング

「B=予算」が埋まらないメンバーの問題は「ノウハウ不足」である傾向が多く見受けられます。


A.「ちなみに今回予算はおいくらですか?」


B.価値提案する前に「〜〜万円です」と価格提示してしまう。


C.「他社様ですと月額50万円くらいでスタートして、狙う成果はこれくらいというケースが多いです。もちろんもう少しスモールスタートすることも可能です。」


D.「いくつかプランがありますがご検討外の金額をお出ししてしまうわけにもいきませんので、イメージとしては〜〜万円と〜〜万円。どちらでしたら実現可能性がありますか?」


聞き方一つで得られる答えが大きく変わってしまうのが、予算に関するヒアリングです。AやBのようなヒアリングをすれば、当然Budget(予算)の欄には「×」が並んでしまいます。

また、提案先企業の年商規模から一般的な消化可能予算の平均値を事前に割り出すこともできます。

Bが埋まらないメンバーには「予算を聞き出すヒアリング方法」や「予算予測の立て方」について丁寧に情報を提供しながらロープレを繰り返してみてください。

1〜2ヶ月もすれば、そのメンバーのBの埋まり方が変化しているはずです。

4.「T」が埋まらないメンバーへのフィードバックとトレーニング

「T=導入時期」が埋まらないメンバーの問題は「メンタルブロック」である傾向が多く見受けられます。

人間だれしもそうですが、人から「断られる」とショックを受けます。ただし、営業の仕事にプロとして取り組む以上、必ずこのメンタルブロックは取り払っておく必要がありますね。

特に営業の仕事を始めたばかりの若手メンバーには、この傾向が多く見られます。

Tが埋まらないメンバーは「今月はこれだけ案件があるので必ず達成できます」と会議で発言するケースが多いです。しかし、多くの場合未達に終わるのが現実です。

このようなケースでは、「仕事は期限があってこそのもの」「断られるのは悪ではなく、結論を得られない事が問題である」という大前提の考え方を根付かせるマネジメント方針や評価制度の構築が効果的です。例えば、エントリークラスの行動評価における評価軸に「断られた数」を加えるなどの施策が挙げられます。

5.「A」が埋まらないメンバーへのフィードバックとトレーニング

「A=決裁権」が埋まらないメンバーの問題は「ノウハウ不足」である傾向が多く見受けられます。

ここもヒアリングのトーク設計とロープレを繰り返すだけで大きく改善することが可能です。

BANTの中でも手を打つことで、特に即効性のある改善が可能な項目です。

ストレートに「決裁権はありますか?」と聞いてしまえば、出入り禁止になりかねませんね。

「このようなサービスの導入については、どなたが最終決定されますか?」

「もし、御社内でご説明がご必要な方がいらっしゃれば、私もご一緒に提案させていただきます。」

というのが一般的なAの確認方法ですが、これらの方法を知らないと永遠にAを埋める事はできません。ここは割と知っているか知らないかの差が大きいところなので、もし不自然にAが埋まっていないメンバーがいれば、普段どのようなヒアリングを行っているか確認をとった上で改善策を回していきましょう。

6.「N」が埋まらないメンバーへのフィードバックとトレーニング

「N=ニーズ」が埋まらないメンバーは「問題と課題の違い」が理解できていないケースが多いです。

ここは少し解決にむけた難易度が上がる部分ですね。

「頭が痛い」と言って病院に来た患者さんに「では頭痛薬を処方します。以上。」というドクターと、「頭が痛いのですね。いつ頃からですか?その時から今まで何か変わった出来事はありましたか?」と問診してくれるドクター。どちらが信頼できますか?

あえてこねくり回す必要はありませんが、誰しも「自分の課題はなかなか見えづらい」ものですので、顧客自身が課題と思っている事と真の課題がずれているということは良くあることです。

だからこそ営業パーソンが介在する価値があるとも言えますね。

そのために、まずは顧客が感じている課題感は一旦横に置いておきながら、「実際に起こっている問題」にフォーカスしてヒアリングを進めます。事実だけを確認するヒアリングを進める中にも「顧客の感情」が入った答えは混在してきます。そこは「なるほど」と深く聞き入れつつ「実際に起こっている問題」へのラインアップからは一旦、外しておきます。

そうして、起こっている事実をベースに課題を形成し解決策を立案する。これができるとNの深度が大きく増します。

Nを顧客が抱える「問題」との親和性に置くのではなく、顧客が抱える「課題」との親和性に置く。Nが埋まっているのに案件が進展しない、Nの埋まり方が不自然と感じるメンバーにはこのようなフィードバックとトレーニングが必要となります。

まとめ

経験豊富な営業マネージャーにとっては当たり前の事ばかりですが、だからこそ若手メンバーがこれらのポイントで躓いていても、なかなか気付きづらいという側面があります。もし案件管理を目的にBANT条件を収集しているのであれば、一度、視点を変えてメンバー育成にBANT情報を取り入れるアクションも試してみてください。


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