【「少年A」から被害を受けた方の記事を受けて現代の犯罪被害者の支援制度を見てみます】
ソーシャルワーカーなど、人のこころに向き合う生業を持つ者であれば既知の事件だと思いますが、改めてこのような記事を見かけたので犯罪被害をテーマにして考えていきたいと思います。
犯罪被害者の心理的な影響
警察庁からこのようなデータが公開されています。
H26年度 犯罪被害類型別調査調査結果報告書
犯罪には様々な種類がありますが、多くの方が心身の不調を感じています。
この調査では、とくに「事件と関連した精神的な問題を抱えているとの回答が36.4%」という結果を導き出しています。
精神科などの医療機関に受診せずとも、長らく心の傷として残る、睡眠などの生活に支障を来たすなどの影響は十分に考えられます。
さらに、大きな事件であればあるほど「自分が生き残ってしまったことへの罪悪感」を覚えるサバイバーズギルトという気持ちも芽生えやすいもの。
21世紀に拡大した被害者支援
冒頭の事件があった頃は、犯罪の被害者に対して国を上げたフォロー体制は乏しいものでした。
この法律が成立したころから、犯罪被害者支援の見直しが急速に進むようになりました。
上で述べたような心理的負荷の強い状況があることが注目されるようになり、具体的な施策が検討されるようになったのです。
その中でも、この変化は大きな影響がありました。
2016 被害者支援の中心的役割
内閣府から国家公安委員会(警察庁)へ
各警察署で「被害者支援要員」という担当者を定め、犯罪被害者・家族などに初期支援を行い、定期的な連絡や訪問活動に当たるようになりました。
現場をよく見ている警察官が被害者の味方になることができる制度です。
さらに、警察内で行うカウンセリングの公費負担が整備されるようになりました。
犯罪被害者の心理ケアが必要であることが認められるようになっていることがわかります。
被害者支援団体
被害者支援団体は、その他にも次のようなものがあります。
●民間被害者支援団体
1990年代より活動が盛んとなりました。
支援の内容は、電話や面接での相談、裁判所や警察への付き添いなど。
一人で何もかも対処するのではなく、傍らに寄り添って一緒に立ち向かう力を与えてくれる支援ですね。
とくに性犯罪には支援が充実しており、「性犯罪・性暴力ワンストップ支援センター」が各地に設置されています。
●被害者当事者組織
2005 犯罪被害者団体ネットワークの結成。
毎年全国大会を行い、国に対して制度改善などを訴えています。
●地方公共団体
都道府県に総合的対応窓口を設けています。
他の組織と同様に電話・面接の相談や情報提供を行いますが、公的組織らしく、一時的に利用できる住居の提供や家事育児等日常支援も行います。
費用支援
費用的な制度も広まっています。
●国選被害者参加弁護士制度:費用を国が負担します。
●損害賠償命令制度、遺族給付金、重症病給付金、障害給付金など
20世紀までと比べると格段に支援が進んでいますが、その恩恵を受ける人はまだまだ少ない様子。
必要な人に届くように、支援の実態を広める努力も求められると感じます。
こころの傷を抱えるような事件は無くなってほしいものだと思うのでした。
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