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#最終回 「いい天気」

なんだかんだで最終日になってしまいました THE BEST 2020 。コラムも最終回です。今日まで読んでくれたひとたちに感謝です。

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本当に偶然並んだ2つの作品

最後に紹介するのは、2つの花の作品です。本当に偶然、意図せず、隣り合わせになった2つの作品。どちらも架空の名前のない花なのに、2人で同じ花を描いたかのようなシンクロニシティに、目を喜ばせたひとたちも多いと思います。今日はじめてくるという人は気にしてみて。

作品が届いた時からここに立てかけてあった、というほど、届いた時点で展示場所が決まってました、イラストレーターの超こうくん(すーぱーこうくん)。

沖縄を拠点に花や花にまつわるモチーフを描く超こうくんは、#04 で紹介した OIKAWA MAYUKIさん同様、パークからお声がけさせてもらった作家のひとりでもあります。前回、「キャリアを感じさせない2人」というタイトルで、活動開始1年ちょっとのふたりを紹介しましたが、超こうくんの作家としての本格始動も1年前。地元のお店で「イラストレーターになりたいならうちで個展やりなよ」と言われ、慌てて描いて、いつの間にか東京でも展示をしている、という珍エピソードを、沖縄の青い海の前からインスタ生中継で話してくれました(摘んできたハイビス片手に)。

📺  その時の動画はこちらで見ることができます  📺


なんくるないさ


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「置いてある花が好き」という超こうくんが今回 BEST にあげた作品は、桐の木を(ホームセンターの工作室でおじさんに教えてもらいながら)型取って作ったこどもの身長くらいある花の作品。彼のインスタで見て想像していた倍くらいの大きさに思わず笑ってしまいました。とにかくいい。この大きさじゃないとだめっていうくらいいい。

僕の中で、写真もイラストもそうだけれど、家の中、机の上、インターネット、雑誌、近所、たまたま訪れた旅行先、だけで考えられてるクリエイティビティってあまり魅力を感じてなくて、やはりフィジカルさ、貪欲さが形になっているものの方がいいなと思っていて、「寝る時に思いついて、朝起きたらホームセンターに向かって木を切ってた」という彼の想像力と創造力に感服。例えばこれが『東京』だと大型のホームセンターは遠いし、車が必要になってきたりと、なかなかうまくいかなかったりするのかもしれない。でも都会の都合で制御されてしまってるクリエイティブって一体? 無意識で制限されてることっていっぱいあると思います。

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ものをつくるひとはたくさん体をうごかして(移動して)たくさんの景色を、世界を見て、空気を感じた方がいい。音楽や歌詞もそうだったりする。ドライブしたり、自転車に乗ったり、さんぽしてるといいのが浮かんできたりする。

まるで沖縄の風が届いたかのようです。なんくるないさ〜。

ものづくりの根源を感じさせてくれるそんな作品。インテリアにもいいですよね。

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今日会場に来れるという人は、ぜひ花のテクスチャを楽しんでください。このざらっとした「命のてざわり」とも言える感触が、ただの思いつきのアイデアとは思えないくらい、コンセプティブに昇華されてて、ちょっと感動しました。「いい天気」というタイトルも最高じゃないですか。

超こうくんも、パークのことすごい応援してくれるし、見てくれるし、展示ができてうれしいという想いが、離れていてもめちゃくちゃ伝わってきます。距離とかでわーわー言ってる時代じゃあ、もうないんだなと本当に思う。こういう作家さんといろいろなことをチャレンジしていきたい。そういう作家さんたちとたくさん出会えた2020年なのでした。コロナになんか負けないぞ。個展もしてほしいな。


ピンチをチャンスにする男


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個展と言えば、最後に飾った作品は、今年の春、PARK GALLERY で個展『リトーイントーキョー』を開催した、グラフィックデザイナーのミウラユウタくんの花の作品です。部屋の棚に飾るように設営したくて、ここになりました。しゃがんで、目線を花まで少し下げて、愛でてほしい。

前からパークに来てる人はわかると思うのですが、今回から足元に棚が置かれました。この作品を飾るのを想像した瞬間に思いついたと言っても過言じゃない什器です。

手癖に任せてペンをぐるぐると走らせていくと、曲線の重なる面が花弁のように見えてくるときがあります。その面に色を乗せる試みを過去何度もやってみました。

グラフィックデザイナーと聞くとパソコンで器用に作業する印象がありますが、ミウラくんは画材のようにパソコンを使うことはあるけれど、アナログの感覚をすごく大切にするデザイナーで、こういったラフスケッチの時に浮かんだ『ハテナ』もデザインしてしまうからすばらしいと思う。

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さらにこの作品すごいのは、板に作品を貼っているのではなく、板に直接インクジェットでプリントされてるんです。こういう発想ができるのはアートディレクターを生業にし、業界の最新のプリント事情なども深く心得ているミウラくんならではだなあと思います。個展の際も、絶妙なグラデーション、陰影までこだわりぬいて、発色のいいプリントがたくさん並んでいたのが印象的でした。

緊急事態宣言を受けて

春の展示、と言えば、緊急事態宣言の発令で、営業さえ難しくなっていた時でした。ちょうどミウラくんの個展にぶつかってしまって、落ち込む彼と何度も打ち合わせを重ねて、それでもなんとか結果を残せないか、とあれこれ考えたものでした。今回 THE BEST でも大活躍だったインスタグラムを使ったアーティストトークの中継や、このコラムのようなオンラインで楽しむ方法の提案、この展示はしばらくコロナ禍では訪れることのできない東京の離島がコンセプトだったので、作品を離島にプレゼントしたり etc...。

いま思えば、集客がむずかしくてもできることがある、という、アフターコロナに向けてのエネルギーをもらった展示です。一輪の美しい『大島椿』がきっかけとなって決まったあの個展は、決して無駄ではなかったと心の底から思います。

個展の時に制作した大島椿のグラフィックの色彩表現をヒントに、ようやく納得のいくグラフィックが完成しました。今まで答えを出せなかった表現をようやく見出すことができた、そして自分の表現に一歩前進を感じさせてくれた今年のベストです。

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自分の中のベストと思えるこの作品も、あの個展がきっかけで生またと思うと、なおさらあの時のクリエイティブは無駄ではなかった。

ミウラくんは朝日広告賞も入選したしね。インスタにあがってる花もすてき。(作品のマージンの取り方うまくなってるな)

大変なこともたくさんあったけれど、いいこともあった1年だったと思う。きっとみんなそうだったんじゃないかなと思います。大変だからこそ見えてきたもの。きっと来年の今頃はよくなってると思うので、この2020年でしか味わえない『ベスト』が集まったと思っています。

美しい2枚の花の作品も、みんなのベストな作品も、来年のエネルギーに変えてくれる力があります。ぜひ今日、間に合うようでしたら、遊びに来てください。

東京は「いい天気」です。


『パークギャラリーに居るひと』
加藤淳也 👉 INSTAGRAM



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