issue 50 「『レディ・バード』 はバイブル」 by ivy
映画みたいな人生、という表現があるように、現実の自分とやけにリンクする映画がある。
自分のことは、美化して見てしまう。だから、自分とリンクして感じる映画が必ずしも自分そのもの、とはいえない。ただ、どんなに小さな断片でも明らかに身に覚えがある映画はある。
映画『レディ・バード』が私にとっては、そういう作品だ。
2017年公開、と比較的新しい映画でいわゆるミニシアター系の雰囲気だけど、結構評価が高くて、ある程度大きなシネコンでも上映していた。
アメリカのカリフォルニア、サクラメントに住む高校生の女の子、レディ・バードを主人公に繰り広げる青春映画。このレディ・バードは本人が考えたあだ名で、どこにいっても頑なに「レディ・バード」と呼ぶように求める。友人、先生、親にでも。
所謂ちょっとナードで、それでいてものすごく音楽に詳しかったり、飛び抜けて芸術の才がある描写はない、レディ・バード。プロムではしゃぐことに内心憧れていたり、生徒会長選挙に出たり、メインストリームに乗っかりたいけれど、言動が故にうまくいかない …。
青春のコンプレックスや自意識と、暴走しきれない自我を抱えて、生きていく痛々しさが終始愛おしい。
さて … お気づきの方もいるかもしれないけれど、私が自己投影しているのはこの主人公、レディ・バード。なんなら、高校生のレディ・バードに比べて25歳になっても「ivyって呼んで!」って譲らない私はなかなか厳しいのか …。
そんなことを思いつつ、彼女の歯がゆく、不器用な生き様はどうにも重なってしまうんだ。大好きな自分になりたくて、理想の自分を思い描いて、なろうとしている。
ところがいざそう行動してみたら、なれる、なれない以前に、その「理想の自分」自体が矛盾だらけで周囲から奇異に思われてしまう。
そんな体験あったよなあ … って。この映画がやたら身の回りに好きな人多くて、結構同じような葛藤を抱えていた仲間がいるのか、って嬉しくなる。思い違いかもしれないけれど。
正月とか、年末とか、やることなくてうんざりするとき、きっとまた見たくなるんだ。
イラスト:あんずひつじ