妄想絵日記の木川田みりです #09 ｜3/6（水） のこと
歯医者さんから定期診断のハガキが届いた。
私が通う渋谷の歯医者さんから届くこのハガキは、なんとも質素だ。４ヶ月に一度届くその姿は、どこか懐かしく、昭和の香りがする。それが気に入っている一方で、このハガキには、行動を起こさせる力がない。面倒くさい。渋谷怖い。行きたくない …。
そう思いながら、ハガキをティッシュの箱の下に見えないように仕舞い込もうとしたその瞬間、どこからともなくエンジン音が響き渡った。「ゴォーー！」という音と共に、私の口の中から奥歯が２本、飛び出していった。お別れを言う間もなく、どこかへ飛び立ってしまった奥歯たち。果たして、彼らは渋谷の歯医者に無事辿り着けただろうか。それとも、もう私の元には戻ってきたくないのだろうか。
心配しつつ、ハガキを片手に渋々予約の電話をかけた。もしかしたら、飛び出した奥歯たちが帰ってくるかもしれないと淡い期待を抱きながら。
ー 木川田みり
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木川田みり（きかわだみり）
1996年生まれ。東京都在住。作家、イラストレーター、UIUX デザイナーとして活動中。2022年に初の個展『熱いお湯で洗濯したら縮んじゃった』を開催。近年は、触れ合った言葉から妄想を繰り広げた「妄想絵日記」を日々手にする「レシート」の裏に描き、instagram や X にて毎日更新している。
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