ワクワクとソワソワ #3 「描く楽しさ」 ー 織田知里
いま私は、絵を描くことが楽しくて仕方がない。
なにを描こうか考える時間や、描いている時間そのものがとても楽しい。
描きたいものの資料などを用意して、あとは何となく頭の中でイメージしてから白い画用紙にどんどん絵の具を乗せていく。
形や色も細かく決めずに、描きながらここにこれを足そう、ここにはオレンジを入れたい、みたいな感じで描き進める。だから完成直前までどんな絵が仕上がるか自分自身も想像できていないことがある。そうやって完成させた絵はとんでもなくカラフルに仕上がることもあれば、クールな印象になるもの、ド下手な絵もある。その「予測できないもの」が、白い画用紙から誕生することにとてもワクワクするのだ。
最近では描いている最中、思いもよらないところからアイデアをもらうことがあった。それは、机を汚れないように敷いている新聞紙。その新聞紙の上に画用紙を置いて絵を描くのだが、画用紙からはみ出た色んな色の絵の具が重なり合って、新聞紙はどんどん汚れていく。机の上を掃除するタイミングで、新聞紙も新しいものに変えるのだが、ある日絵を描きながら、ふとその汚れた新聞紙に目が行った。
「この配色、いいな …!」
私はその色が重なってできた新聞紙の汚れから配色のアイデアをもらったのだ。色をチョイスしていく作業はとても好きなのだが、どうしても自分好みの色をチョイスしがちで、似たような配色の絵が多くなってしまう。そんな時、役に立った、自分の汚した新聞紙。
それ以来、新聞紙はただの新聞紙ではなくなり、新聞紙を取り替える回数もめっきり減った。
そんな思いもよらないことはほかにもある。
絵の具を使うときに必要な水。汚れた筆を洗ったり、絵の具に水を加えて固さを調整したり。もちろん水もどんどん汚れていき、綺麗な水ではなく、他の絵の具が溶け出した黒っぽくなった水で筆を洗って絵の具を塗る事があった。すると当たり前だが、チューブから出したまんまの綺麗な色にはならず、少しくすんだ色になる。黒の絵の具を直接混ぜてできる色とはまた違う。でもこれが、結果として味のある色を出してくれて、色を作る上でのひきだしを一つ増やす事ができた。
そんな些細な発見も、絵を描く楽しさの一つだ。
織田知里