【本棚】#12 すべての真夜中の恋人たち
本棚12冊目
11冊目を紹介してくれた方が紹介してくれた本です
すべての真夜中の恋人たち 川上未映子
<真夜中は、なぜこんなにもきれいなんだろうと思う。
それは、きっと、真夜中には世界が半分になるからですよと、いつか三束さんが言ったことを、わたしはこの真夜中を歩きながら思い出している。>
入江冬子(フユコ)、34歳のフリー校閲者。人づきあいが苦手な彼女の唯一の趣味は、誕生日に真夜中の街を散歩すること。友人といえるのは、仕事で付き合いのある出版社の校閲社員、石川聖(ヒジリ)のみ。ひっそりと静かに生きていた彼女は、ある日カルチャーセンターで58歳の男性、三束(ミツツカ)さんと出会う・・・。
人付き合いが苦手、生きがいもすくなく、ひっそりと生きていた女性がとある男性と出会い、小さく、薄く、でも大きく変化していく話
「綺麗」な作品
「キレイ」ではなく、綺麗
読む著者が偏りがちな自分なので、川上さんを読むのは初めてでしたが、内容やストーリーより言葉や単語に惹かれたのは初めてだったかもしれません。
とにかく描写が綺麗で繊細
どなたかが書かれていた感想で
前半は淡々と織物を織るように、後半はその中に織り込まれた小さな光が輝き出すように
といったものがあり、まさしくこれだな、と感じています。(※記憶で書いているのでニュアンスです)
特に出会う三束さんは物理…粒子や光への造詣が深く、それに伴って光の描写がかなり繊細なのものとなっているのも読みどころ。
心に残る言葉たち
話としては、すごく盛り上がるわけでも、どんでん返しがあるわけでもなく、どちらかというと淡々と進みます
だからこそ1シーン1シーンの描写を読み込みたくなるのですが、その中で個人的に心に残ったシーンやフレーズがあったので、それを一つ。
感情は引用
感情とか気持ちとか気分とか----そういったもの全部が、どこからが自分のものでどこからが誰のものなのか、わからなくなるときがよくあるの
主人公の唯一の友人、そして仕事ができ、美人だが我が強すぎる気質のある石川聖と主人公が電話した際、恋愛に関しての話題で聖が言った言葉。
たとえばさ、うれしいとか悲しいとか、不安とか、(中略)、そんなのっていつか仕事で読んだり触れたりした文章の引用じゃないかって思えるの
この人物もまあまあ癖のある人物なわけですが、感情が何かの引用に感じてしまう。そんなじぶんだからましてや感情が根幹となる恋愛なんてできないと。
物語の中盤ほどで登場するシーンですが、少しだけ共感する部分があり、引っかかりました笑
彼女が最後にどういう歩みを辿ったか、を思いながらここを読み返すと、人間性が少し見えた気がします
夜に時間をかけて読むのに良い本
すごく感情面や描写など、繊細な部分にゆっくり触れながら進んでいくストーリーなため、退屈でもないのに読むのにえらか時間がかかりました。
もしかしたらそれを人によっては退屈、というかもしれませんが、夜にじっくり読むのにお勧めできる本です。
ぜひ手に取ってみてください
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オワリ
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