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3 日本の「寛容さの低さ」と心の健康問題 ~マインドセットと子育ての視点から~

世界幸福度ランキングで、日本が「他人への寛容さ」で異様に低いスコアを示していることは多くの人に衝撃を与えました。加えて、近年増加している鬱や適応障害などの心の健康問題とも、この「寛容さの低さ」は無関係ではないように感じます。

世界幸福度ランキング2023(rootus再編)引用

今回は、硬直マインドセットがこの問題にどう影響しているのか、そして、子育ての場からしなやかマインドセットを広げることで何ができるのかを考えてみたいと思います。

日本社会における「寛容さの低さ」の背景


日本社会は歴史的に、集団内での調和や秩序を重視してきました。この文化は一見、協調性や礼儀正しさを育むように見えますが、同時に「失敗や違いを許容しにくい」という硬直的な側面も持っています。結果として、以下のような現象が見られます:
1. 結果主義の風潮
学校や職場で結果を重視しすぎるあまり、「過程や努力」が評価されにくい。
成績や仕事のパフォーマンスで人の価値を測る風潮が、人間関係にも影響を及ぼしています。
2. 失敗に対する厳しい目
ミスや失敗が「恥」や「能力不足」として批判されるため、挑戦を避ける文化が根付いています。
この環境では、自己肯定感が育ちにくく、他人にも厳しい態度を取りがちになります。
3. 違いを恐れる社会
「普通であること」や「周囲に合わせること」が求められ、個性や多様性が軽視される傾向が強い。

心の健康問題との関連性


こうした文化的背景の中で、鬱や適応障害が増加している理由の一つに、「心理的安全性の欠如」が挙げられます。心理的安全性が低い環境では、人々は次のようなストレスにさらされます:
1. 失敗や批判への過度な恐怖
失敗が「自分の価値を否定される」と感じやすい環境では、常に緊張感を抱えて生きることになります。
2. 自分を守るための過剰適応
周囲に合わせるために本音を隠し、無理を重ねる結果、自分自身を見失うことがあります。
3. 孤立感の増加
他人との違いを受け入れられない文化の中で、孤立感や疎外感を抱える人が増えています。

硬直マインドセットが招く悪循環


このような環境の背景には、硬直マインドセットが深く根付いていることが挙げられます。硬直マインドセットの社会では、「能力や価値は固定されている」という考えが強調されるため、以下のような思考が生まれます:
「失敗すると自分の価値が下がる」
「他人と違うことは危険だ」
「結果が全てで、過程や努力は意味がない」

この思考が、自分や他人への厳しさを生み、結果として寛容さを失わせると同時に、心の健康を脅かす要因にもなっているのです。

子育てから広げる「しなやかマインドセット」


では、どうすればこの硬直マインドセットを変え、寛容さを高めることができるのでしょうか? その一つの答えが、子育ての場からしなやかマインドセットを育むことです。

しなやかマインドセットは、「人の能力や価値は努力や学びによって成長する」という考え方を基本にしています。この視点を子どもたちに伝えることで、彼らは失敗や違いをポジティブに捉えられるようになります。

子育てが社会を変える可能性


子どもたちは社会の未来を担う存在です。彼らが寛容さを持ち、しなやかマインドセットを実践できるようになれば、いずれ日本全体の価値観にも影響を与えるでしょう。

具体的には、親や教育者が次のような視点を持つことが重要です:
1. 挑戦を歓迎する文化を作る
「失敗してもいい」と伝え、子どもの挑戦そのものを肯定する。
2. 結果ではなく過程を評価する
「どう努力したか」「どんな工夫をしたか」に注目し、それを認める声かけをする。
3. 違いを楽しむ姿勢を示す
親自身が他人の価値観や考え方を受け入れ、違いを尊重する姿勢を子どもに見せる。

終わりに


日本社会の寛容さの低さや心の健康問題を変えるには、短期間で解決する特効薬はありません。しかし、子育ての場でしなやかマインドセットを育む取り組みを広げることで、少しずつ社会全体の意識も変わっていくはずです。

まずは私たち自身が「結果ではなく過程を認める」視点を持ち、「失敗や違いを歓迎する文化」を身近な場所から育てていきましょう。それがやがて、寛容で幸福度の高い社会への第一歩になると信じています。

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