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PARK LIFE #04 新月の香りに誘われて

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日本屈指の自伐型林業家の杉山さん(写真中央)と久しぶりの再会。以前、横浜国立大学のゼミで森のワークショップを開催した時にゲストで来てもらい、樹齢60年の木を目の前でぶった切ってもらった経験がある。

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静かな森の中に響き渡るのは踵を入れ打つカチーンカチーンという金属音、そしてチェーンソウのけたたましいエンジン音。すると次第に木の皮が裂けるバリバリという音がして、傾く時だけはすっと静かで、ファサファサと葉を揺らすくらいに倒れていく。

ドスーンと、山がくしゃみをしたかのような地響き。まるで鹿などの動物が森の中で銃に撃たれた時のような「いのち」の「停止」が、木からも感じることができた。その木を、誰かの役に立つためのとびきりの木材として製材するまでが杉山さんの仕事だという。かっこよかった。


そんな杉山さんに4年ぶりくらいに会った。

南足柄の森の魅力を聞きに言ったのだけれど、そんなに甘くはなかった。ナラ枯れの問題、土砂崩れの問題、獣害の被害の問題。美しい森と言われてきた、その森の体の中は、瀕死だった。このまま放置していたら時間の問題だという。これはおそらく全国各地で起こっている。後継者不足、高齢化と叫ばれる林業の世界。こんなに山だらけの日本で、木材すらも自製できず、海外の輸入に頼らなくてはいけない時がくるのかも。このままなんにも作れない国になるのか。じゃあ今の僕に何ができるのだろうか。

帰り際、とてもいい香りがする木を見つけた。鼻がつくくらい顔を近づけて、その匂いを嗅いでいたら「いいところに気づいた」と杉山さんが喜んでくれた。

「新月斬り」という方法で斬られた木だという。

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いわゆる新月の夜に切られた木で、それだけで虫がつきにくく長持ちし、そして何より香りが違うという。科学的な根拠は見つかっていないらしいが、調べてみると世界最古の木造建築の法隆寺に使われてる木も、新月に切られた木だという。古くからある手法みたいだけれど、いまも一定のニーズがあり、流通されるという。

たくさんの木が置いてある製材所で、なぜかこの木だけ語りかけてくるような感じがあったから不思議だ。

杉山さんの話はずっと聞いてられる。元気をもらう。時々はさまれる親父ギャグだけがたまにキズだ。

また会えるといいな。


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