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コンクオン通信3| 齢30近いアラサーがベトナムの高校生たちと青春してきた
ベトナム語が全くわからない。話しても通じない。
…終わっている。
わたしは完全に終わっている。
今のわたしに出来ることは、
「vâng! (はい!)」
とアルカイック・スマイルで頷くことくらいである。
究極のイエスマン、それが今の私だ。
さて、話は先週の日曜日にさかのぼる。
この日は、職場の別部署のおばちゃんH氏から、ベトナム語で2、3言質問を投げかけられ、いつものごとくニコリと首を縦に振ったことに始まった。
気がつくと、知らない村の知らない幼稚園に着いた。ここはどこだ。
大人、子ども、ブルーのシャツを着た青年が狭い幼稚園内にすし詰めになっている。何かのイベントが催されるらしい。
イベントが始まると、園児たちがフリフリと踊り、ブルーのシャツを着た青年たちも歌と踊りを披露する。その後、園児たちに毛布や洋服などの生活必需品が配布される。
なるほど、イベントの正体はチャリティー活動であった。
ベトナムでは正月であるテトが近くなると、寄付活動も活発になるのだそうだ。
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ブルーシャツを着た若者は、都市に住む有志の高校生ボランティアだそうで、わざわざ100km以上離れたコンクオンにやって来たのだそうだ。
驚くべきことに高校生たちは英語が流暢に話せる子が多く、久しぶりに自分の伝えたいことを思いっきり話せた。何も事情を知らず職場のおばちゃんに幼稚園に連れてこられた話も、高校生らしい活発な笑いに変えてくれた。
日本のアニメ好きな子が私に積極的に話しかけてきてくれた。
呪術廻戦の五条悟の名言(?)である「Datte kimi yowaimon(だって君、弱いもん)」であるとか「Oni-chan no baka!(おにいちゃんの馬鹿!)」などを知っていた。「おにいちゃんの馬鹿!」という、どのアニメで見たのかも分からない、でも何故か知っているという、「妹系アニメ」の暗黙知と言っても差し支えないこのフレーズを知っているということは、この高校生はなかなかにアニメ文化に通暁しているのではないか。
日本の漫画・アニメの影響力、発信力、素晴らしい。
どうやら高校生たちは幼稚園に1泊し、翌日都市に帰るらしい。
せっかく仲良くなりお別れするのが名残惜しいので、私を連れてきたH氏にお願いし、夜ご飯まで一緒に彼らと一緒に過ごさせてもらうことにした。
キャンプファイヤー
焚き火を囲み夕飯を共にしながら、将来についての話などをした。揺れる炎を見ていると私と高校生の間の壁もゆっくり溶けてゆくようだった。
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ある子は、大学で心理学を学びたいが両親の反対に遭い、工学系の大学に行くべきか悩んでいるという話をしてくれた。
ある子は、両親の勧めで海外で学びたいが大好きなベトナムを離れたくないという話をしてくれた。
私の答えはただ一つ、「心の声に従う勇気を持つこと」。
スティーブジョブズの名言なのだが、「心の声に従え!」ではなく、「心の声に従う勇気を持て!」である点が好きである。
心の声に従って行動すると周りが反対する。絶対反対する。その反対を押し切り、心の声に従った行動を起こすには勇気が必要だ。蓋を開けると結局周りのアドバイスの方が正しかったりすることもあるが、自分で選んだという点で後悔は少ない。
むしろ、周りに従った挙句失敗した場合は目も当てられない。
なので結果がどうであれ、心の声に従った方がいいと思っている。
まあ、この言葉は昔の(そして今も)私自身に向けた言葉なのではあるが。
そんなこんな話をしていると、どこからか誰かがカラオケマシーンを引っ張りだしてきて突如カラオケ大会が始まった。歌いながら焚き火の周りをぐるぐる回り、肩を組んだり飛び跳ねたりする。炎が彼らの頬を赤く染める。
青春すぎる、青春すぎるぞ、君たち。
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しかし楽しい時間にも終わりが来る。夜10時30分。近所のおじさん、おばさんたちから「寝ろ、うるさい」とクレームが入り、宴は終了する。
さて私もそろそろ帰路につくかと、H氏に連絡を取ったところ、音信不通となっていた(翌日、「ごめん、寝てた」とメッセージが来た)。
この瞬間に高校生たちとの幼稚園雑魚寝一泊が確定する。高校生、歓喜。
約15人が所狭しと雑魚寝する寝室。
ベットなどもちろん無くござを敷いて寝る。
彼らの恋バナを聞きながら寝落ちするも、誰かが一晩中私の脇腹を足で蹴りまくるので極めて睡眠が浅くなった。一瞬、高校生が嫌いになりかけた。
また、幼稚園で飼っているニワトリが一晩中鳴いており、極めて睡眠が浅くなった。一瞬、ニワトリも嫌いになりかけた。ニワトリって朝メインで鳴く生き物ではないのですか。
翌日
さていよいよお別れの時間がやってきた。
最後に高校生たちと集合写真を撮ったのだが、シャッターを切る掛け声は、
\\ 1、2、3、弱いも~ん!(by 五条悟)//
であった。
高校生たちとは今でもInstagram、TikTocと繋がっている。
今度、Vinh市に行ったら街を案内してくれるそうなので楽しみにしている。
小さな田舎でできた縁を大切に。
ではまた!