通勤アイス【短編小説】
ふと顔を上げると、同僚が背中を丸めて歩いていた。
去年、中途で入ってきたばかりの彼女は、毎日きっかり始業1分前にタイムカードを切る堅実な社会人だ。
だから、こんなにも早い時間に、こんなところを歩いているはずがない。
しかし、ピッと張ったクリーム色のワイシャツ、小さめの紺のリュック、揺れる低めのポニーテールは、確かにあの同僚に違いない。
今日みたいな特に眠くて気怠い朝に、普段は仕事外で殆ど話さない同僚と接触するタスクを負うのは、まあまあ気が重い。
しかし今朝の彼女は妙に歩く