緊急特集 「新型コロナウィルスの影響で日本は食料危機に!?」 Vol.1
執筆:ラボラトリオ研究員 後藤ヨシヒロ
「新型コロナウイルスの世界的なパンデミックの影響によって、世界同時多発的に食料危機が起こるのではないか!?」という情報を見聞きする機会が多くなってきました。今回は緊急対応として、この情報の真偽について数回に分けて解説したいと思います。
■国際機関による共同声明
キッカケは、3つの国際機関による共同声明でした。
FAO(国際連合食料農業機関)屈冬玉(チュー・ドンユィ)事務局長、WHO(世界保健機関)ロベルト・アゼベド事務局長、WTO(世界貿易機関)テドロス・アダノム事務局長は、2020年3月31日に次のような声明を発表しました。
【新型コロナウイルス感染症が食料貿易・市場に与える影響を緩和する】
世界各地の何百万人もの人々が、自らの食料安全保障と生計を国際貿易に依存しています。
勢いを増す新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの抑止措置の実施に向けて各国が動き出す中、これらの対策が食料供給に及ぼす悪影響や、世界の貿易と食料安全保障に対する意図せざる結果を最小限にとどめるよう、注意が払われなければなりません。
国民の健康と福祉を守るための対策において、各国は貿易関連措置がフードサプライチェーンを混乱させないようにするべきです。
農業・食料業界従事者の移動が妨げられたり、国境での食料輸送の著しい遅延などといった混乱は、生鮮食品の腐敗と食料廃棄の増加をもたらします。
また、食料の貿易制限は、食品安全に対する不当な懸念につながる可能性もあります。
このようなシナリオが現実となった場合、フードサプライチェーンへの混乱を招き、特に最も脆弱で食料不安の状況に陥っている人々に甚大な被害をもたらすのです。
食料入手の不確実性は、相次ぐ輸出制限を引き起こし、世界市場で食料不足が生じる可能性があります。さらにこのような反応は、食料の需給バランスを変化させ、価格急騰や価格変動の増大をまねく可能性があります。
そのような対応措置が特に低所得の食料不足国、そして支援を切実に必要する人々に食料を届けようとする人道組織の努力の妨げとなっていることを、私たちは過去の危機の経験から学んでいます。
私たちは、状況悪化を招くこのような措置を繰り返してはなりません。国際協力がますます重要になるのは、まさに今このような時なのです。
新型コロナウイルス感染症による外出制限の最中、特に食料不足に陥らないように、可能な限り自由な貿易の流れを保証するためのあらゆる努力がなされなければなりません。
同時に、農業・食料セクター内での感染症蔓延を最小限に抑え、フードサプライチェーンを維持するために、食料生産者と加工・小売部門の食品労働者を保護することも重要です。
消費者、中でも特に最も脆弱な人々が、厳格な安全基準の下、コミュニティ内で食料を引き続き入手できるようにする必要があります。また、食料関連の貿易措置、生産・消費・在庫状況、価格に関する情報を、全てリアルタイムで入手できるようにしなければなりません。
これにより、不確実性が減少し、生産者、消費者、取引業者が情報に基づいた決定を行うことができます。何より、このような措置は、「パニック買い」や食料・その他必需品の買いだめの抑制に役立ちます。
今こそ結束し、責任を持って行動し、食料安全保障と食品安全、栄養の向上と、世界中の人々の公共福祉を改善する、という私たちの共通の目標を守り抜く時です。新型コロナウイルス感染症への対応が、意図せずして必需品の不当な不足や、飢餓と栄養不足を悪化させないようにする必要があるのです。
▼資料出典:FAO(国際連合食料農業機関)http://www.fao.org/japan/news/detail/en/c/1277117/
■食料危機の可能性の根拠 〈その1〉: 各国の食料輸出制限
以上がFAO+WHO+WTOの共同声明です。
食料危機を煽動する方々の中には、この声明を恣意的に編集して利用する場合が多いので、少し長いですがあえて全文を掲載しました。
読んでいただけば分かるように、世界中で食料が不足しているということではなく、パンデミックへの対応に連動して、食料の輸出量の制限や、フードサプライチェーンのオペレーションの問題によって食料が不足するということが無いように注意して欲しいという勧告的な声明でした。
ですが、この共同声明が「世界同時多発的な食料危機に対する警告」として世界中に拡散し影響を与えています。
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