青展参加作家さんの紹介 ⑤ 春山拓思さんのこと
「やっと見つけた気がします」。
そんなイラストレーターの春山拓思さんの言葉が印象的。青展の入り口に飾られたラムネのような淡い青。黄色が、青と踊るように並んでる。不思議な質感を持つこの作品は『ステンシル』という技法で作られています。モチーフが切り抜かれた型(テンプレート)を作って、キャンバスの上に敷き、その上からインクをのせ、型を外すと、モチーフが現れる。線で描くのがドローイング、筆で塗るのがペインティング、一般的な画法に比べて、版画的な方法を用いているので、要するに型が壊れてしまわない限り複製が可能。でも、手でやっている以上、複製と言えど、どれも同じとは言えない。例えば色ムラは2度と再現できないからね。
春山さんはペインティングもドローイングもやるけれど、ステンシルをやるときも共通して「手作業によるミス」を大切にしているそう。ちょっとズレてしまったり、まっすぐ引くはずの線が曲がってしまったり、思った通りにいかない、ちょっと足らない、ちょっと届かない。それを『ミス』とせずに、抗うことなく、従っていくと、自分でも思いもしないいい線が書けたりするらしい。「それがぼくなんで」と笑って話すけれど、実はこれが絵描きの本質な気もしますよね。誰かの真似でもいいから、何回も書いて何回も書いて、いつかずれてしまった時に、自分にしかできない自分らしさっていうのが生まれます。『てくせ』というか。
そんな理由から、春山さんの絵は、実に春山さんらしい。音楽が好きだから音楽が聞こえてくるし、描くのが好きだから、絵もたのしそう。
ステンシルの作品はもちろん、昨日から描き始めてる世界に1つの手書きのステッカーもすてきです。青展最終日。どうか滑り込みで、その目で、ぜひ。
「やっと見つけたな」
というのは、今回春山さんの作品を見て最初にぼくが思った感想です。すごい作家になる。春山さん。個展がたのしみ。
PARK GALLERY 加藤 淳也
春山 拓思
静岡県生まれ、千葉県育ち。
好きな音楽のアートワークとTシャツに憧れてイラストレーターの活動をはじめる。シンガーソングライター気分で絵を日々レコーディング中。
https://www.instagram.com/hiroshi_haruyama