一銭洋食、あるいは薄焼きのお好み焼き
今ではパチンコ屋くらいでしか使われなくなったパーラーという言葉を店の名に付けたのは、明治の終わりに銀座でオープンした「資生堂パーラー」をイメージしてのことで、和洋折衷、大正モダンな雰囲気の店内にしっくりくると、ひとり納得している。
そんなわけもあって日本の古き良き"洋食"にはなんとなく思い入れをもっていて、カツレツ、コロッケ、ビーフシチュー、そういったものと日本酒をあわせて提供できたらどんなに面白いだろうと常々考える。少し毛色は違うけれど、「一銭洋食」もまた郷愁をそそる"洋食"のひとつだと思う。
一銭洋食(のようなもの)
千切りにしたキャベツと小麦粉に出汁を加えた生地を、フライパンで薄く、表面がカリッとするようにやや多めの油で両面を焼き上げる。今回は揚げ玉の代わりに南関揚げを砕いて焼く直前に混ぜ込み、"洋食"たる由縁のソースは、トマトピューレと醤油、みりんと味噌、はちみつ、バルサミコ、それにいくつかのスパイスをとろ火で煮詰めて作っておいた。あわせる酒は断然、熟成された生酛。とくに梅津のように甘酸っぱさを感じるものが良い。
さて、堂々と「一銭洋食」の名を冠してお出ししようと思っていたのだが、調べてみるとどうやら「一銭洋食」といえばクレープ状に焼いた生地の上に具を乗せて挟み込むスタイルが主流らしい。確かに食べてみるとこの食感はほとんどチヂミのものだし、「薄焼きのお好み焼き」くらいに言っておいた方が当たり障りはないのかもしれない。しかしなぜだか「洋食」と言い張りたい妙なこだわりを捨てきれずにいる。