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公園の財政課題とコミュニティのあり方

公園政策から見る、日本のこれから 〜 公園行政アンケート振り返り 〜 〈中編〉

「公園の取り組みに関するアンケート」の結果から、地域や日本のこれからを考えてみる連載。長寿命化か安全安心など、多くの自治体が取り組んでいるテーマと課題が見えてきた〈前編〉に続き、〈中編〉ではより具体的な公園の取り組みテーマについて考えていきたいと思います。

公園2.0から3.0へのステージ移行

注目したいのが、人口10万人未満の自治体と、人口10万人以上の自治体とで、回答数に差が見られたテーマです。

たとえば人口10万人未満の自治体が相対的に多い回答となったのが、「健康増進」「子育て支援」。一方、人口10万人以上の自治体が相対的に多い回答となったのが、「パークマネジメント」「稼ぐ公園」。ここでも、前者は課題、後者は解決策という違いが見られるのは興味深い結果です。

以前公開した「公園3.0の時代へ」という記事の中で、公園2.0について下記のように書きました。

地域の特性・課題などを反映するために公園は多様化し、公園設備などもより質が高く高機能なものが求められるようになってきました。

「健康増進」「子育て支援」、そしてより上位の結果となった「防災・減災」(人口規模に関わらず一定の回答)は、日本全体の課題と言えます。どの地域でも少なからず直面しているであろうこれらの課題ですが、あえてそれらに「力を入れている」「関心がある」と回答するよりも、多様な公園の課題をどう解決していくかに意識が向かいつつあるのが、より規模の大きな自治体と言えるかもしれません。

地域の課題とコミュニティ

ここで、それぞれの課題について少し考えてみたいと思います。

まず「防災・減災」。公園は安全を確保するための避難場所としてだけでなく、避難生活の質を高めるための食事(火)、水、電気などを供給できるよう、設備もとても高機能化しています。それに伴い、そうした機能を地域の人がきちんと知っておくことも大事になってきています。案内表示だけでなく、防災訓練などの実践を交えて公園の機能を学ぶ機会も必要でしょう。また近年の大災害を見ても、その内容は非常に多種多様です。地震だけでなく、津波、台風、大雨などの災害に対して、公園(街)がどのような機能を持っておくべきなのか、まだまだ考えるべきことはありそうです。

↑ 座面を外すとかまどに変身するベンチ

↑ 体験を通じて必要な役割も見えてくる

健康増進は、高齢化とセットで語られことの多い課題。健康器具等を設置して公園で楽しく体を動かす機会を作ることで、引きこもりがちな高齢者に外に出もらおうという動きが増えています。一方で健康志向の高まりとともに、より多世代にとっての健康づくりの場としても公園の活用は進んできているように思います。ジョギングやウォーキング、ストレッチ、ラジオ体操、最近はヨガや太極拳なども。これらは使い手主導の公園活用の流れと言えるでしょう。運動・スポーツ分野とともに、公園ならではの日常的で楽しい健康づくりは今後も広がりを感じるテーマです。

子育て支援では、まず遊び場の充実が挙げられるでしょう。公園=遊び場というのは当たり前のようにも思えますが、より幅広い(とくに低年齢向けの)遊具の設置や、プレーパークなどの体験重視の遊び機会の創出は、全国的に増えているように思います。あるいは授乳スペースやおむつ交換台の設置、親同士の交流イベントを開催するなど、親のサポートを強化する取り組みもあるようです。

ちなみに、PARKFULで公園の情報を集めていると、自治体が公園マップを配布している例もあれば、子育て中のパパ・ママが自分たちで地域の公園マップを作って配布している例も少なくありません。それだけ、子育てにとって公園は必要とされている存在なのだと感じます。

↑ 人気のパークヨガ

↑ 子どもたちの自由を尊重するプレーパーク

じつは、これら全てに共通するポイントが「コミュニティ」ではないかと思うのです。公園にハードとしての機能を備えるだけでなく、公園を通じて地域のつながりを持つことが、課題の解決につながると考えれば、地域の人々にとって公園がいかに日常の居場所として身近な存在となれるか、追求することも大事だと思います。PARKFULでは、それが公園3.0的な課題解決のアプローチではないかと考えています。

公園3.0を模索する「稼ぐ公園」

多様化する課題に向き合う中で、担い手不足や財政課題などに直面して出てきたのが、官民連携や市民協働などの動きです。パークマネジメントは、そんな動きを包括する概念。

パークマネジメントとは、(中略)従来の行政主導の事業手法から転換し、都民・NPO・企業と連携しながら都民の視点にたって整備、管理していくことです。(東京都建設局 パークマネジメントマスタープランHPより)

そして「稼ぐ公園」はそのより具体的な方策を表すものと言えます。「稼ぐ公園」は、ここ1年ほどでとくによく聞くようになった言葉で、税金・補助金ではなく公園内で生まれた収益によって公園の維持管理を賄おうという考え方です。例えば、最近増えている公園へのカフェ設置もその潮流で、カフェの収益の一部を公園の管理・修繕費として還元する仕組み等があります。アンケート結果では人口10万人以上の自治体で「稼ぐ公園」への関心が相対的に多くなりましたが、財源の課題が規模の大きな自治体ほど顕著になっていると捉えることができるかもしれません。

↑ 駒沢オリンピック公園にオープンしたカフェ

「稼ぐ公園」という考え方は、公園の魅力と施設の魅力が相乗効果となって集客力を高めることで、持続可能な維持管理のスキームに繋がると期待されています。一方でパブリックに開かれた場としての公園と、民間的な利益追求のバランスの難しさを考えさせられるテーマでもあります。商業施設やホテルのなど、賑わいづくりと収益性を兼ね備えた施設の建設が話題になる中で、前項で書いたような地域の課題やコミュニティに寄り添う居場所としての公園のあり方についても、同時にしっかり議論・実践していく必要があるでしょう。そのためにも、さまざまなステークホルダーが主体性を持って関われる「共創」の場をいかに作っていくかが、公園3.0への課題のひとつだと考えます。

さて、最後〈後編〉ではまだ顕在化していない、まさに「これから」に向けたテーマについて考えてみたいと思います。

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※本記事はPARKFUL.netからの転載記事です
元記事:https://parkful.net/2018/02/survey2017_report_02/

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