【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー ㉕ 藤本 将綱 『HOUSE』(福岡県北九州市)
今回の COLLECTIVE はとにかくとにかく何度も言うけれど、東京からのエントリーが多い。去年一昨年の東京のエントリーなんて全体の割合の10%程度。今回はまったくもって逆転。
やはりコロナ禍の自粛ムードが圧力となって、そのフラストレーションが『発信』というエネルギーに向かったか。コロナ禍に作られる ZINE というのは、戦中に記された手記のように、きっといつか役に立つと思う。いまの本当の気持ち、悲しみ、憂い、その中から湧き出る精子のような生きようとするエネルギーや感謝する気持ち。ひとそれぞれ違えば、選ぶ言葉でも、手に取る筆でも、ファインダーを覗く場所でも変わってくる。オンラインに残したブログみたいなものもいいけれど、10年後、20年後、紙で見れるって、やっぱりいいと思う。ZINE という紙のメディアには、その力がある。事実、10年前、20年前の ZINE は色褪せてない。流行性重視の雑誌はふるびてしまってるけれど。
あらゆる事象は家の中で起こっているのかもしれない
福岡からエントリーしてくれたのはアーティストの藤本将綱さん。PARK GALLERY でも展示をしてくれたこともあり、スタッフ全員が大ファン。
在庫が少ないという新作の ZINE で参加してくれることになった(もちろん即ソールドアウト)。『HOUSE』と名付けられた1冊の ART ZINE はコロナ前にできたものか、気になる。確かに藤本さんの絵は、家の中だったり箱庭的な空間だったり、どこかぼくらが住んでいる世界のすぐ横の別世界の入れ物の中というような雰囲気が漂ってる。作品に時々描かれる『人』のような裸のかたまりも、ペットみたい。「ハウス!」と言われて小屋に帰る犬みたいに。「あらゆる事象は家の中で起こっている」という言葉のもとに藤本さんの作品を見てみると、『観察』の要素が入り込んでくる。
見えないガラスケースが1枚、絵と、我々の間にあって、藤本さんの描く世界を観察している感じ。旭山動物園で一躍有名になった『行動展示』のよう。神の視点で見れば我々もそっか。この ZINE のタイトルが『HOME』だったらこうは思わなかったかもしれないなと思った。
そういえば、藤本さんの絵を見ると昔テレビでやっていた『フラグルロック』という人形劇を思い出す。洞窟の中に住むフラグルたちが外の世界を見に行くシーンが時々あって、子どもながらにフラグルたちと一緒になってドキドキしてたのを覚えてる。その外のシーンをいつも思い出すんですよね。それはただの人間界なんだけれど、人間界に見えない表現をしてた(アメリカってこともあったかもしれないけれど)。トラウマに近い現体験ですが…。覚えてる人いるかな…。
藤本さんの ZINE 、売り切れてしまいましたが、instagram などでも作品が見られるので、ぜひ新作を期待しながらフォローして待ってみてください。
レビュー by 加藤 淳也(PARK GALLERY)
作家名:藤本 将綱(福岡県北九州市)
福岡県出身、在住のアーティスト。不思議な世界を独特の色使いで描いている。最近は立体作品も制作。カフェインが苦手。フランスパンが好き。敏感な体質です。
https://www.instagram.com/fujimoto_masatsuna
【 街の魅力 】
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