ワクワクとソワソワ #1 「デッサンとの出会い」 ー 織田知里
#1 「デッサンとの出会い」 ー 織田知里
現在、地元の石川県で暮らす私は、アルバイトをしながら絵を描く生活を送っている。その生活は自分にとって当たり前の生活となっているが、そこに行き着くまでには、いろんなきっかけや出会いがあった。
多分、今思えば、「絵」というものにこだわりを持つ一番初めのきっかけは、高校時代のデッサンとの出会いだ。
高校生の時、美術の授業があり、その美術の先生に美術部に入らないかとスカウトを受けた。人生初のスカウトは、内心ワクワクしていた。美術部では新しい友達もできた。
特に最初のうちは何をするわけでもなく、放課後には必ずお菓子パーティーが繰り広げられる、最高の部活だった。お菓子パーティーは黙認されていたが、美術室のストーブでスルメを焼いて食べたことは多分先生は知らないと思う。
途中、先生から「デッサン」というものを教わることになった。
確か、最初に描いたのは木の立方体。鉛筆の削り方から、デッサンのいろはまでたくさん教えてもらった。デッサンをしていると時間が経つのがあっという間で、結構楽しかった。手が真っ黒になると、何か職人みたいでちょっとテンションも上がっていた。
その後もデッサンの講習は続いたが、なかなか自分の癖みたいなものが前面に出たデッサンしか描けず、上手くはならなかった。でも次々に違うモチーフに挑戦し続けていった時、なかなか完成させることができない日があった。そのモチーフは、本を開いて机に寝かせたもの。
なぜか、上手く描けない。
影が変なのか、形が変なのか、、。さらに観察して描く。上手くいかない。さらに観察。それを繰り返しながら描いていると、今まで描いていた自分のデッサンとは明らかに違うデッサンが出来上がっていた。上手くいかず、あーだめだ。失敗。と完全に思いながらも、描き続けると、意外にあれ?良い感じ?良い感じに描けているよね?という少し不思議な感覚だった。その絵は先生も褒めてくれた。
そんなデッサンを通して初めて味わった感覚と、集中し没頭する時間の楽しさが、今絵を描く生活を選んだきっかけの一つとなった。
そのきっかけをくれた美術の先生には本当に感謝したい。
織田知里