COLLECTIVE レビュー #57 MIYA『明日も良い!』(東京都)
パークは台湾となにかと縁がある。旅行先としてシンプルに好きだというのはもちろんなんだけれど、パークのディレクターの加藤は(ぼくは)2011年~2012年に、台湾を拠点に日本でもブームを巻き起こしたオルタナティブバンド「透明雑誌」のジャパンツアーを手がけたメンバーのひとりでもある。透明雑誌とその仲間たちとの交流が、その後の台湾とのカルチャー的な交流を活性化させた。
透明雑誌は活動休止してしまっているけれど、現在メンバーはそれぞれ、台北のユースカルチャーを牽引する2つのストア「Par Store」「Waiting Room」を運営。10年経ったいまも台北に行けば、ビールを片手にあの時みたいにみんなで笑っている。
だから、というわけではないけれど、台湾出身のアーティストは好きだし、応援したい気持ちでいっぱいだ。みんなよろしく。
COLLECTIVE ZINE REVIEW #57
MIYA「明日も良い!」
前回紹介した ZINE「The A to Z of Feeling」の Yuu さんに続き、今回紹介する ZINE も台湾出身のデザイナーの MIYA さんによるものだ。印象的だったのは A4サイズの何も書かれていない真っ白な表紙。なんてことのない、ただの無地が思いのほか、意味深で、ついつい深読みしてしまう。「高級維妙紙」という紙らしいけれど、検索しても中国語しか出てこなかった。台湾の紙なのだろうか。そう思うと、なんだか急に海を渡ってきた感じがして、ZINE に触れた手が喜ぶ。
タイトルは「明日も良い!」
表紙の無地とは裏腹に、鮮やかな写真で構成されたフォトジンだ。現在の活動の拠点でもある「日本」で暮らすことになってからの3年間をまとめた1冊。まるで手紙のように、誰かに見せたい風景を切り取って、まとめたという。何気ないスナップからも、強い意志を感じるのは、「届けたい」という想いからだろう。まるで恋人にあてたかのような冒頭のメッセージもすてきだ。
はじめて台湾に行ったとき、懐かしいような、でもまったく見たことのない異国の文化と景色に、1日中うっとりしていた。たくさん食べて、たくさん笑って、たくさん歩いて、たくさん眠った。自分らしさというのを、台湾で、ゆっくり取り戻していった。
MIYA さんもきっと、東京というなんだか似ているけど違う異国に来て、同じように感じたのではないだろうか。楽しみながら、その一瞬一瞬をとらえようとしている感じが写真から伝わってくる。「スナップ」は正直誰でも撮れる。だからこそ、立ち向かうための態度が重要になってくる。「楽しむ」というのも立派な態度だ。思えば、
「明日も良い!」
そんなふうに言ってくれる人がまわりから減ったように思う。歳をとったというのもあるかもしれない。こんな社会情勢ではだれも「明日がいい」なんて約束してくれないのかもしれない。けれど、こんなふうに明るく「明日も良い!」って言ってくれることがこんなにも愛しいとは思わなかった。
こんなに明るい気持ちになることはない。
なんだか遠いところに住む恋人から手紙が来た時のような、ウキウキした気持ちのまま、ZINE を読み終えた。
おまもりのように時々開きたい作品。ぜひ1冊、手元に置いてあげてください。
レビュー by 加藤 淳也
---- 以下 ZINE の詳細とそれぞれの街のこと ----
【 ZINE について 】
《 明日も良い! 》は三年間日本で撮った写真を一冊をまとめた PHOTO ZINE です。手紙のように誰かに見せたい風景を文字に記録し、大切な人にプレゼントで贈りたくなる本となります。