見出し画像

【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー ㉜ 石毛 優花 『Still, Draw A Breath』(千葉県習志野)

COLLECTIVE の楽しみ方の1つに視点の多様性にあります。例えば1つの『木』を見るにしても、見る人によって捉え方や感じ方、見るポイントが違ってきます。ある人は葉っぱの色を見るし、形を見るし、ある人は、その木が生えている土を見るかもしれません。木を見ることで、その木を見てる自分を見ることになるひともいるかと思います。誰の捉え方が正解かなんてのはないですが、木の芽を見つめる人もいれば、その木が植えられた背景を見る人もいて、見てる位置は違くても、木の未来を見ているという点は一緒だとか、どちらかは学者向きで、どちらかは政治家向きだとか、それぞれの役割や魅力=『パーソナリティ』を理解しようとする力が、人生をすこし豊かになるような気がします。

だから ZINE という『パーソナル』なメディア=『木の捉え方』を通じて、誰かの『視点』を知るということが、楽しいんです。共感はできなくてもいいので、誰かのもう1つの視点を理解しようとする気持ちが、COLLECTIVE というイベントを豊かにしていきます。ぼくもできるだけたくさんの視点の存在を知り、自分の糧にしていきたいと思っています。

画像2

Still, Draw A Breath、まだ、生きている

写真というのは説明的すぎるくらい誰かの『視点』を見つめるのにちょうどいい。同じ街でも歩く人によって全く写真が違って見える。当たり前のことを言ってるようだけれど、『写真』はあくまで『視点』だと、冷静かつドライに判断するのはなかなか難しい。写真家本人はもう少し感情的だし、意味を持たせたがる。見る人も、深読みしたがる。でも案外、写真って、ただの視点だったりする。

千葉からエントリーしてくれた写真家の石毛優花さんは、2015年より自主制作による写真集制作をはじめて、14冊の写真集を発表しているという。5年で14冊。1年に3冊のペース。4ヶ月に1冊。すごい。「うまくいえないけれど、何かを伝えたい。」そんなもどかしさを本でアウトプットしているという。エモーショナルな感覚で写真を切り取り、アウトプットする写真家が多い中、本からはとてもドライな印象を受けた。それは写真1枚1枚からも手にとるように。よくある感情的な写真家が、暴力的に奪い取るように景色を切り取るとしたら、石毛さんの写真は、一瞬だけ時間を止めて、景色を借りてきたという感じ。息をひそめた猫のような。点を線でつないで円で織りなすような(よくある)写真集と比べると、全くもって点の連続というか。そもそも線や、物語である必要などないと言いたげな感じ。「ただ、そこに、ある」といいますか「そりゃ生きてりゃ、撮る、でしょう」といいますか。タイトルの「Still, Draw A Breath」という感覚と、年間の制作の頻度がまさに自分の作品を言い得ているよう。

画像3

よく何を伝えたいのか、と聞かれるし自問自答する。何度考えてみたところで、私には伝えたいことなんて、ない。ー Still, Draw A Breath より

画像4

こんなにただただ呼吸するみたいなドライな写真たちを過去あまりみたことがない。もっとたくさん写真を見てみたい。いつかその中に、濡れた感情のようなものを見つけてみたい。


レビュー by 加藤 淳也(PARK GALLERY)


画像1

作家名:石毛 優花(千葉県習志野)
神奈川産まれ。2015年より自主製作による写真集制作を始め、これまでに14冊の写真集を発表。
https://twitter.com/inudognekooo
【 街のオススメ 】
螢明舎 (カフェ) ... ひっそりとしていて良い、外観が可愛い。
https://tabelog.com/chiba/A1202/A120202/12000307



いいなと思ったら応援しよう!

縁側 by PARK GALLERY|オンラインマガジン
🙋‍♂️ 記事がおもしろかったらぜひサポート機能を。お気に入りの雑誌や漫画を買う感覚で、100円から作者へ寄付することができます 💁‍♀️