COLLECTIVE レビュー #09 やまだなおと 『もしも君が聴くならば』 (北海道)
これまで COLLECTIVE を通じて「ZINE とは自由であるべきだ!」と散々うたってきたけれど、最近はそれよりも、作り手の感覚(≒内容)とアウトプット(≒体裁)が似合っているか、の方がずっと重要だと思うようになってきた。
ZINE らしさ、というのは(ZINE に限らずだけれど)、いかにその本人らしいかというのがポイントだということが最近わかってきた気がする。いやもしかしたら時代がそうなってきているのかもしれない。今回の COLLECTIVE を通じていくつかそういう作品を紹介していけたらと思う。
例えば、おととい北海道から届いた ZINE「もしも君が聴くならば」。作者の「やまだなおと」さんにはまだ会ったことがないけれど、きっとやまださんらしい1冊なんだなと感じることができるZINEだ。
COLLECTIVE 2022 ZINE レビュー #09
やまだなおと 『もしも君が聴くならば』
2020年から毎年 COLLECTIVE に参加してくれている、イラストレーターで絵本作家、グラフィックデザインまでを手がけるやまだなおとさん。映画や音楽、文学をこよなく愛し、北海道の地で呼吸をするように ZINE を作り、毎年ぼくらを楽しませてくれる。
パークギャラリーは音楽が好きな人がたくさん集まるから、彼の ZINE に出てくる楽曲やバンドに共感する人が多いというのもポイントだ。
今回も大好きな音楽をテーマに「カセットテープ」に ZINE を詰め込むという自由な発想の ZINE が届いてみんなを驚かせている。
カセットテープ。なじみのない人もいるかもしれないけれど、ぜひ現場で手にしてみてほしい。
選曲のテーマは「ダンス・ウィズ・ミー」。5つあるというテーマの1つだ。AB面合わせて10曲入り(音楽は聴けないよ)。その1曲1曲にやまださんによるコメントがついている。まるでいまにも音楽が聞こえてきそう。サブスクがあれば、聴きながら楽しむこともできる。いまの時代の ZINE はこうじゃないと。
それに ZINE というのはもともと、映画や音楽、文学などのカルチャーを偏愛する人たちによるコミュニケーションのために生まれというのが起源とされる。FUN のための MAGAZINE = FUN ZINE がさらに略され、ZINE となっていった(諸説はあり)という経緯もあるので、やまださんの日常から捻り出された ZINE を、同じようなものを愛するぼくらが遠くにいながらもキャッチする。これは1つの ZINE のあるべき姿、1つの源流の行方だと思う。
だから、やまださんをはじめ、カルチャーの文脈から派生したコンテクストやステートメントがあるひと、さらに偏愛できるものがあるひとには ZINE というフォーマットがよく似合う。
だからと言って、カルチャーリテラシーのないひとは ZINE を作ってはいけないのかと言われると少し違う。
ファッションに例えるのであれば、似合う服しか着てはいけないわけではないし、似合わなくても、好きなら着なよと思う。好きで着てるひとってだんだん似合ってくる。その人のものになってくものだし。ただ、好きでもないのに<流行ってるから>、<誰かに似合うって言われたから>ってだけで着るのはやめようよ、と思う。
好きな映画、好きな音楽、好きな本、好きなファッションを楽しむように、ZINE を作ることをライフワークとして楽しめたら、きっとみんな、ZINE が似合うクリエイターになれると思う。 そしてやまだなおとさんの ZINE「もしも君が聴くならば」。
音楽好きなら買いです。在庫は少なめです。お急ぎを。
レビュー by 加藤 淳也
---- 以下 ZINE の詳細とそれぞれの街のこと ----
【 ZINE について 】
カセットテープに好きな音楽を詰め込んで友達に手渡すつもりで作りました。A面、B面や曲の順番にもこだわっているのでそのあたりも気にしていただけると嬉しいです。テーマ別に5種類制作したのですが今回は1種類のみ販売します。いつか他のカセット ZINE も見ていただけると嬉しいです。同じテーマで、同じ曲数選ぶとしたらあなたはどんな曲を選びますか?
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