「がんにも効く」はウソ、やめとけ
従前より私は拙著やブログなどで、エセ科学にだまされるのを防ぎ、自然科学非専門の人がニセモノ科学とホンモノ科学を見分ける為の「クリティカルシンキング7ヶ条」(略称クリシンセブン)というものを提案しています。
これは完成形ではなく今後改訂されるべきものであり、その為にもいろいろな事例を見て分析していく必要があるでしょう。
医師・桑満おさむはその著書、「“意識高い系”がハマる『ニセ医学』が危ない!」(育鵬社、2019年)の中で、ニセ医学にダマされないための七箇条を提言しています。
こちらはニセ医学対策に特化したものですが、具体的で分かりやすいと思うので紹介します。
1) こんな言動には要注意!「始めると体から毒が排泄されたことを示す身体的変化が現れます」
2) こんな言動には要注意!「それは好転反応です」
3) 不妊に悩む人、妊娠中、育児中の人を狙う
4) こんな言動には要注意!「何でも治せます。がんでも治せます」
5) こんな言動には要注意!「海外では当たり前。日本は遅れている」
6) 難しい言葉を使ったもっともらしい説明
7) 批判に対して攻撃的
どうです?思い当たる言動、最近目にしていませんか?
桑満によれば、この内もっとも悪質なのは4)の「何でも治せます」というやつ。
特に、がん治療としての「がん放置論」、そしてニセ「免疫療法」の危険性を節を改めて強調しています。
専門家がデマを振りまく現実
桑満はサプリや食事療法など巷のニセ医療を批判しつつ、中でも一番悪質と断じるのが医師が施すニセ医療。
我々からすれば医師というのは、病気の時にまず頼るところの専門家ですよね。
著作中桑満は、医師によるニセ医療の具体例として「がん放置論」と「免疫治療」を挙げています。
がん放置論は近藤誠医師が提唱しているものであり、曰く「がんには本物と偽物(がんもどき)があり、本物はどうせ治療しても助からず、がんもどきはそもそもがんではないので治療する必要はない。いずれにせよがんは検査も治療も必要なし」というものです。
しかしその論拠として与えられているデータが、日本で言うところの江戸時代後期から昭和初期に当たる時期のもの。
桑満は、感染リスクの度合いや疫学データの正確性、時代背景から言ってこれらを論拠とするには不適切である、とします(詳しくは著書を参照)。
一括りにできない「免疫治療」
免疫治療に関しては、保険適用されているかどうかがカギ、とします。
桑満によれば、現在保険適用されている免疫治療は免疫チェックポイント阻害剤、サイトカイン療法薬、およびBCG療法の三つしかない。
これ以外の自由診療の免疫療法は全てニセ医療であり、受けるべきではない、と。
そして、本庶さんがノーベル賞を受賞したことで免疫治療に耳目が集まり、自由診療の免疫療法まで信頼されるようになった、と注意喚起します。
日本は遅れている、のか?
5)の「海外では当たり前。日本は遅れている」についてはどうでしょうか?
5Gの携帯電波が出始めの頃、「それが人体に有害なのはヨーロッパでは常識で日本は遅れている」なんての聞いたことないですか?
日本国内で見るサイトは、ほとんどの場合国内に設置されたサーバ上に置かれたもので、管理者(書いた人)は日本人で読み手としても日本人を想定しているものがほとんどでしょう。
日本の国内というくくりの中で「あ、自分の気づかない所で○○(日本以外の国・地域)は進んでいるんだな」という気分を惹起すると、それ以後の文章を信じたくなります。
万が一日本国内の常識と他国の常識が異なっていたとしても、その事情と事の正否とは分けて検討されるべき問題でしょう。
「○○は健康に良い(悪い)ことは日本ではあまり知られていないが海外では常識」式の言い回し、注意が必要です。
科学用語を駆使するだけのエセ科学に注意
6)の難しい言葉を使ったもっともらしい説明については、当ブログで散々取り上げてきたエセ量子力学が当てはまりますね(例えば「引き寄せの量子力学」のインチキ加減)。
「波動」や「エネルギー」、「次元」といった科学用語を駆使し、「量子力学」とか「○○科学」を名乗ることで科学の「権威」を身にまとったエセ科学商法、本当に多いですね。
桑満はこの本の最後に、ニセ医療を施す人たちを「沈むとわかっている藁を平気で渡す人たち」と表現しています。
現代日本では2人に1人が罹患するがん。
これはつまり、「がんも治せる」とするニセ医療にとっては市場が大きい、ということ。
それに加えて存在する、(彼らにとって都合の良い)がんに対する潜在的な恐怖感。
これらを利用したニセ医療に対しては、本当にうまい例えだなと私は思いましたが、あなたはどう受け止めますか?
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