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猫背で小声 | 最終話 | ことばちゃん

みなさん今まで生きてきて大切にしているものはありますか?
ぼくは、つらい時に大切にしている『言葉』があります。


" 騙されたと思って生き続けてみる "


これはどんなに苦しくてこの世からいなくなりたい状況でも、この状況を騙されたと思いながら生き続けるという意味です。苦悩とあまり対峙せず、状況が良くなるまで騙されて生き続けることも大事だと思ったからです。


" 死なないだけで強いのよ "


これは中学時代の担任の奥様から言われた言葉です。
この時の担任と担任の奥様との交流は今でも続いていますが、ぼくが中学校時代から病気で苦しんでいることを奥様も知っていて、この言葉を奥様から聞いた時に、自分じゃ気づかない、少し強い自分がいたんだな、と発見しました。

不登校や引きこもり、精神疾患になったことは「弱い」んじゃなくて、そこから逃げずに嫌な自分とも「うまく付き合っていること」は「強い」んだとぼくは感じました。


" 死ななくてよかった "


これは自分が、事あるごとに感じた言葉です。
病気で苦しくて「この世からいなくなりたい」という気持ちを持つことが何度もありましたが、生き続けると「なにかいいこと」はあるんです。不思議と。長いこと、苦しい時間があって、もうダメだと思い続けても、生き続ければなにか「いいこと」はあります。


この文章を書けたこともそう。
パークギャラリーに出逢えたこともそう。
ダサイながら生きている自分もそう。
ダサイ自分を好きになってくれる人がいることもそう。


なんでもいいから続けること。


" コンドウくん、なにかいいことあるといいね "


これは昔バイトをしていた職場の上司、サイトウさんからの言葉。
いつもいいことがなくてもいいから、なにかいいことがあれば、人間その「いいこと」のために生きつづけられるとぼくは思います。

サイトウさんからこの言葉を言われた時、なにもいいことはなかったですが、「なにか」という、いつになるかわからないけど、生きていればいつか幸せなことが自分にも起きるんじゃないかと希望を持てた言葉でした。

サイトウさんはこんな深い意味で言ったわけじゃないと思いますが。


" マナブくんはもう大丈夫だから "


これはジイさんから言われた言葉。

このジイさんはオカンの父親なのですが、ぼくが不登校でも温かい言葉をかけてくれて、オカンがジイさんの家に行くと、ぼくの近況を聞くという「マナブヒアリング」が毎回行われていました。

太平洋戦争を兵隊として経験した戦争経験者のジイさんでしたが、当時からマイナスなことは言わず「不登校は悪い」とか、精神論は一切言いませんでした。

晩年、ジイさんが入院した時に、ぼくは病室で隠すようにビデオカメラを回し「なんでジイさんはぼくのことを悪く言わなかったの?」と聞いたら「戦争当時、人間は髪の毛以下の扱いをされていた。死ぬのは当たり前だった」と語っていました。

だから、ジイさんは死に直面しているであろうぼくに対し、優しく接してくれたんだと感じました。

ジイさんが死ぬ間際、入所している老人ホームにオカンと行ったのですが、しゃべるのが辛そうな状況でも「マナブくんはもう大丈夫だ」と言ってくれました。もうこの世にはいないジイさんですが、ほんと感謝で、ほんとぼくの励みです。録画した映像をなぜか消してしまったのが悔やまれます。

無題 - 2021年7月23日 22.45.56


以上の言葉。

人は本来幸せになるべきだと思います。

ぼくの場合、不登校や引きこもり、病気で長時間社会との関係を断絶していました。自分が悪いんでしょ、と言われれば何も返す言葉はありません。

でも僕のように社会的に弱い立場だったとしても、そんな人を救ってくれる人や、救ってくれる場所に出逢う権利はあると思います。

体調が悪い、なにも行動を起こせない、頭でっかちになってなかなか先に進まない自分に苛立つでしょうが、自分が嫌いという感情は自分を好きになりたい、という気持ちの現れだと思うので、嫌いだという気持ちも大事にしていいと思います。

ぼく自身、41歳という同年齢の人たちと比較してみると、社会では何もできていません。事あるごとにそんな自分が情けなくなります。でも「生き続ける」ことをしていればなにかが起きると思っています。

いや思い込む。
バカだからできるんです。

時には鈍感に、時には敏感に。
たまたまこの世にチャンスをもらい生きている人間だからこそ、これからも

うれしいこと
たのしいこと
きもちいいこと

していきたいです。
それが生きることだと思います。

最後にこの「猫背で小声」ですが、今回で終了とさせていただきます。

この連載を設けていただいたパークギャラリーのみなさま、そして読んでいただいたみなさまありがとうございました。

色々な反響とてもうれしかったです。

あとオトン、オカン、ねえちゃん、姪っ子、ほんとにありがとう。
これからも「おもしろいおっさん」になれるよう、ぼくなりに生きていきます。

やっと社会の窓から飛び出たよ。

まなぶ

つづけ !!


おしまい

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近藤 学 |  MANABU KONDO
1980年生まれ。会社員。
キャッチコピーコンペ「宣伝会議賞」2次審査通過者。
オトナシクモノシズカ だが頭の中で考えていることは雄弁である。
雄弁、多弁、早弁、こんな人になりたい。
https://twitter.com/manyabuchan00

『小声で猫背』1話から公開中


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