ネット誹謗中傷に関する規制、フランスは大反対!
現在、日本ではネットでの誹謗中傷問題と規制に関する法律が話題になっていますね。ものすごいタイムリーでびっくりしますが、フランスではネットでの誹謗中傷を規制する法律がたった2週間前(5月13日)に可決されたばかりなんです。すごいタイミングだと思ったので、フランスはどんな状況なのか解説させていただきます。
ネットでの誹謗中傷に関する法律が作られたきっかけ
2018年頃からネットで差別的な発言や誹謗中傷をする人たちが爆発的に増加しており、被害届数は1年で70%増えたそうです。しかも最近の誹謗中傷はだれがどんな理由で投稿しているというのが見えづらい(=イデオロギーがない)という傾向にあるそうです。世界的な現象なんですね。
法律の内容
投稿が誹謗中傷規制法に該当する場合は、投稿消去命令が送られてくるそうです。命令がきたら24時間以内に投稿を消去しなければいけません。(殺人予告など、危険とみなされた投稿の場合は1時間です。)
もし投稿者が削除しない場合は投稿者に最大1年の実刑か最大200万円の罰金が課せられる。もしプラットフォームが削除しない場合は運営会社に最大1億5千万円の罰金です。ちなみにこれドイツにあるネット上の誹謗中傷を阻止する法をほぼコピーしたそうです。
フランス国民はかなり批判的
この法律、フランス国民は「表現の自由」を損なうものとして反対している人が多いんです!政治家、弁護士団体、ネット評議会など様々な団体も猛反対していて、すでに法改正の申請が出されています。
さすが自由の国、と思うかもしれませんが、理由があります。そもそも誹謗中傷とはなにか?という判断をフランス司法が定めるのではなく、GAFAに委ねられているのが嫌だというのがフランス人の本音です…つまりこんな感じ。
表現の自由とは
誹謗中傷規制法が可決されて以降、今まで以上に批判されるようになった法律もあります。その法律が2018年末に制定された情報操作との闘いに関する法律、いわゆるフェイクニュース規制法です。
フランス政府はコロナ禍による外出規制が発令された直後にフェイクニュース規制法に従い、コロナウィルスにおけるフェイクニュース情報をあつめたサイトを公開したのですが、表現の自由を根拠にメディアに大反対されてサイトはすぐ閉鎖されました。
個人的には「外出規制で自由が2か月も制限されている人々に向けて自由を規制する法律をつくったら、そりゃ国民は怒るよ。タイミング悪いなぁ。」と思うんですけど。。。
2015年のトラウマ
「私たちにちょっとずつ忖度を強いる法律を作り、じわじわと自由を奪っている。」というフランス国民の過敏なまでの危機感情はどこからくるのでしょうか?GAFAも一理ありますが、やはり2015年1月の風刺新聞シャルリ・エブドがイスラム過激派攻撃事件と表現の自由に関する議論と運動なくしては語れないでしょう。フランス人にとってシャルリ・エブド襲撃事件はとてつもないトラウマなんです。
そもそも誹謗とか中傷が当たり前の国( ´艸`)
普通に歩いているだけで、知らない人から誹謗中傷されまくります。セクハラ・モラハラも当たり前です。「また頭のおかしい人がいるよ~。」「荒手の社交だ!」と思えば徐々に抗体もできていきます。もちろん本当にひどい場合は警察に被害届をだしますが…。
一応言っておきますが、私はフランス万歳人間ではありません。単純にリアルの世界にもヴァーチャルの世界にもアタックの強い人が割合多いからアタック自体に慣れるってだけです。
メディアのリテラシーが高いから救われている!
これだけ誹謗中傷が多い国ですが、それでも国民が表現の自由を死守しようとするのはメディアのリテラシーが高く、信頼しがいのあるメディアが存在するからでしょう。フランスの新聞は不倫とか殺人事件を掲載しません。社会的にインパクトのあるスクープ事件は記事になりますが、それもごく最近になってからです。DSKがニューヨークのホテルでメイドに手を出した事件あたりからフランスメディアも政治家のプライベートに首を突っ込むようになったように記憶しています。「政治家のプライベートに首を突っ込む新聞ってどうなのよ?」ときかれた新聞記者は「だからといってメディアのリテラシーが下がったのではない。リテラシーは時代とともに変化していく。人のプライベートに首を突っ込むことがリテラシーの低下に直結するわけでもない。」と言っていて、関心した記憶があります。
まじめでながーい投稿となり、失礼しました。誰かの役に立つのかな、これ…
2020秋からフランス国内の展示会視察や企業訪問をしながらレポート記事を投稿していく予定です。現在その資金が必要なのでサポートをお願いいたします!