猫背で小声 | 第10話 | ハタチの写真
あの季節、ぼくはなにをしていたのでしょうか?
ぼくは18歳から20歳まで、高校野球というものにいつも以上に興味を持ちました。同年代の人が汗水垂らして青春を送っている姿が、ブラウン管を通して心にジュンジュンと沁みる感覚でした。
高校に行かないまま高校を卒業した年齢となり、ふとテレビに映る高校球児が自分より年下になったという感情をうまく消化できない「甲子園病」にかかったのもこの頃です。高校球児は年上だ、という弟目線からの卒業でもありました。そんな日本特有の病に冒されながらも、引き続き家にこもっていました。
コンドウマナブ、20歳を迎えたのです。
成長はしなくても毎日は必ずやってくるのです。
20歳なったということで急に希望が湧き始めるわけでもなく、劣等感いっぱいのまま日々を過ごしていました。当時、引きこもってはいましたが、なぜか成人式会場へ足を運び、壇上で司会をしていた小学校の同級生・イダくんの姿を見ながら「僕も小学校の時のアクシデントがなければ今ごろ司会をしていたかもな」と、壇上を見つめていました。オシャレな会場での成人式でしたが、とてもじゃないけどオシャレな気分になれるわけもなく、だっせえ気持ちで会場を後にしました。
しばらくして成人のお祝いということで千葉にあるおじいちゃんの家に遊びに行きました。おじいちゃんは大好きでしたが、前向きな気持ちで遊びに行ったわけでもなく、半ば無理して家に行きました。その時、家の庭でスーツで写真を撮ったのですが、そこにうつる自分は生気がなく、色白でガリガリ。猫背で自信がなく、生気がなく、メガネを掛けている。元々、写真を撮られることは苦手でしたが、客観的に見ても、この先、生きていけるのかとても不安になるような姿でした。
しかし、写真の中の自分に感じた『今までにない不安』と『なにかしなきゃ』という気持ちが奇跡的にマッチングし、僕は大学入学資格検定という資格を取る予備校に通いはじめることになります。
大学入学資格検定(現在は高等学校卒業程度認定試験と改称)とは高校に行かなくても検定に合格すれば高校卒業と認められる資格です。この資格を取れば専門学校や大学へも進学できます。知り合いに大検の合格者がいて「これやってみなよ」と言われたのもよいきっかけとなりました。
大検予備校にはメンタルを病んで高校を中退した人や、僕のように子どもの頃から不登校という人たちがたくさんいました。驚いたのは慶応中等部を中退した子や、カナダへ留学し、英語がめちゃくちゃ話せるのに高校を中退した子、誰もが知る80年代ヒット曲を歌っていた歌手の娘さんや現役セクシー女優も通っていました。同じ境遇、紆余曲折に生きてきた人たちと一緒に学ぶことで、久しぶりに気持ちも安定し「ここが安心できる居場所だ!」と感じはじめました。
待ちに待った、「ようやく」です。
久しぶりの『学校みたいな場所』で勉強も苦労しましたが、なぜか予備校に通うということが楽しかったのです。慶応中退の子と、英語バリバリの子、小学校中退のぼくが机を並べて授業しているということが、いい意味でとても面白かったんです。楽しい時間を過ごし、大検の資格にも合格し、これもなぜか、なんですけど大学の推薦の話までもらいました。ただ、久しぶりの<社会>ということで精神的な疲れが溜まってしまったのか、後半は予備校を休みがちになりました。
推薦された大学は電車で片道1時間30分かかる学校だったため、精神的に負担がかかる、ということで、大学進学は諦めてスポーツ関連の専門学校に進学することになりました。当時のぼくは野球関連のスポーツジャーナリストになりたかったため、少しでもスポーツの実技をやれて、将来文章に活かせるような場所を求めて進学しましたが、そこは授業中にも私語が飛び交うような場所だったので、あまりいい思い出はありません。
成人式を迎え、写真を撮り、その写った自分に劣等感を覚え、大検を取り、今までの劣等感を少しづつ拭い去る日々を過ごしました。
世間からみれば「だっせぇ日々」だったかもしれませんが、本人から言わせてもらうと「すっげえ日々」だったんだよ。
世の中の偏見にライダーキック!!
お見舞いしてやる。
夏冬春秋、そんな日々。
近藤 学 | MANABU KONDO
1980年生まれ。会社員。
キャッチコピーコンペ「宣伝会議賞」2次審査通過者。
オトナシクモノシズカ だが頭の中で考えていることは雄弁である。
雄弁、多弁、早弁、こんな人になりたい。
https://twitter.com/manyabuchan00
人生の半分以上を『自分磨き』に費やした、近藤さんへの質問や応援メッセージを受け付けています。匿名も可能ですのでもしよろしければ以下のフォームから気軽に投稿ください。
春ですね。様々な門出に、おめでとう!今後ともどうぞご贔屓に。
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