猫背で小声 | 第9話 | 色のない空がある
さて、本来であれば高校へ通うことが当たり前ですが、ぼくは通わないという事を選びました。
ここで、当時、部屋の中にいながら「高校生としてやりたかったこと」を挙げてみたいと思います。
【 部活 】
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理想 … ボート部。
上半身の筋肉が発達してモテそうなので。野球やサッカーという普通の部活ではなく、ボート部という、普段の生活では知り合えない仲間と関係を築けそうな感じもしたので。
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現実 … なんにも組織に属さない無所属人間。
頭がこんがらがるほど、今後の人生を考えていました。
無所属新人落選確実。
【 勉強 】
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理想 … 好きではないですが、好きではないなりに勉強をしていたと思います。なんとなく塾に通い、なんとなく大学に進んでいたと想像します。世間の順序に逆らわない普通の『人間高校生』。
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現実 … 勉強はしていましたが、あまり勉強が頭に入らない感じでした。
勉強の内容がそのまま抜けるという感覚です。
【 音楽 】
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理想 … 1995年当時の流行りの音楽を聴きたかったです。
安室ちゃん、TRF、華原朋美と TK サウンドで MD ディスクをいっぱいにするスタンダードピープル。
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現実 … TK サウンドは聴いてはいましたが、右から左に曲を聞き流すという感じでした。騒がしい音楽だなと思いながら、AM ラジオから流れてくる昭和歌謡に片足を突っ込みはじめました。昭和歌謡 と Be Together。
【 放課後 】
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理想 … 落ち着いた街で遊びたいです。
『高校生=渋谷』ではなくて、自分の身の丈や雰囲気に合った街で放課後を過ごしたいです。例えば御茶ノ水や神保町などの喫茶店でゆっくりと時間を過ごすのが理想。隣に背筋の伸びた彼女がいれば最高です。
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現実 … どこへも行かず家ステイ。
2マス進むのサイコロが出ても従わず、ルール無視の現実逃避。
【 テレビ 】
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理想 … ドラマ『白線流し』をリアルタイムで見ること。
自分と同年代の設定の高校生がやっていたドラマで、翌日学校で盛り上がりたいです。主演の長瀬智也がカッコイイとか、京野ことみに軽く恋をするテレビの前の架空高校生コンドウがいます。
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現実 … リアルタイムでは見れなかったです。
金八先生卒業後、待望の高校生ドラマなので、高校に行っていればこんなことがあったのかとか、こんな気持ちになるんだなとか、当時の自分に足りない感情をドラマを見て感じ取りたかったです。ほんと見たかったです。
『悔いのダダ漏れ垂れ流し』と命名します。
まだまだやりたかったことはありますが、毎日を過ごしていて、なにもできないことへのもどかしさや、自分への自信のなさが重なり、前のように体調を崩すということになってしまいました。
しかし引きこもりでも『夢』はあるのです。
人に言えない夢もあれば、人がかんたんに叶えられるようなことにさえ希望を抱いていますが、なぜこんな事さえできないんだろうと自分を責めるのです。一度ハマった沼はかんたんに抜け出せないと言いますが、いつか誰かの手を借りて「抜け出せる」日を待っています。受け身ではありますが。
きっかけが欲しいのです。
ふとしたきっかけが。
ぼくは部屋のカーテンを開けもせず、たまにカーテンの隙間から漏れ出る外からの光に憧れを抱いていました。
森羅万象馬鹿野郎。
暗黒の黄金時代でした。
つづく
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近藤 学 | MANABU KONDO
1980年生まれ。会社員。
キャッチコピーコンペ「宣伝会議賞」2次審査通過者。
オトナシクモノシズカ だが頭の中で考えていることは雄弁である。
雄弁、多弁、早弁、こんな人になりたい。
https://twitter.com/manyabuchan00
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