よむラジオ耕耕 #01 『はじめまして』
加藤:パーソナリティの加藤淳也です。
星野:アシスタントの星野蒼天(そら)です。
加藤:はじまりました『ラジオ耕耕』。そもそも『耕耕』と言うのは何かと言うと、個人的に気になっている農業の『耕す』という行為を英語で、CULTIVATE(カルチベイト)というんですが、CULTURE(カルチャー)の語源になっているんですよね。文化を耕すという行為と親和性の高さがとても良いなあということと、僕がディレクターを務めるパークギャラリーは、割とそういった文化(カルチャー)を耕すことをしてきたなあと、ここ6、7年やってみて自負していて、これを機に少しパークギャラリーのことを話せたら良いなというのと、よりみなさんが気軽にアートという業界、アートというシーンを楽しめるように、そしてカルチャーというのをもっと身近に感じて、日々に取り入れて栄養にして楽しんで、豊かにしていってもらえたらという思いで、ラジオをはじめました。
まず、ちょっとだけ僕らが誰なのかというのを説明します。
あいさつ
僕(加藤)は東京・末広町のパークギャラリーを運営していて、パークギャラリーに来たことある人はなんとなくわかると思うんですが、3階建ての住居兼ギャラリーという形を取っています。1階がギャラリーで、2階が今こうしてラジオを録っている現場でもあるんですが、普段はみなさんあがってきて、僕の本棚の本を読んだり、物販を購入したりしています。お酒を持ち寄ってみんなで飲んだりたり、トークイベントをしたりというのも2階で行っていて。キッチンとかもあるので料理も作って出したりしてます。ちなみに3階は僕の職場であり、完全にプライベートの空間。生活感たっぷりのギャラリーになっています。
星野:ギャラリーの説明だと思って聞いてる人にはすごい情報過多で困惑してると思います(笑)。「え?キッチンもあるの!」って。
加藤:そうだね。大きい冷蔵庫もあるし、テレビも VHS もある。まあ来ていただいたらわかるっていう感じですね。ちなみに1階は、2週間に1度くらい展示が変わって、スタッフも日によって変わったりしていて、比較的、アートが好きな人はもちろんだし、展示してる作家さんのファンとか関係者はもちろんなんだけど、ただここに集まる人たちと仲良くなって通ってくれる常連みたいな人もいるし、お酒の持ち込みとかも自由なのでふらっと立ち寄っておしゃべりして帰る人もいるし。サロンみたいなイメージで元々やりたくて、コミュニケーションの現場というか、「アートって難しいよね」ってみんなで言い合う現場っていうか(笑)。
星野:サロンよりももっとラフな感じですよね
加藤:そうそう。「写真ってどうやって見たら良いかわからない」とか、「この絵のどこがすごいの?」とかそんなことをみんなで言いながら、でもそれと並行して作家同士が集まって作家同士じゃないと話せないクリエイティブな話とか、あと、まあ僕がわりと普段はギャラリーをやりながら広告関係の仕事をしているので、その経験則をもってクリエイターと話したりとか、アドバイスって言うとおこがましいけれど、そう言った時間が有機的に流れてるって言うのがパークギャラリーです。比較的「ゆるい」って表現されているようなギャラリーですけど、褒め言葉と思っています(笑)
星野:一筋縄じゃいかないギャラリーですよね(笑)
加藤:でもまあこの「ゆるさ」っていうのがどういうことなのか、みたいなことも含めてこのラジオで耕していくということをできたらなあと思います。あとは遠方で SNS だけで知ってくれていた人が、より深く楽しんでくれたらなというのと、ちょっと緊張するから行きづらいなと思った人が「こんな感じで行って良いのね」みたいに感じてくれたらと思います。
加藤:アシスタントとして参加してくれてる星野くんはパークギャラリーのスタッフとして入ってくれてる一方で、住居兼ギャラリーを北千住で運営してるということで、その説明をお願いします。
星野:僕も住居兼ギャラリーを運営しているという特殊な共通項があって、パークギャラリーに遊びに来ていて。
加藤:うちは秋葉原とかお茶の水とか都会の喧騒の中でやっているのに比べて、星野くんがやってる PUNIO は北千住の駅前こそすごい都会だけれど、ちょっと歩いてくと一気に生活圏に入ってくというか。
星野:本当に下町というか、路地裏に入ってくんです。低い建物しか無くなるというか。場所は幼馴染3人で運営していて、僕らも住みながらギャラリーを運営しています。ギャラリーといいながらも目的は集まることとか会話することか、そこが結構パークギャラリーに共感できるというか、つながることも多くあったりするのでそういう部分も耕していけたらなと思い。今回アシスタントとして話を聞かせていただくことに。
加藤:そもそもなんで『耕耕』をはじめようと思ったかというと、星野くんに呼んでもらって今年の2月に PUNIO に誘ってもらってトークイベントをやったんだよね。トーク2時間、交流会2時間のイメージでなんとなく4、5時間とっていたんだけど、いろいろお客さんも入れて、若い子とかクリエイターとかもも交えて話してたら、ずっと自分の話を5時間しゃべってたんだよね(笑) 。
星野:僕はただ聴いてるだけでした(笑)。加藤さんのはなしだけで5時間でしたもんね。でも加藤さんの人生を全部聞くってなると5時間じゃ足りなかったですね。
加藤:幸い、聞いている方もよかったって言ってくれたこともあって、そろそろ僕もいい歳だし語ってもよいのかなというか(笑)。話すことで自分の頭の中が整理されるというか、客観的に自分を見るのにとても良いなと思っているので、こうして話す機会があったらいいなと思っていたのと、パークギャラリーをここではじめてから7年目ということもあるかな。ここの前に1年、東京都江戸川区の平井というところでパークショップ&ギャラリーっていう名前でギャラリーをやっていたりとか、あと個人的にはフリーランスのディレクター・編集者とい肩書きで活動しはじめたのが2012年の後半なので まあ約10年経って、僕が培ってきたいろいろなこととか、ギャラリーで出会ってきた人たちに触れてきて考えたこととか、気づいたこととか考えてよかったなということを僕らのフィルターを通して共有しながら、よりパークギャラリーとか、みなさんの近くにあるギャラリーとか、身近なアートでもなんでもいいんですけど、身の回りにあるクリエイティブなものが楽しくなるというか、より豊かになるようなラジオをお届けできたらなっていうのが本音ですね。おこがましいですけどね(笑)。一応10年間くらいのインプットを、ある程度吐いておかないと次が入ってこないんで、僕のためにも、そして星野くんのためにも(笑)。みなさんはラジオを通じてインププットとしてもらって、僕はアウトプットする。
星野:一番いい形だと思います、僕もまだいろいろインプットしたい時期ですし、ニーズとニーズが合致しましたね(笑)。この間の5時間では聞き足りなかったし、聞いてみて、ここだけで終わらせるにはもったいないなというか、もっと「あの時に話したあれってどういう事ですか?」みたいに、種を植えて水をやって芽を出してっていうのを自分がしたいなって思ったので、どうせならそれをみんなで共有したいなと。
加藤:毎週水曜日目標で、夜にふと種を蒔く感覚でやれたらと思うんですが。4月は僕らの紹介みたいになってしまうんですが、5月以降はできるだけみなさんの「アートってどうなの?」とか「こういうのってどういうふうに見たらいいの?」とか、ちょっとした悩みというか、話をいただいてそれを拡張していけたらと思っているんで、もしよかったらメッセージも送ってください。
https://forms.gle/W6XdhThNWafvNMq89
(匿名でも投稿できます)
星野:僕ら2人で耕していてもしょうがないんでね(笑)。種をみんなで分け合って撒いていくビジョンがあります。
加藤:とても素敵なキービジュアルを、イラストレーターの北野有さんが描いてくれたんですが、まさにあのイメージ!。あの感じでみんながアートのまわりを、『耕耕』のまわりを楽しそうに囲んで、それぞれがそれぞれのところに持ち帰って種を蒔いてもらえればなあと思う次第です。そんな思いで『耕耕』を始めました。
パークギャラリーについて
加藤:パークギャラリーについてもう少しだけ話せればと思うんですが、まず東京の『末広町』にあるってのが基本情報かな。末広町は秋葉原とかお茶の水って言われてるエリアで、渋谷・表参道とか、下北沢・高円寺・吉祥寺っていう東京のいわゆる西側と言われてるエリアと逆にあるのがこのエリアです。PUNIO がある北千住もまさに東側。人によって感覚は違うと思うけれど、カルチャーが集中してるのが西、昔ながらの下町の風情とか、東京の空襲から逃れて、幸いいろいろな古い建築物が残っていたり、昔ながらの江戸の文化が残っていたりするのはわりと東京の東側みたいな分布ですかね。ちょうど皇居の東か西かで生活圏は違うのかな。山手線の東側でもあります。
あと歩いて3分のところに『神田明神』という大きな神社があります。5月には『神田祭』という日本三大祭があるくらい由緒と歴史のある街なんだけれど、同時にメイドやオタクや外国人や観光客がクロスしている街でもあります。
星野:かなりクロスしてますよね。御輿もコスプレした人が担ぐって聞いて驚きました。
加藤:そうそう(笑)。でも僕はもともと上京してからの十数年は世田谷の方に住んでいたので、どちらかというとこのラジオを聴いている多くの人と同じように、渋谷や表参道、下北、高円寺界隈で遊んだり飲みに行ったりが多かったかな。『末広町』って遠いと思っていたからね。浅草とか北千住とかは「日帰りの旅行やん」と思っていたから、人によってはすごく遠いところでギャラリーやってるなあっていう自覚はあったりもするんだけど、それもでも時代によってちょっと違くて、今の時代、楽しむために「遠い」とか言ってる人の方がナンセンスで、東京も、もうちょっと広く捉えていろいろなところで遊んで行けた方が楽しいよねって個人的には思う。だから「末広町も北千住も遠くないぜ」というのは言いたい(笑)。ただどうしてもね、乗り換えとか億劫な人がいたりするのはわかる。まぁ位置関係的にはそんな感じなんです。
加藤:一応、ギャラリーの内容としてはイラストレーションが多いかな。写真ももちろん。PUNIO は建築もやってるんだよね?
星野:そうですね、絵画作品だけでなく建築、写真、最近はフリマのイベントもやりました。興味ある人はそれぞれのウェブサイトに飛んでもらえれば。
https://park-tokyo.com
https://punio1001.com/
加藤:あとは PARK GALLERY にはいのうえという店長がいて、日替わりでスタッフが変わって、その日によって表情があって個性があってそこに集まる人たちがいて、集まる人たちによっても雰囲気が変わったりするっていうところがパークの魅力だと思っています。さっきも言ったように「ゆるい」ってよく言われるし、でも「ほかにこんなお店はない」と言われることも多いから、自分でもあまり分析できてないので、みんなに分析してほしいところもあって、なるべく僕の1人語りではなく、星野くんの客観的な視点とか、よりみなさんの客観的な意見を集めて、よりよいラジオにしていきたいし、より楽しめる場所にしていきたいなと。ギャラリーに対する質問も送ってもらえればすべて答えますんで(笑)
星野:あ、パークギャラリーの場所の説明で1番大事なのを忘れていました。『公園』が隣にあります。
加藤:そうそう、忘れてた(笑)。なぜ『パークギャラリー』と言うのかってところですよね。パークギャラリーって言うのは末広町に来る前から名付けていて、それはなんでかというと平井でやっていたパークショップ&ギャラリーの目の前にも公園があったんですよね。ちょっと小さな公園でしたけど。もっとさかのぼると、また機会があれば詳しく話しますが、『パーク』って屋号でフリーランスで仕事を始めるんですよね、個人事業主なんですけど、会社名みたいなものかな。『パーク』って屋号で働いていたら、店のそばにたまたま公園があって、だからここでやりたいと思ったのかもしれない。それに『公園』のあるなしは関係なく、パークと呼べばそこが公園になるというか、ぼくが行く先々が公園になる、という捉え方もできるし。
星野:平井のパークもみんなで名前を決めたんですよね。
加藤:そうだね。僕が自分の『パーク』を店の名前にしようと決めたわけではなくて、集まった何十人かで投票した結果『パーク』って名前になった。割と常に『パーク的な感覚』、要するに公共とかパブリックとかそう言ったものを大事にしているので、うちもなるべく開かれた空間というか、「入りづらい」ってのがアートギャラリーの定説なんだけど、できるだけ入りやすくしたいなと思ってます。町の図書館に行くくらいの感覚で来てもらえたら。まぁ『パブリック』っていうのは非常に大事にしてるかなあ。後は『パーソナル』はもともと大事なので、その2つが交わるところにしたかったというのがあります。
PUNIO について
加藤:PUNIO はなんで PUNIO って名前なの?
星野:ぷにおは PUNIO ってローマ字で書くんですよ。
加藤:ギャラリー『くにお』とかに間違えられない?
星野:そうなんですよ、一気に老舗感が出て渋くなります(笑)。実は、Pigment Undercover uNIOn の頭文字をとってプニオなんです。“Pigment” は水に溶けにくい顔料とか色素の意味で、“Undercover UNION” は秘密結社って意味なんです。「色を持った人たち、モノたちが集まって、互いの色に影響を受けながら与えながら、でも混ざり合うことなくそれぞれの色を保ったまま秘密裏に何かしてる」という意味を込めました。そのままだと格好良すぎるので、みんなに愛してもらえるように『プニオ』っていうかわいい名前にしました。
加藤:名前をつけたのは、今の場所を見つけたから?
星野:そうですね。今の場所を見つけて、どんな場所にしたいのかって考えた時に、そもそも「ギャラリーやろう」ってはじまったわけではなくて、幼馴染の3人の個性を活かした場所を作って、みんなが帰ってこれるような、成長できるような、おもしろい場所にしたいという一心で考えました。ギャラリーという体裁を取ってますけど、僕はギャラリーの代表で、1人は俳優で、もう1人はこの間までアフリカに行ってた旅人で。それぞれの色がちゃんとあるんで、ジャンルが未だない物、場所を作っていきたいという思いで、名付けましたね。
加藤:PUNIO に行ってもらうとわかるんですけど、路地をこう迷路みたいに歩いてくと、ふわっと立ち上がるように現れる一軒家の感じとかはまさに『秘密結社』というか『秘密基地』というかね。若さ特有の裏組織感というか。
星野:憧れますもんね、秘密基地
加藤:秘密基地で集まって、みんなで何かニヤニヤしながら何かを企んでるっていう空気感が PUNIO にはあるよね。公園で遊んだ後に限られたメンツだけ集まってニヤニヤしてる感じがするね。
加藤:そんなパークギャラリーを運営する加藤と、PUNIO の星野くんが、毎週水曜日あたりにお送りしていくのが『ラジオ耕耕』です。僕らの話だけでも寂しいので、意見や感想があればぜひお便りを読みたいですね。気軽に送ってください。
そして番組の最後には、僕か星野くんの思入れのある曲とか、その時々のエピソードにまつわる曲をかけて終わりたいと思います。なので、曲を楽しみに聴く人も現れてくれればうれしいですね。1週目は、子どもの頃から好きなフィッシュマンズの中から1曲かけたいと思います。このラジオはポッドキャストなので『チューニング』って作業はないかもしれないですけど、僕が高校くらいの時かな、山形のド田舎で、誰かに救いを求めるように夜な夜なラジオをチューニングしていて、そのラジオから流れてくる曲とかパーソナリティの会話とかにすごく救われたなあというのがあって。だからここで流れる曲とか、僕らの会話が誰かの心の栄養というか、誰かの役に立てば良いなと思っています。山形の田んぼの真ん中とか、東京に一人で出てきた時に、闇を明るく照らしてくれた、というと格好よすぎますけど、暗い時でも寂しくないって感じさせてくれたフィッシュマンズの『ナイトクルージング』をかけて終わりたいと思います。