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妄想絵日記の木川田みりです #18 | 7/10(水)

あるイラストコンペの授賞式に参加した。

会場には審査員と受賞者のイラストレーターが集まり、授賞式後はビュッフェ形式で自由に交流できる場が用意されていた。自分をアピールし、交流するには絶好の機会だ。頭ではそう理解していた。

しかし、私は背中の曲がったネズミのように会場を駆け回り、落ち着きなくあたりを見回していた。床下に隠れたいという本能と、何か話さなければならないという人間としての社会性が入り混じり、前足は地面をつついて体が少し震える。

その時、同じく受賞者の青い髪の女性が風のように目の前に現れ、私の肩を軽く叩いた。

「何を迷っているの?今すぐ話しかけるべきよ。」

その鋭い眼差しは、私の背中を強く押した。

気づけば、私はネズミから人間に変わっていた。審査員全員に声をかけ、名刺を渡し、時間ギリギリまで話をした。満足げに会場を後にしたが、最寄り駅に着く頃には魔法が解け、また灰色の身体に戻っていた。

ー 木川田みり


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木川田みり(きかわだみり)
1996年生まれ。東京都在住。作家、イラストレーター、UIUX デザイナーとして活動中。2022年に初の個展『熱いお湯で洗濯したら縮んじゃった』を開催。近年は、触れ合った言葉から妄想を繰り広げた「妄想絵日記」を日々手にする「レシート」の裏に描き、instagram や X にて毎日更新している。
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