猫背で小声 season2 | 第7話 | Sサイズのアイスミルク
金曜日の仕事帰り、ぼくはカフェでアイスミルクを飲んでは仕事のことを思い、腐り狂っていた。
ぼくは今、働いている。
ふと気づくと働いている。
仕事は苦手だが、真面目に取り組んでいる。
金曜日の夜、地元のカフェでアイスミルクを飲みながら、こうして文章を書いていることが至福の悦びだ。
今日も9:00から17:30勤務。週5日頑張った。
アイスミルクの値段は326円。
働いているからこのアイスミルクを飲めるのだ。
326円でも、ちゃんと自分の稼いだお金でアイスミルクを頂戴している。
引きこもっていた時は、なにも希望はなかった。
時々単発のバイトもしていたけれど「働く」ということが想像できず、この先の人生にも希望がもてなかった。
「働くってなんですか?」とテレビに映る人たちが質問を受けていた。
その人たちも、答えがある人と、ない人に分かれていたと思う。
「あいまいな答え」
正体が見えない「仕事」に対し恐怖すら浮かんだけれど、仕事というのはそもそも「透明」で「掴みにくい」ものなんだと、経験値がないぼくなりに想像した。
引きこもっていた頃のぼくと、今のぼくは、「働いている」という点では雲泥の差があるが「仕事ってなんだろう」という点では変わっていない。
今でも透明。
でも今は社会復帰をしていて、社会からドロップアウトしてない人と同じ職場で働いているという点では自分でも少々驚く。自分にもこんなポテンシャルがあったんだと。
引きこもり歴20年のぼくとドロップアウトしたことのないひとたち。こんなひとたちと毎日対峙しているのは狂った状況にも思えるけれど、狂った世界も捨てたもんじゃない。
あの時「仕事をする」という希望を捨ててなかった。怖かたけれど、自分でもよく分からない自分がいた。
知人から言われたこと。知人がぼくへ抱く印象。
「やわらかに諦めない姿勢」
ゴリゴリに諦めないより、こっちの方がぼくに合っていてとてもうれしい。
仕事へもゴリゴリと立ち向かうのではなく、柔らかに取り組みたい。
いつでも真正面に取り組み、悩み、苦しみ、果てる、自分がいるから。
答えは出ないけど、いつまでも326円のアイスミルクを飲めるように。
今日はご褒美。
163円のチョコチャンククッキーを添えて。
まだシーズン1を見てないひとはこちらからどうぞ
🙋♂️ 記事がおもしろかったらぜひサポート機能を。お気に入りの雑誌や漫画を買う感覚で、100円から作者へ寄付することができます 💁♀️