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脱マトリックス!理論と実践2020 (vol.12):人と自然を接続する食と微生物
執筆:いち あまね
この時代の人類の進化の方向性として、はっきりとこの世界の仕組みを理解した上で、マトリックス空間を抜け出し、自分を超え、人間を超え、無限の可能性を発揮するクリエイターとして生きること。
そのための情報をお伝えしていきます。
食は、土壌を作る
「食生活を整えましょう」は、健康にとっての基本です。
人の体は、成人では60〜70%程度が水、そして、その他の構成要素や体の機能を発揮するあらゆる要素が食事から摂取する栄養素を素材として成り立っています。
ですから、水と食が大切というのは、当然の考え方です。
実は、食の役割は、近年、最新医学で、ゲノムやエピゲノムと並ぶホットな研究分野である「常在細菌学・腸内細菌学」において、とても大切で注目度が高まってきました。
以前から、ホリスティック医療や古典医療では腸が重視されてきましたし、日本語では、物事の真意をはっきりと理解することを「腑に落とす」と言ったり、英語では「直感」のことを「Gut feeling(腸の感覚)」と言ったりします。人は本質的に、腸・腹の重要な役割をつかんでいました。
ようやく現代科学がその叡知に追いついたといったところです。
食は人の栄養素となるだけでなく、人間を育む土壌であり、心身の健康にとって重要な腸内細菌のエサとなり、腸内環境を作る基になります。
食の選択によって、腸内の土壌が発酵した豊かな腐葉土になるか、腐敗し根腐れを起こす土になるかが決まります。
根腐れをするとその植物は枯れてしまうように、人間も腸内環境が腐敗に傾くと病気になります。
成熟した森の生命循環
豊かな森林の土壌を観察すると、それは健康な人の腸内環境と同じであるとわかります。
ヒトの手の及ばない原生林に入ってみると、土がふかふかです。
落ち葉や木の実が土壌に暮らすクモやミミズなどの土壌生物によって細かく分解され、分解されたモノが微生物に食べられてさらに分解され、微生物がミネラルや様々な有機酸を排泄し、その結果、栄養が豊かな腐葉土ができます。
(ちなみに、成熟した腐葉土に含まれる、土壌微生物の最終生成物が「フルボ酸」です。フルボ酸とミネラルが吸着することで、吸収しづらいミネラルを植物が吸収しやすくなります。農地を豊かに改良するのに役立つため、ふとまにの里の土壌にもフルボ酸が使われています。)
土壌から草木の根っこが養分や水分を吸い込み、枝を伸ばし、葉を茂らせ、季節になると実をつけ、その実を動物が食べ、その糞が土に落下し、葉や実が落下し、有機物や微生物が混ぜ混ぜになって、また土壌が豊かになる・・・
これが、成熟した森林の生物循環です。
生命ロゴスに基づき発現する森羅万象は、注意深く観察すると全て同じシステムで成り立っていることがわかります。
人の土壌は自然の土壌の延長線
ヒトは、食物を口から消化管に放り込むことで、土壌生物の代わりに、咀嚼や消化酵素の働きで、食物を栄養素に分解します。
そして、腸内の有用菌がそれをさらに分解します。
これが、腸の内容物、いわゆる「便」ですが、便は汚いものなどではなく、私たちを育む大切な土壌なのです。
有用菌は、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、短鎖脂肪酸などの栄養素やエネルギー源を、私たちの食事から生み出してくれます。
消化管の中は、実は、口から肛門という外界と交通している「体外」です。ですから、無数の微生物が暮らすことができるのですね。
腸内の多くの微生物は、起源を遡ると土壌微生物に行き着きます。それが暮らしやすい環境を求めて、食を通して体内に入ってきたものです。
ですから、人の土壌は自然の土壌の延長線上にあります。
そのため、安全な土壌改良のツールである、フルボ酸やゼオライトなどは、人間の土壌改良にも使うことができます。
人の根っこは腸に生えている
腸には、土壌から栄養を吸収する根っこが生えています。
それが、小腸の絨毛上皮と呼ばれる細胞で、ビロードの絨毯の様な細かな突起が密集した構造をしています。
その絨毛上皮から土壌の栄養素を吸収して、血管という葉脈を使って、細胞に栄養を取り込むことができます。
細胞はいわば、葉っぱや花、実のようなモノです。
エピゲノム に影響する細胞環境を作るのは血液環境であり、血液環境は腸内環境によって作られるので、腸内環境が重要です。
私たちの腸内環境の健康な状態とは、有用な微生物によって食物が発酵した腐葉土のような状態です。
ちなみに、健康な腸内環境の持ち主の便やおならは、水素ガスの様に無臭のガスを生み出すため、まったく臭いません。
根腐れする現代人
逆に、有用菌が少なく腐敗菌が多いと、腐敗菌が栄養素を奪い、人が食事から十分な栄養を得ることができなくなります。
また、腸内環境の健康にとって一番大切なのは、ビフィズス菌や乳酸菌の様に特定のスター的な有用菌が増えることではなく、様々な種類の微生物が協力し合いながら暮らす平和的なダイバーシティ(多様性)が維持されることと考えられています。
現代人のライフスタイルは腐敗菌を増やしやすく、多様性を低下させてしまう要因が多くあります。
・ファストフードなど偏った食事
・高タンパク・高脂肪・高糖質の西洋的な食事
・砂糖や糖質の摂り過ぎ
・殺菌処理された加工食品の摂り過ぎ
・食物繊維が不足した食事
・精製された穀物・品種改良された穀物の摂り過ぎ
・化学物質や添加物入りの食事
・食品に残留する農薬・殺虫剤
・抗生物質や胃酸抑制薬(プロトンポンプ阻害薬)などの薬剤の連用
・心身へのストレス
・環境の殺菌消毒などの清潔志向
こうした食生活やライフスタイルが、生まれた時から常態化してしまっている人は多いと思います。
腸内の土壌改良をするためにできることは、有用菌が喜ぶ食事と、土壌を汚染する様々な化学物質や重金属などを極力減らしたり、排泄を促すことです。
私は、自分のためでなく、腸内に飼っている大切な「微生物」を育成するために食事を選択しつつ、不要なものの排泄にも努めています。
次回は、引き続き、腸内の土壌改良のためにどんな食事が良いのか、ご紹介していきたいと思います。
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【いち あまね プロフィール】
医師・認定産業医・文筆家
米国IBA認定・ボディトークプラクティショナー
国立大学医学部医学科卒
出口王仁三郎が霊山として、邸宅を構えた岡山県熊山遺跡の麓に生まれる。
某大学病院糖尿病代謝内分泌科を経て、臨床医として最新のバイオロジカル医療・予防医療から在宅・看取り医療まで幅広く臨床経験を積みながら、個々の病気の根本原因やより良き生と死に向き合ってきた。
究極のヘルスケアは、人類の進化であると捉え、最新の分子整合栄養療法・バイオロジカル医療から常在細菌学、生命科学、意識科学、理論数学、物理学、哲学などを統合した視点で、医療とヘルスケアの次元上昇を目指している。
薬を処方する代わりに、情報空間へのアプローチとして、情報を処方することを天職と捉え、書籍やメディアなどで情報を発信している。
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