よむラジオ耕耕 #36 「アシスタント星野のひとり語り」
星野:こんにちはこんばんは。アシスタントの星野蒼天(そら)です。12月の1週目は MC 加藤さんが体調不良のため、星野のひとり語りでスタートしたいと思います。いまは仲間と運営する PUNIO の2階でこたつに入りながらぬくぬくしております。みなさんもこの12月は本当に寒くなってきたので、体調には気をつけて暖かくしてお過ごしください。無理に外に出ず本当に暖かくしてお過ごしください。
日本の食文化は「発酵」だ
星野:先月は「食の感動体験」をもとにお便りを募集していました。番組内で答えきれていないお便りに答えていきたいと思います。
星野:パリの中華は日本と味がちがうのかなとか思ってアキックスさんに詳しく問い合わせたところ、日本の中華は日本人向けにつくられているからパリのほうが本場の味かもしれない、とのことでした。そんなにちがいがあるものなのですね。
食で言えば、ちょうど昨日「日本食」について PUNIO のメンバーと話をしていたんですが、そこでメンバーのひとりが急に納豆をたべはじめて「納豆えぐい」って言い出したんですよね。みんな「どうしたどうした」って(笑)。「納豆がうますぎる⋯」って話題から日本食の奥深さについて話が盛り上がりまして。日本人の「食」に対するこだわりってすごくないか、という話なんですけど。というのも PUNIO メンバーの蓮はアフリカに半年行ってたんですけど、その時、毎食同じメニューだったらしくて。実際アフリカ大陸のザンビアとかマラウイでは白とうもろこしの粉をお湯で練ったシマってのが主食で、それにほうれん草を炒めたものとチキンっていうメニューを毎回食べていたそうです。これに関してちょっと調べてみたところ、マラウイ料理は主食のシマと、メインの肉か魚、それに野菜、トマトソースの組み合わせが基本でそれ以外の選択肢がないそうです。それを聞くと日本の食文化って確かに多様だなって思いました。それこそ中華も洋食もあるし、いろんな調理法もあるし。
星野:そこからちょっと話が派生して、海外の醤油の話に。日本のものと味が全然ちがうらしいんですよ。海外に行った方はすごい共感されると思うのですけど、海外のものはソースに近くて浅くて奥行きがないっていうか。本当にちがうのかな?と思って Google で調べてみました。そしたら、先ほどのアキックスJPさんのお便りにもつながる話なんですけど、醤油は中国と日本のふたつが主流らしいです。もともとは中国から日本に入ってきた調味料らしいのですが作り方がちがくて、中国は低塩固体発酵法と呼ばれる「発酵にかける時間」が短い製造方法がメイン。日本は長期間熟成発酵させた醸造タイプっていうのが主流なんですって。あとは中国で販売されている醤油にはさまざまな添加物が加えられていたりとか醤油本来の味じゃないらしいです。もちろんいい醤油もあると思うんですけど。化学調味料の味がする商品がたくさんあるのが現状らしいです。それに対して日本は時間をかけて熟成させている。要は日本の食文化って発酵なんですよね。「日本の食文化って発酵とともにあるんだ」っていうのが、納豆を通じて体感としてわかったという話でした。これってめちゃくちゃおもしろいなと思って、つまり日本には四季があって、温度が季節と共に変化するからこそなんじゃないかなと思っています。あとは獲れる作物も多様だし、でも土地は狭いから量はそんなに獲れないしってことで長く「食」を楽しむために保存でいろいろ工夫してきたんじゃないかなって。湿気もあるから腐っちゃう。その腐らせ方を工夫して、長く食べられるように、それが発酵だったんじゃないかなとは思いますね。海外は塩漬けとか砂糖につけてジャムにしたりとかするけど、日本は発酵によってより旨みを引き出す、なんて話を友人から興味深く聞いてました。
星野:それではリスナーさんからぼくへ届いた質問にお答えしていきたいと思います。
星野:するひとの気がしれないと言われて「好きです」って言いづらいですよね(笑)。うーんでも、ぼくは好きですね。なんかひとり旅って五感が敏感になるんですよね。というか第六感すらも芽生えはじめている気がする。日常で感じること。色とか空気とか匂いとかそういうものが鮮明に感じられるんですよ。日常がより非日常的になっていくというか。非日常が何なのかっていう話は置いておいて、とにかくすべてが「当たり前じゃない」ってものをもう一回改めて再認識できるんですよね。旅するだけで。たとえば、仲のいい友だちとかと行くと、旅先も「いつもの日常の延長」になっちゃって、五感が研ぎ澄まされにくくなると思っているんですよ。それはそれで楽しいんだけど。例えば海に行ったときとか、海に行く前に「海のにおいがするぞ」って感じたり。そういうことってひとり旅で敏感に感じやすいって思っています。あとはおいしいものを食べたときの食感とか。感動を誰にも共有できなくてさみしいかもしれないけど、ひとり心の中で大事にあたためるにはちょうどいいですよ。だからひとり旅好きです。向き不向きはあると思うけど。「気がしれない」からこそやってみましょう。
星野:本当にいい質問ですね。ありがとうございます。すごく気持ちがわかります。ラジオだからいまから偉そうに「モチベーションの保ち方」を言いますけど、やる気が起きないときってあります。そういうとき、ぼくの場合は自分より強いもの、躍動しているところをみると燃えて、モチベーションにつながります。躍動っていうのは「自分よりかっこいいひと」「自分より強いもの」「自分よりでかいもの」。それを摂取します。たとえば格闘技。ボクシングとか。あとはマフィア映画とかラップバトルとか。すごいモチベーションになりますね。自分がかっこいいなと思うひとのインタビューとかも探してよく聞いたり観たりしていますね。その中でおすすめしたい映画とインタビュー動画がひとつずつあるので紹介します。
まず映画はガイ・リッチー監督の『ロック・ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』。どんな映画かというと、マフィア、大麻の売人、お金を手に入れたい4人組の若造、殺し屋とかアウトローなひとたちがある「2丁の拳銃」を奪いあう話。すごくテンポがよくって、煙たい描写が多い映画でモチベーションがグンとあがるわけじゃないんだけど、ちょっとハイになるような映画ですね。めちゃくちゃかっこいい。絶妙にユーモアも効いていて、すごくちょうどいい映画です。ぜひ、見てみてください。
星野:「学校に行かなきゃいけないのだけど、朝起きれない」これもめちゃくちゃわかる。でも「行け」っていう(笑)。がんばれ!起きろ!って言いたい。でも「厳しく言う」のって誰にもできることじゃないし、厳しく言ってくれる存在って本当に必要だと思うんだけど「厳しさ」っていらないと思うんですよね。だって、変わるのは自分だし、変えるのも結局自分しかいないから、どんなに厳しくされても逆効果。だから、めちゃくちゃ甘やかしたほうがいいと思うんですよ。うーん甘やかすって言っても「与える」のではなくて「愛」ですね。「信じてるぜ」みたいな。「大丈夫だから」みたいなスタンスが大事だと思うんですよ。これはひとから聞いた話なんですけど、ひとって体温や外気温が冷たかったり、寒いとネガティブな思考になるそうで、体が疲れてくると体が動かないじゃないですか。体を動かしたくないって体が思うと脳にネガティブな考えを送って、思考自体をネガティブ、後退的にするんですって。体を動かさないために。だから、ポジティブになるには温めたほうがいいんですって。たとえばスープを飲んだり、ココアを飲んだり、こたつに入ってぬくぬくしたり。暖房つけて、毛布にくるまったり。とにかく体と心はつながっているので、温めたほうがいいんですって。それってすごい理にかなっている。その話にめちゃくちゃ感動しちゃって。甘やかす、愛すとか信じるのもそうだけど、誰かに注意されることって冷たいし、逆にネガティブになるし、そこに「反骨精神」をもってやるって相当なエネルギーだから、前に進むとは思うんだけど、そんな挫折は戦ってりゃ勝手に自分でする。そうやって戦っているひとにかける言葉は全然ないぜって思うんですよね。だから、がんばれ。がんばってる? 温めよう。暖かくして寝ちゃってもいいんじゃない。とは、言いたいですね。朝起きれないっていう悩みに関してはもう「起きろ」。がんばっているんだから起きれないときはしょうがないと思うけど「起きたほうが絶対いいぜ」っていう。「起きれるよ、きみなら」って伝えるのって説教するよりも大事だと思うんですよね。注意する時代はもう終わったんじゃないかな。終わらせたいなってところはありますね(笑)。もちろん締めるところは締めないといけないけれど、そう思っています。あとは「前日早く寝なさい」。それしかないんだから。寝れないのもつらいけどね。とにかく、なんで寝れないのか原因を探りましょう。なにか不安なこともあるかもしれないし。
星野:ラジオをはじめる前はけっこういろんなジャンルを浅く広く摂取していたんですけど、ラジオをはじめてから物事をていねいに観るたのしみとか、ていねいに観ることで「知るよろこび」みたいなのが大きくなったのかなって感じています。たとえば、ひとつのことをいろんな角度からみるとかいろんなアプローチでそれを発信してみるとか。そういう工夫とかが少しずつですけど、できるようになりました。PARK GALLERY のディレクターとしての加藤さんのスタンスも間近でみているわけですし、そういうものを大事にするひとだと思うから。ぼくはまだ全部を吸収できているわけじゃないけれど、ひとつひとつていねいに積み重ねられているなっていう印象がありますね。ディグるたのしさが変化しました。「場づくり」についても同じようなことが言えて、前まではいろんなものを取り入れようっていうスタンスだったけど、いまはひとつのものをより深く取り入れるとか。たとえば写真であったりとか、アートもそうですけど。いろんなものをちゃんと知る、深掘りするたのしさをおぼえましたね。
ご質問ありがとうございます。こちらもめちゃくちゃ深い質問ですごく考え甲斐がありました。前はいろいろものを吸収して、アートをいろんなものに結びつけようと思っていたんですけど、画商になってからは「絵を売る仕事」としてできることを思いっきりしたいなと考えるようになりましたね。クラブのイベントに絵を飾って、アートも音楽もお酒もたのしめるような空間みたいなのをやりたいなって思って行動していた時期もあったんですけど、いまそれは自分の管轄外。それは自分がやるべきことじゃないなってスタンスに落ち着きました。自分がまずやることは作家さんの作品をみる審美眼をつけること。あとは自分がお客さんに伝えるための知識だったり、説得力を高めたりすることっていうところに落ち着いた。それが責任感なのかなんなのかはわからないですけど。視野は狭まったかもしれないけど、逆に進む道が定まったので、自分としては腰をすえてやっていきたいなっていう風にはなりましたね。仲間と運営する PUNIO でのアートへの携わりかたも前まではいろんなものをどんどん間口を広くしてとり入れていったけど、いまはすこしずつ「自分がいい」と思うものとか自分と相性がいいものとか PUNIO と相性がいいもの。それによって PUNIO の色みたいなものを考えはじめてきましたね。ギャラリーとしての色というか。そういう「落ち着いたスタンス」に変わったかもしれないですね。
星野:これについてかなり考えました。簡単にいうと感じてます。感じてはいるけど、何がちがうのかなと考えたことはなかったから、すごくいい機会になりましたね。ぼくらより上の世代のお客さんは資産であったり、結婚祝いだったり、引越し祝いのプレゼントとして絵を求められる方が多い印象ですね。物としての価値で買うひとが多いかなっていう感じです。あとは自分のプロップスだったりとか、ひとがいいというものを買ったりとか。これはあんまり変わらないかもしれないけど、ステータスとして持つ。時計とか宝飾とかのように作品を愛でるひとが多い印象ですね。反対に若いひとたちって「コト消費」とか「体験」にお金を払うひとが増えてきているのかなって印象です。たとえば美術館にいくひとが圧倒的に増えたりとか。あとは日常的に SNS 、インターネットがあるから TikTok とか Instagram のストーリーとかリール、X とかでもアートってひとくくりにするといろんなジャンルがあるから、大きなものだけれど、いろんな「映える」ものからアートの片鱗のようなものまでいろんなものを摂取できているからアートに触れるっていう感覚が上の世代のひとよりもハードルが下がっている印象がありますね。ぼく自身もそうです。個人的に顕著だと感じるのは「アートってわからないんですけど」って前置きにくるひとが減っているイメージがあるんですよね。まだいるとは思うんですけど、「アートってわからないんですけど作品ちょっと観させてください」みたいなことをいうひとが結構ぼくが仕事をしている画廊のほうには来るような印象ですね。50代や60代の方とか。若いひとはふらっときて、一生懸命に観たりしていて、声をかけると「これってこういう風な意味ですか?」とか「こういう風な印象ですね」とか話しかけてくれるし、自分の意見を言うことに対して高いハードルを感じていない印象があります。あとはギャラリストやアーティストでいうと多様なジャンルをうまく乗りこなすひとが本当に多いイメージです。ぼくらの世代とうえの世代で圧倒的にちがうのが、例えば上の世代の作家さんは絵を描くこと、絵を描いて教えることを生業にしているひとが多いけど、いまのひとたちってそれを投資目的に作品をしたりとかお客さんと積極的にかかわったり、 SNS をすごいうまくつかってたりとか。たとえばミュージシャンとかデザイナーとかと積極的にコラボしたりとか。音楽とか小説とかいろんなジャンルにうまく乗りこなしているひとが多いイメージですね。ギャラリストとかでもそうだなって印象はうけますね。なんか器用なひとが多いイメージですね。垣根がなくなってジャンルを超えたつながりが増えていると感じますね。それぞれうまくお互いの強みや個性みたいな自分がたのしいと思えることをストレスなくやれたほうがいいなと思いますね。たのしい方がいちばんいいと思うので。
星野:最後の質問です。
星野:これめちゃくちゃハピネスだね。むっちゃいい質問だなと思いました。これ考えているときにむちゃくちゃたのしかったです。幸せなきもちになりました。なので、みなさんも忙しいと思うし寒くなってきもちも落ち込んじゃうこともあるけれど、最近うれしかったことってなんだろうな、みたいな。絞り出すように考えるだけでたのしくなると思うので、ぜひ考えてみてください。ぼくの最近うれしかったことはけっこうあって、昔からぼくを知っているひとたちから「顔つきが変わった」といわれたこととか、あと料理を最近つくるようになったんですけど、それを褒められたりする機会もあったり。年末の予定をいそいそと計画してますね。ここ2、3年はたくさんのひとといっしょに年越すことが多かったけど、今年はちょっとこもって本でも読んだり金継ぎしたり、服を染めたり服を縫ったり。おじいちゃんみたいな過ごし方をしたいなって思いますね。あとはめちゃくちゃいいマンガに出会いまして、耕耕リスナーさんから教えてもらったマンガなんですけど、羽海野チカさんの『3月のライオン』。結構読んでいるひといるんだって思って、これが本当にいい漫画でした。棋士めざしていたくらいバイブルになりうるようなマンガでしたね。将棋盤も買いましたから(笑)。むちゃくちゃ届くのがたのしみです。どこに感動したかっていうと、主人公はもちろん、まわりをとりまくひとの心理描写の描きかたが本当にすごくて。すごいってのは本当にリアルなんですよ。劇的じゃないっていうか。漫画ってある程度才能や個性、能力があってそれが開花したり、それをつかって大活躍するみたいなのって、話にメリハリをつけるために多いと思うんですけど、これはぼくらが挫折して、それを乗り越えたくて、でも乗り越えられなくて、まわりのひとに支えられてなんとか乗り越えてゆくみたいな、そういう心理描写。現実世界でおきるような心理描写がつかわれているんですよね。だから読んでいて共感するし、いろんな登場人物が出てくるんだけれどそれぞれに正義や理由がある。そういう部分もていねいに描かれているし、本当にいい漫画でした。将棋を指すシーンも本格的だし、それこそ料理のシーンが多く出てくるんですけど、こちらもおいしそう。料理ってのが大事な場面になってくるんですよね。たとえば手巻き寿司だったり、受験合格おめでとうの豪華な料理だったりとか。あとはちょっとした料理だったり。そういうのがしっかり描かれているので、めちゃくちゃおもしろかったです。おしえてくれたリスナーさんありがとうございます。いやぁ、こういう出会いがあるからラジオはたのしいですね。あとは大事にしたい友だちがこの歳になっても増えるのだなぁっていうのですね。あとは最近いい花屋さんを職場の近くでみつけて、同期がおしえてくれたんだけど、そこで花を買ってプレゼントするのってなんかいいなって思いましたね。渡したこっちまでうれしいっていうか。定期的に花は買いたいですね。
星野:というわけで、星野への質問はこれで以上になります。お便りをおくっていただいた方々、本当にありがとうございました。とってもいい質問ばかりで答え甲斐があったし、逆にぼくもリスナーさんに聞きたくなるような質問だったので、ぜひお気軽にインスタの DM など各フォームからお便りをお送りしていただければと思います。今年ももう終わりですね。年末はぬくぬく過ごします。みなさんもたのしんでください。それではまたお会いしましょう。
おわり
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