【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー ㉙ 小瀬古文庫 『Gitai #01 ハムの惑星 』(東京都三鷹市)
今回の COLLECTIVE は全体的にデザインの完成度が高いと言えます。ざっと並んだ表紙を見てもそうですし、1つ1つのディテールを見てもそう。デザイナーに別注している例もあれば、自分でなんでもやってしまえる器用なタイプの人もいます。デザインが破綻して見えるようなものも、言ってしまえば「デザインをあえてしない」というデザインをしているようでもあります。デザインされていることがいいとは思いませんし、されてないからダサいわけではないんですね。でもデザインされすぎもよくないん。されなすぎもよくない。そのさじ加減がなかなか難しいところ。
無理はしてはいけないよ。できないことをさもできてるふうに装ってはいけないよ。「デザインをなんとかしようと思ってるうちはそれは ZINE ではない」。ぼくは ZINE のデザインに関してはそのくらいの意識を持っています。『ZINE』と『デザイン』というのは1度は真剣に話さないといけないテーマだと思っています。
今日紹介する ZINE はデザイナーによるデザインの実験場とも言えるデザイン ZINE です。新しいジャンルの ZINE を見たなという感覚でした。
ハムの視点で天体を眺める不思議なグラフィック
東京からエントリーのあった不思議な吸引力のある ZINE『ハムの惑星』は、グラフィックデザイナーの小瀬古さんによるアートブックマガジンの擬態シリーズ『gitai』の記念すべき #01 。ぼくらがよくスーパーマーケットで見かけて時々買う、何の変哲もない『ハム』(別所哲也が持ってこないタイプの方)を、圧倒的なグラフィックデザインのスキルで『惑星』に擬態化させた1冊だ。表紙のハムは地球です。地球、太陽、火星と、ページをめくればめくるほど天体観測のごとく現れる『ハム』が、反復と整列というマスゲーム的な運動を繰り返し、だんだんと脳内でゲシュタルト崩壊を起こしていく。ハムってそもそもどんな模様だっけ。ハムってそもそもなんの動物の肉だっけ、惑星っておいしそう…というところまでトリップしましたよ、ぼくは。
デザインの力が必要だったり、デザインのおかげで成立している ZINE 、もしくはデザイナーが文章を書くのも好きで作った、またはデザイナーによるデザイン集というのは今までたくさん見てきたけれど、デザイナーがデザインのワンアイデアでデザインのスキルのみで編集力を凌駕して(グラフィックの習作ではなく)あくまで ZINE 的なものを作り上げるっていうのははじめてみたかも。思いついた時点で勝利というか。
ハム(地球)に半額のシールが貼られる演出があるんだけれど、うっかり泣きそうになった。デザインの力って、改めてすごい。
#01 とのことなので、#02、#03 と見てみたい。ZINE におけるデザインっていうのはやりきってないとダメなんだな。やっぱ。このくらいやりきらないと。と思いました。天才。
レビュー by 加藤 淳也(PARK GALLERY)
作家名:小瀬古文庫(東京都三鷹市)
擬態デザイン家・小瀬古智之によるアートブックプロジェクト。
「『もの』が擬態することで、視覚の想像力を掻き立てる」をテーマにしたZINE「gitai」の発行や孔版印刷による作品を発表を中心に活動中。
2016年より活動開始し、国内外のアートブックフェアを中心に活動中。最近の展示に個展「物的擬態(2018年・中国蘇州)」二人展「fictional landscape(2019年・台北)」など。
https://gitaipress.com
【 街の魅力 】
武蔵野特有のノビノビとしている部分です。
【 街のオススメ 】
① Cafe Hi famiglia ... ご飯が美味しくて置いている雑貨がとてもgood。
https://hi-famiglia.com
② 山田文具店 ... レトロかわいい文具がたくさん。
https://yamadastationery.jp
【 同じ地域で活動するひと 】
miezarute / アートユニット
https://miezarute.com
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