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妄想絵日記の木川田みりです #20 | 7/4(木)

声が小さい。

声が小さいのは昔から変わらず、会話をしていると必ずと言っていいほど「え?」と聞き返されるので、私は大事なことでなくても常に同じことを2回言っている。

この日は仕事で、初めましての方も含めたオンライン会議があった。自己紹介がてら「私は声が小さくてよく怒られるので、もし聞こえなかったら言ってくださいね」なんてちょっとこなれ感を出しつつ言ってみたが、オンラインでの会議はマイクを極限まで近づけて話しているので聞こえないことはないだろう。

私はプロの「声が小さい人」なので、たまに大きい声を出すとびっくりされて「どうしたの?今日テンション高いじゃん」とか言われることがある。最近はプロの意識を持ち、どんなに気分が高揚していても、草原を吹き抜けるそよ風のように静かに喜ぶようにしている。

でも最近、私よりも声が小さい人がいるということを知った。その人と話す時は極限まで耳を近づけて、神経を集中させる。言葉の淀みのひとつも聞き逃さないぞと意気込んで、目を閉じる。そうしていると、もはや言葉は要らなくなる。私たちは目線の先にある足の指をピクピクと動かしながら会話していた。「ヒック」「ピクピク」「ピヨ」可愛げに足の指を操り、足の指で笑った。私はもう何も恐れることはない。

ー 木川田みり


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木川田みり(きかわだみり)
1996年生まれ。東京都在住。作家、イラストレーター、UIUX デザイナーとして活動中。2022年に初の個展『熱いお湯で洗濯したら縮んじゃった』を開催。近年は、触れ合った言葉から妄想を繰り広げた「妄想絵日記」を日々手にする「レシート」の裏に描き、instagram や X にて毎日更新している。
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