猫背で小声 | 第5話 | クソッタレ6畳間
ぼくは中学校に入学しました。
世に言う義務教育第2幕です。
相変わらず学校へ行きませんでした。
しかし小学校時代とは気持ちが変わり、周りの中学生と自分というものを比べ始めました。
不登校という普通とは違う自分を考え始めたのです。
思春期ボーイ特有の悩みとして、当時放送されていたドラマ「3年B組 金八先生」に出ている「悩み多き生徒役」と「自分」を重ねたり、テレビに出ている同年代の子たちに憧れを感じたり、不登校という自分を責める気持ちが一日の大半を占めるほど悩みました。悩みに悩みまくり、部屋から一歩も出ず、食事も自分の部屋の前へ置いてもらったのを食べるという、ドラマで見るような、ザ・引きこもりという生活をしていました。
クソッタレな状態で、この世からいなくなりたいな、とも思うこともありましたが、その一方で生きてやろうという気持ちもありました。
生きてりゃなにかいいことがあるはずだ精神 ‼︎ です。
ある日、ある年、サッカーの J リーグが開幕しました。
スタジアムは華やかで、ファンは顔にフェイスペインティングをしています。Jリーグ開幕したての頃、ぼくは部屋にこもり、なにもすることがないので、ふと液体のりに絵の具を混ぜました。「鼻の毛穴の黒ずみが取れるかなー」と思い鼻先に塗ってみました。
鏡を見てみました。
カラフルなぼくが鏡に映っていました。
「これ、フェイスペインティングじゃん。」
当時Jリーグのフェイスペインティングは、絵の具を顔に直に塗り応援するというのが当たり前でした。たぶん誰よりも先に、のり状のフェイスペイントを発明したのです。
目がバッキバキになりました !!
これはビジネスチャンスにつながると !!
退屈な部屋の中からヨダレがダラダラと垂れてくるような勢いでした。
当時はユーチューブとかもない時代で、一般人が自ら発信するということは難しい時代でした。
結局世には発信しませんでしたが、
クソッタレな部屋の中でも何かが生まれました。
今コロナ禍でもできる「なにか」を見つけるおうち時間がクローズアップされていますが、ぼくはある意味、引きこもりの時におうち時間を体感して、その「なにか」を見つけていたのだと、今になって思います。
「このおうち時間はいつまで続くの?」
みんなにとっておうち時間として家にいることは長く感じられるかもですが、ぼくにとってみればまだまだ短いです。
なにもすることのできない世の中ですが、
クソッタレな時間になにかが生まれるのかと少し思います。
悩みの毛が恥ずかしげに生えはじめた
中学生のぼくに言ってやりたいです。
近藤 学 | MANABU KONDO
1980年生まれ。会社員。
キャッチコピーコンペ「宣伝会議賞」2次審査通過者。
オトナシクモノシズカ だが頭の中で考えていることは雄弁である。
雄弁、多弁、早弁、こんな人になりたい。
https://twitter.com/manyabuchan00
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