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ON THE WAY TO PARK #023 『さようなら、ありがとう!今日のおやつもミスドだよ!』 (ミスタードーナツ・秋葉原ショップ)

ミスタードーナツ秋葉原ショップが10月31日、閉店した。なんと昭和47年にオープンし、同じ場所で52年間営業してきたという、「老舗のミスド」だったのだ。

オープン当初はまだ母が2歳。1971年に日本第1号店が大阪にできたというから、東京でもかなり古い店舗の一つ。当時はまだアメリカの外資系チェーンとしてのお洒落なイメージが強かったという。

「働いてる女の子がみんな可愛かった!それでね、今と違って、もっとお洒落なお店だった。店員さんが被ってる紙の帽子も、古いアメリカ映画でウェイトレスが被ってるようなさ、船型の帽子で。ミスドに行くだけで、子供には風船とその紙の帽子をくれたの。でも、今思うと、いい宣伝で、私みたいなバカな子供が『わーい!』とか言って、歩行者天国で風船とその帽子を被って歩くわけ(笑)」

今ではどこにでもあるようなアメリカのファストフードチェーンがまだほとんど日本になかった時代の話である。それだけ華やかで楽しく、特別感のある場所だったことが伝わってくる。

「中高生の時ね、本当に何回も行った!“超アメリカン”なグッズをくれたから、それが欲しくて。『オサムグッズ』ってわかる?あのかわいいちょっとレトロなキャラクターの。それがノベルティーでもらえたの」

ノベルティでコラボレーショングッズというのも、よくあるプロモーションだけど、もしかしたら走りといってもいいんじゃないか。ちなみに、その “後遺症” なのか、母は大人になっても雑誌の付録や某パンメーカーのパンまつり、ハッピーセットのおもちゃをやたらと飛びつく。

「『オサムグッズ』の、ピンク色のランチボックスが欲しくて。普通は何回も行って、ポイントが貯まったのもらえるの。でも、おじいちゃんが『この王様グッズもらうには、ドーナツをいくつか買ったらいくつ買えばいいですか』って(笑)一回に20個とか30個とか買ってきちゃうの、あの人」

一つのお店について、ここまで詳細に記憶があるのは、きっとそれだけ楽しい思い出が沢山あったということだろう。まだ10歳にもならない頃の家族との外食の記憶なんて、私にもそれほど残っていない。

ただ、確かに母が好きだったこともあってか、ミスタードーナツを訪れるときは、どこかうきうきしていたのを覚えている。私が棚に並んだ色々なドーナツを見て悩んでいたら「両方買っちゃえばいいじゃない」と言って豪快にトレーへ載せていく。そんなことを書いているうちに思い出す。

音楽もファッションも、かっこいいと思う人の在り方もそれぞれ全然違う私と母。家族旅行をした覚えもあまりない我が家でいえば、親子で楽しい記憶を共有できた非常に貴重な場所だったと思う。久々に食べたいけれど、秋葉原店がなくなってしまった今、近隣にミスタードーナツのショップが見当たらない。わざわざ離れた場所に買いに行くのも違うし、早く近くにできないだろうか。


イラスト:あんずひつじ


ivy(アイビー)
東京・外神田を拠点に活動。編集・ライター。『ANTENNA』の編集部に在籍する他、カルチャー系の媒体を中心に執筆を手掛ける。あまり役に立たない本、後ろ向きな音楽、胡散臭いメガネ、ジジ臭い服、だらしない酒、意味のなさそうな旅、苦い珈琲を愛する。旅の目的地は、何もないけれど何かが起きる場所。
https://www.instagram.com/ivy.bayside

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