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【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー (60) 熱海 一樹 『詩誌・十字路 / 25号~20号』(岩手県盛岡市)

今年はとにかくコロナ禍での開催ということもあり、パーソナルな『言葉』を扱った ZINE が多かったように思います。ぼくも、普段は言葉を扱う仕事をしているので(詩がよいラッパーとして CD を出していた時代もありますははは)、必要以上に言葉に対してセンシティブになっているというのもあるかもしれません。もしくは『枯渇』しているから、染み渡ってくるのかもしれないです。じんわりと少しずつ。ジャンルも、日記や、エッセイ、短編小説、コラム、短歌、詩、など、言葉だけでも様々です。読み返してみると、日記も、エッセイもコラムも、小説も、ぜんぶ詰まるところ詩なのかなとも思うけれど。

人に伝えたいことがある時、言葉に頼ってはいけないなって思うことと、言葉でしか、伝わらないなって思うことと大きく2つありますよね。ぼくはどちらかと言うと、言葉を信じていない派で、理詰めすることはあるけれど、最後は結局、抱きしめたいし、抱きしめられたい。意味なんてないね、意味なんてない。そっと連れ出して欲しい。そういう時の方がきっと多い。だって言葉は、あくまで道具で、使い方を間違ってはいけないし、ぼくもいつも、扱いづらいなと、思う。

言葉を発する前に、ひとりのひとである。と思うんですよね。

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真実を語らなければ何もはじまらない

宮沢賢治って言うひとのことは全然知らないのだけれど、中学生の時かな、『雨ニモ負ケズ』っていうのを教科書で読んで、言葉やストーリーは覚えていないけれど、あれは絵本でもアニメでも映画でもなかったのに、強烈な『映像』の記憶として、脳裏に残ってる。言葉はあくまで、カメラや、パソコン、絵具みたいな道具の1つで、使い方が大事なんだなって、あの時に思った。

今回紹介する ZINE は、年4回発行される詩誌の6号分を1セットにまとめたボックスセットとしてのエントリー。サンプルは棚の都合上1冊しか置けていないけれど、『十字路』というタイトルで、詩の他にも、エッセイ、小説と収録された6冊からなる。数人の作者からなるオムニバスだが、編集責任者は、詩人の熱海一樹さん。つまり『十字路』は熱海さんが2014年から編集している詩集。僕の中の『詩』という表現は、暮らしの中から溢れ出てくる、感情にあてられた言葉を煮詰めて煮詰めて、濾して濾して、うまみだけを抽出したシロップみたいなものだったから、わりとさらっと、目の前の事象を、吐露する詩のスタイルに驚いた。たぶん、自由で、いい。けれど、正直に言うと『詩』ってなんだっけ? と思わされた1冊。先入観にとらわれてはいけないね。あまりにも、話すように、語られるので、心のどこにしまっていいかわからない時間が続いた。

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サンプルで出している25号には、教会、キリスト教の話、信者の方の話が出てくる。そのためか、どこか、『十字路』で語られる詩は、日曜日の礼拝のような空気が漂っている。平安があなたがたにあるように、と。

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『十字路』は、宮沢賢治のふるさと岩手からのエントリー。孤独と戦い、神羅万象、八百万、その宇宙を感じ、宗教をも超越してきた彼の、言葉に向き合う祈りの姿勢が、受け継がれていると、いえば言い過ぎか、『詩』のもつ自家中毒的なあやうさも秘めた1冊です。


レビュー by 加藤 淳也(PARK GALLERY)


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作家名:熱海 一樹(岩手県盛岡市)
年4回発行の詩誌(同人誌)です。20号からすべて横書きにして詩誌として再出発しました。現在25号まで発行しています。過去号もありますが、横書きにしてからの6号分を出品します。
詩の他、エッセイ、小説も含まれている号もあります。
【 街の魅力 】
喫茶店がいっぱいあり、人口もちょうど良く住みやすいと思います。
【 街のオススメ 】
① 喫茶 クラムボン ... 盛岡の老舗の小さなコーヒー喫茶。全国から注文、人が来る。
https://tabelog.com/iwate/A0301/A030101/3000655

② コーヒーハウス 僕らの理由 ... 詩の喫茶。詩を書く人たちが集まってくる。
https://takizawa-kankou.jp/spot/bokuranoriyu
                                  
③ ギャラリー 彩園子 ... 盛岡の現代美術のギャラリーとして3、40年以上続いている。最近は展示が少なめではあるが、盛岡のギャラリー&作家たちの活動の中心には変わりがないと思います。
https://www.facebook.com/pages/%E3%82%AE%E3%83%A3%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%BD%A9%E5%9C%92%E5%AD%90/413753912009945

④ 高松の池 ... 大きな池で周囲を散策できる。冬は白鳥たちの飛来地で毎年白鳥たちが見れます。
http://www.takamatu-kouen.com/spot/index.html

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