COLLECTIVE レビュー #13 Futaba.『here and now』(北海道)
お酒をよく飲むので、いろんなことを忘れてきた人生だけど、展示や SNS とかで一度見て「いいな」と思った人の作品はあまり忘れるということがない。例えば名前を忘れてしまったりすることはあるけれど、時々、なにかのはずみでレンズのフォーカスが合うように思い出したりする。
今回紹介するイラストレーターの Futaba.さんのことも記憶に残っている。おそらく MOUNT Tokyo でのグループ展の記憶だと思う。好きな絵だなと思った。
COLLECTIVE 2022 ZINE レビュー #13
Futaba.「here and now」
北海道在住(今回は北海道からのエントリー多いですね)の Futaba.さん「here and now」は、ご自身の拠点でもある北海道の空気感をイラストレーションで切り取り、閉じ込めた1冊。これを手にした人が、その空気に触れてリラックスできるといいなという思いから生まれた。札幌の中でも、都会と自然がクロスするその場所は、小川が流れ、野花が咲き、昆虫や動物がやってくる自然豊かな場所(鹿はもちろん、熊も時々現れるらしい!)。そこに暮らす人たちの豊かな時間、空間、営みが、カラフルに描かれている。ただ単純に色数が多いというわけでもなく、
色とは光なのだ、ということを強く再認識させられるような鮮やかさだ。
訪れたことのない街の、誰かの暮らしの光と影が、こんなにもうらやましく思えるなんて。北海道の名前も知らない街に、思いを巡らせながら ZINE をめくる。
この新作 ZINEを創作するにあたって
「存在とはどういうことだろう?」
ということをいつになく真面目に考え、悩んだという Futaba.さん。時に哲学的でもある ZINE と向き合って生まれた1冊とも言えると思うが、その想いは、これを手にした誰かの心が彩られれば、とシンプルだ。プロセスが大事だから、最後はシンプルでいいと思う。
あまり英語がわかる方ではないので、中に書かれたテキストまではわからないのだけれど、今回ぼくが大事だと感じたのは、タイトルの「here and now」。まさに ZINE 的な考え方だなと思った。
「いま、ここでできること」、というのを理解した上で自分の持てる力と思考をふりしぼり、大きな資本や、システムにできるだけ寄りかからずに個を表現する。
ZINE に限らず、大事なことだと思う。
足元を見ること。自分の手が届く範囲を理解すること。自分の体と心と会話すること。嘘をつかないこと。目で見たことだけを信じないこと。光もあれば影もあることを知ること。
ものを作る(編む)うえで大事な哲学が詰まった1冊だと思った。
イラスト集としてもとてもいいと思います。額に入れて飾っておきたくなる ZINE です。おすすめ。
レビュー by 加藤 淳也
---- 以下 ZINE の詳細とそれぞれの街のこと ----
【 ZINE について 】
光にあたり、闇に照らされ、浮かび上がる。「存在とはどういうことだろう?」。そんなことを、いつになく真面目に、真剣に悩み、踠き、考えあぐねて制作した ZINE です。いつかこの ZINE が、誰かの心の拠り所になってくれたら良いなぁと思います。
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