COLLECTIVE レビュー #34 Jasminum『おんなの子』(兵庫県)
今年の COLLECTIVE は写真の ZINE 、つまり PHOTO ZINE が豊作で、どれもいい。これはパークに訪れた数人の写真家が証言している。ぼくもそう思う。感動するようなものは正直ないけれど、ZINE だしそれはいい。ZINE という枠の中で、精一杯ならそれでいい。何度も言うけれど、この SNS 時代に、ずっしりと重く立派な写真集を出版して偉そうにしている写真家よりも、リラックスしながら自分らしいと思える ZINE をライトにコンスタントに作ってファンやマスに届けられる写真家が素敵だと思う。風通しの悪い「写真」業界に風穴を開けるのは、若いクリエイターたちの PHOTO ZINE ではないだろうか。
COLLECTIVE ZINE REVIEW #34
Jasminum「おんなの子」
関西を拠点に写真家として活動するJasminumさんもそんな若きクリエイターの1人と言える。24歳という若さで、オールドレンズを駆使し、独特な世界を切り取っている。表現のテーマでありモチーフとなっているのは「フルーツ」。そして自身を投影するかのように映し出された「女の子」たち。その2つが合わさったのが、今回エントリーされた ZINE「おんなの子」。サブタイトルは「#フルーツがある」。それは「Fruits Girl」であり「Fruit is there」とも言えるだろう。
昔から写真の世界でも絵画の世界でも果実や花は女性的で性的なモチーフとしてたくさん描かれてきたので、いまあえてその果物表現の魅力をどうこう語るつもりはぼくにはないけれど、何であれ徹底して1つのモチーフと向き合える(向き合う道を選んだ)というのは写真家としては宝物を見つけたのと同様で、24歳という若さでライフワークとも言えるテーマに取り組めているのはとてもぜいたくで素晴らしいことだと思う。
その1つの「まとめ」とも言える ZINE 。集大成というよりも、まとめ、もしくは「現在進行形」が表現できるのも、写真集ではなく PHOTO ZINE のいいところなのだなと思う。どこか甘酸っぱいフルーツを選んでいるのも若さの象徴だ。「いま」が閉じ込められている。
Jasminumさんの場合は、もちろん ZINE もいいけれど、Instagram にあがっている作品もぜひ見てほしい。よりフルーツに対してももっと深く追求して徹底してるように見える作品が並んでいる。彼女の才能も Instagram の方がわかると思う。
そう考えると Instagram は ZINE よりもさらに「いま」という感じがする。鮮度がある。
ただ、「策士、策に溺れる」ではないけれど、果物に依存してしまうのも危険ではある。たくさんの人たちが果敢にチャレンジしてきたモチーフなだけにいくつかの既視感は否めない。生死、SEX、内臓、体液、etc… ぼくらの体や心にさまざまなかたちでシンクロする果物というモチーフ。この「深すぎる」とも言えるテーマを今以上に噛み砕くには相当な時間と知識と、技術と経験を要するのは、ぼくみたいな素人でも容易に想像できる。できるだけたくさんの人たちのたくさんの種類の感情を浴びて、言語化と精神的なイメージを繰り返し、たくさん笑って泣いて、怒って苦しむ。正直にまっすぐ生きる。ただただ暮らす。そのすべてのシーンに果物が存在しているということを強く意識し続けるのだろう。なかなか簡単なことではないかもしれないけれど、これからを生きる Jasminumさんの先の未来を勝手に想像するだけでワクワクする。
若いクリエイターへの投資という意味でも、買う意味も価値もある1冊だと思う。ぜひ会場で手に取ってみてほしい。
レビュー by 加藤 淳也
---- 以下 ZINE の詳細とそれぞれの街のこと ----
【 ZINE について 】
フルーツと女の子は何処か通ずるものがある。外観のみずみずしさや美しさだけでなく、内に秘めたそれを表現したかった。フルーツを中心に、身近にあるものから女の子を連想させることに挑戦した。
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