【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー ㊿ よしの さくら 『とまれみよ vol.1』(宮崎県西都市)
COLLECTIVE もいよいよ残すところ1週間。昨日はお休みさせていただいたレビューですが、ちょうど最終日にレビューを書き終えるんじゃないかなと思ってます(納品された順にあげてるので遅くなってしまったひとごめんなさい)。すごく気になっていたイベントなので、出れてうれしいとか、憧れの ZINE イベントですとか、レビューのボリュームがすごいとか、うれしいとか、いろいろな声をいただいて、本当にやってよかったなと思ってます。
残りわずかになると追加納品のお願いをするのですが、もともとたくさん作れるわけではない手作りのものなどは売り切れてしまっているものもあります。ZINE という小さな、でも強くあたたかいメディアの、儚さを『売り切れ御免』の中に見ますね。あの時、買っておけばよかった、では遅いのですよね。ぜひ、気になったらスルーせずに、手に入れてみてくださいね。いつか、ZINE を見返した時に、そっと心に利く薬みたいな存在になるかと思います。残したい、取っておきたいと思える ZINE がたくさんあります。
じいちゃんの散歩についていって、見たいこと聞きたいことをまとめました
さて、今日紹介する ZINE、宮崎県西都市で活動するよしのさくらさんの『とまれみよ vol.1』も、ずっと残しておきたい大切な1冊です。感動して即買いしました。「じいちゃんに聞きたいこと、教えてもらいたいこと」を、じいちゃんの散歩についていって、一緒にお話をしながら見て聞いて感じたことを「聞き書き」でまとめた1冊。誰か1人にフォーカスして ZINE を作るというのは写真でもエッセイでもよくあることなのですが、肉親に迫るというのは意外とありそうでない。むずかしいんですよね。照れくさいし。覚悟がいるというか。シャッター1つ切るのもなかなか難しかったりします。写真家でも。しかも客観的に見た時の思いや感想ではなく、しっかりと本人の口調そのままで書き起こしているので、おじいちゃんと僕(読み手)がまるで会話してるかのような気分になれる。しかも宮崎から届いた ZINE ということで、宮崎の訛りもしっかりと再現されていて、おじいちゃんのやさしさ、あたたかさ、が、しっかりと伝わってくる。
毎日の散歩の時のおじいちゃんの習慣、癖、こだわりを、小谷彩佳さんがイラストで書き起こしているのも特徴的。水道で手を洗って、サングラスと帽子を脱いで、お気に入りの楠に抱きついて苔の匂いを嗅ぐおじいちゃんとか、分かれ道は必ず左を選ぶところとか、階段を使わずに斜面をのぼるところとか、飛行機を見つけると「ありがとうございまーす」と空に向かって呼びかけるところとか、まるで自分の家族のように愛しい。
そんなキュートなエピソードの中にも、しっかりと昔の思い出話などを織り混ぜていて、当時の暮らしの様子、文化、戦争の体験などが、粛々と描かれています。おじいちゃんという存在を通じて、山への信仰や、人との関わり、その地域も含めて好きになれる1冊。誰かにとって、なにげないただの1日のある朝の話かもしれないけれど、生きることの美しさがぎゅっと詰まっている。
ぼくは2年前におじいちゃんが死んで、90歳の大往生だったけれど、その時、やっぱ「もっと話を聞きたかった」「もっといろいろ学びたかった」本当にそう思った。百姓をやっていたじいちゃんから、食のこと、農業のこと、地域のこと、子どもの頃の話、暮らし、それに戦争での体験のこととか。もう少し早くこの『とまれみよ』という作品に出会ってたら、ぼくもきっとじいちゃんにインタビューしたなと思った。失ってからでは遅いんだなって本当に痛感した。おやじやおふくろのことも、もっと知らないとなと思うけれど、やっぱりまだ少し照れくさいな。
誰かの家族を通じて、自分の家族も大切にしたくなる。そんな1冊です。おじいちゃんご存命な人はなおさら。ぜひこの機会に、買ってみてください。とてもとてもいい作品です。いつでも読み返せば心に効く薬みたいな ZINE です。
ふと、足を止めて、そこから見えるもの、聞こえるもの、そこから触れられるもの、そこで香るものに集中してみると、ピクッと心が動くことがあります。とまれみよ!
レビュー by 加藤 淳也(PARK GALLERY)
作家名:よしの さくら(宮崎県西都市)
宮崎県西都市在住。
聞き書き・zine制作・イベント企画などを自分の手や目の届く範囲で行っています。自分に近しい人たちへの興味が強く、祖父母の暮らしの記憶を「聞き書き」という手法を使って集めています。「とまれみよ vol.1」では祖父の習慣である散歩とこれまでの暮らしについてまとめました。
https://www.tomaremiyo.com
【 街の魅力 】
よくわからないところ。
【 街のオススメ 】
① ジャム工房 ナチュラルキッチン ... おいしく、うつくしい季節のジャムが並んでいます。店主のカツ子さんの人柄も素敵です。
https://tabelog.com/miyazaki/A4504/A450401/45010586
② 記紀の道 ... 日向神話に登場する伝承地を巡る道(約4km)です。お時間のある方は、ゆっくり歩いて回るのがおすすめです。のんびりどうぞ。
https://www.saito-kanko.jp/modelcourse/ki-ki
③ 高屋温泉 ... 静かな時間を過ごしたい方におすすめです。日帰り湯もあります。
https://www.takayaonsen.jp/takayaonsen
【 同じ地域で活動するひと 】
徹さん / 日々、西都市をてくてく歩いています。神出鬼没です。
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