なかおみちお 連載コラム DO NOT DISTURB #09 『モノづくり』
現在、パークギャラリーと僕が企画したイベント『PARK MART#03』が開催中です。詳しい内容はリンクからチェックしていただきたいのですが、
ぼくから、アーティストのグッズを展示するイベントをやりたいとパークの加藤に伝えて、実現したのが始まりでした。
------
以前、吉祥寺の ARGUMENT GALLERY で、『New gig』というグループ展を企画させてもらった時は、狭い空間でしたが、大人数のアーティストたちの作品をぎゅうぎゅうに展示していました。作品とは別にグッズも持ってきてもらって、一緒に陳列して販売した時、
アーティストが作る「グッズに宿るそれぞれの存在感」
にグッときてしまいました。1つひとつおもしろいのに、集まることでさらに最高に楽しい空間になるのです。
しかもグッズには、自分の普段の作品のイメージやスタイルを知らない人にも知ってもらいやすいという特徴があります。例えば好きなアーティストのイラストが入ったティーシャツを着て、街に出たとして、そこで出会う人、通行人までもがその絵を目にするし、友達が「それ誰の絵?」と聞いてくれば、コミュニケーションへ発展することもあります。そこが作品と違うおもしろさだと思います。
作品は定位置に飾られるものですが、グッズはアーティストの手を離れたあとも、持ち主の日常の生活の中に溶け込み、持ち主と一緒に移動し、人の目に触れていく。作家の意図しない動きがあることを想像すると、とてもおもしろいものだと気づきます。
実際にぼくのティーシャツを着た友人が仕事中に「このティーシャツ知ってるよ」と話しかけられたというエピソードもあり、聞いたときはうれしかったし、作っていてよかったなと思いました。
ぼくがはじめてティーシャツを作ったのは、『Tシャツ君』という、家庭で気軽にティーシャツを刷れる機械を友達が買った時。図々しく、ぼくのも作らせてもらって、
『井の頭公園の糞するハトを捕まえろ!』
みたいなグラフィックや、
狂牛病のタイミングだったので、牛の首から血が流れている『Eat Beef ! 』と書かれたティーシャツを作っては、地元の友達に送ったりしていた。そのころはそれだけで楽しかったから、売上がどうこうは考えていなかった。
なぜこうして自然にティーシャツを作り始めたかを考えると、ぼくらが高校生の頃に読んでいたファッション雑誌で、その頃は特にグラフィティーライターたちが自分たちのスタイルを洋服に落とし込む、というムーブメントがあり、それを見ていたのが1つです。
特に『Project Dragon』『SUBWARE』『STASHISH』などニューヨークの
クロージングブランドは、グラフィティーのアートピースをただ乗っけるのではなく、スタイリッシュにデザインし直されていて、そのネクストスクールな表現に影響を受けました。
あと、スケートボードのカンパニーなどはキッズたちにウケるひどいジョークを入れたアイテムを出していたり、仲間のアーティストのアートを使ったり、その自由な表現は、そのスケートブランドのイメージに直結し、見ていて本当にゆかいでいて、純粋に作りたいものを商品化しまくる姿勢は、今のぼくのグッズ作りにつながります。
ここ最近は、わざわざグッズを作らなくても、画像をアップロードすれば、
コップでも Tシャツでも受注生産してくれるサイトもできて、在庫を抱えることもなく、とても便利になった反面、そのサイトのサービスの範囲でのグッズ作りしかできません。そこでは扱っていないメーカーのティーシャツに自分でプリントするだとか、パッケージに一工夫加えて、その作家のオリジナルのタグが付いていたりとか、そのひと手間が、作家の魅力として手に取った人にきっと伝わるはずです。
今回は、そういう魅力があるアーティスト、インディーズブランドに声をかけさせてもらいました。PARK MART は3回目ですが、今まで以上の物量で圧倒されるはずです!
コロナ禍ではございますが、5月9日(日)までやっております。よろしくお願いします。
5月5日(水)のこどもの日には 、自身のティーシャツなどに自分でプリント体験ができるワークショップイベント『パークマート祭』を開催しますので、興味のある方は詳細をご覧ください。
なかおみちお
1982年鳥取生まれ・東京在住、イラストレーター。
間の抜けたPOPな表現でイラストを中心に活動中現在、VERY(光文社)にて『武田砂鉄のVERYな言葉狩り』でイラスト連載中。NERD SKATES、NERD SPORTS 名義でオリジナルもグッズも制作している。2014年から4年にわたり毎年開催された ARGUMENT GALLERY でのグループ展『New gig』を主催。
https://nakaomichio.com
パークで取り扱い中のなかおみちおくんのグッズ一覧。