【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー ㉖ おおいし ももこ 『ぎんちゃんとこさめ』(静岡県静岡市)
毎年、8月に開催される COLLECTIVE 。クーラーの効いた部屋でキンキンに冷えた瓶ラムネや缶ビールを片手に、壁に展示された ZINE を手に取りペラペラとめくる。いつの間にか、ぐっとその世界に引き込まれてしまい、蝉の鳴き声もいつしか聞こえなくなってる。「ZINEのピークは立ち読みの瞬間だ」「いやレジに持って行って買う瞬間がピークだ」という議論が湧いたのは2年前。逆説的に言うと、家に帰るとだいたい ZINE の魔法は解ける。それでもいいんだよね。ZINE って。
本がほしいんじゃなくて、「買う」と言うアクションは投票に近い。彼に、彼女に共感した、というどちらかというとドネーションに近い。
猫を飼うことで変わった日常を残したい
COLLECTIVE に来たら、そんな感覚で ZINE を選んでみるのもよいかと思います。例えば犬を飼ってるひとは犬の ZINE、猫を飼ってる人は猫の ZINE、恋人に依存してしまってる人は、恋愛のポエムが掲載された ZINE を。
さて、猫を飼ったことある人なら必ずと言っていいほど共感できてしまう1冊の ZINE『ぎんちゃんとこさめ』は静岡から届きました。エントリーしてくれたのは、イラストレーターのおおいしももこさんですが、この ZINE は絵描きの umi さんとの共著。
お互いの絵のタッチで、それぞれの猫との暮らしの様子を愛情いっぱいに描いた交換日記みたいな1冊。それぞれの特徴や、性格、癖みたいなものが、おもしろおかしく日常の1コマとして漫画みたいに描かれていているので、とっても読みやすい。あっという間に読んでしまった。僕も10年くらい猫と暮らしていたので2人が描く「あるある」に、首を激しく縦に振りながら拝読。イラストひとつひとつしっかり猫の修正を捉えてて、好きこその、だなぁと。
僕が飼ってた猫は病気で死んじゃったけど、あの時のにおいや温度、か細い声、真っ白な毛、きれいな瞳。今でも、こういう、ふたりの ZINE みたいな ZINE のおかげで思い出せたりする。2人もきっと、こうして、“ぎん“と”こさめ“のことをいつかありありと思い出すためにきっと記録してるんだと思う。そう考えると、ZINE に記録するというのは生きた証明のようで心強い。誰かの愛のポエムも、猫との暮らしの記録も、誰かにとってはよその国の話かもしれないけれど、自分とシンクロさせた瞬間、とっても意味や価値のあるものになる(ことがおおい)。
小さなメディア ZINE の最大の武器は『共感』。
共感せよ!とは言わないけれど、共感できた時のよろこびや感動は、ZINE の場合、とても大きいと思います。だから COLLECTIVE ではぜひ、1つでも、すこしでも共感できる ZINE にみなさんが出会えたらと思います。猫を飼った経験があるのであれば、この『ぎんちゃんとこさめ』はぜひ。
レビュー by 加藤 淳也(PARK GALLERY)
作家名:おおいし ももこ(静岡県静岡市)
静岡生まれ。沖縄の美大を卒業後、静岡を拠点に活動中。どこか懐かしい作品を心がけています。
https://www.014momo.com
【 街の魅力 】
寒すぎず、暑すぎないので過ごしやすいです。
【 街のオススメ 】
ふじのくに環境史ミュージアム ... 環境のことや、身の周りにいる生き物や植物のことをわかりやすく知ることができる。デザイン性の高い展示方法なので、みるだけでも楽しい。
https://www.fujimu100.jp
【 同じ地域で活動するひと 】
ゆずりはすみれ / 詩人
https://www.instagram.com/yuzurihasumire