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22_観察総論・全身状態の観察【救急救命士国家試験対策】


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国家試験定期試験出題内容のまとめ

【観察総論・全身状態の観察】

1. バイタルサイン

バイタルサインとは、生命維持に重要な体の機能を指標として評価するもので、以下の5つの要素があります。

  • 呼吸数: 1分間あたりの呼吸回数。正常範囲は成人で12~20回/分。

  • 脈拍数: 1分間あたりの心拍数。正常範囲は成人で60~100回/分。

  • 血圧: 血液が血管壁に与える圧力。成人の正常な収縮期血圧は120mmHg、拡張期血圧は80mmHg程度。

  • 体温: 平均的な体温は36.5°C~37.0°C。

  • 意識: 意識レベルの評価は、GCS(Glasgow Coma Scale)やJCS(Japan Coma Scale)で行われます。


2. SAMPLE

SAMPLEは救急現場での迅速な病歴聴取に使われる頭字語です。

  • S (主訴: Symptoms): 患者が現在感じている症状。特に痛みや呼吸困難など。

  • A (アレルギー: Allergies): アレルギー歴。薬物や食品、その他のアレルゲンに対する反応があるか確認します。

  • M (服用薬: Medications): 現在服用している薬や過去の服薬歴を確認します。特に降圧薬や抗凝固薬など。

  • P (既往歴: Past medical history): 患者の既往歴や慢性疾患、過去の手術歴など。

  • L (最終食事時間: Last oral intake): 最後に食事や水分を摂取した時間。手術や治療に影響することがあります。

  • E (受傷機転: Events leading to the injury/illness): 病状や外傷が発生した経緯を確認し、重大な受傷機転があるかを評価します。


3. 呼吸の評価

呼吸の評価は、視診(胸部の動きを確認)、聴診(呼吸音を確認)、およびSpO2(血中酸素飽和度)で行います。

  • 呼吸音の異常:

    • 呼吸音減弱: 肺気腫、無気肺、気胸、胸水貯留が原因で、肺に空気が十分に入らない場合に見られます。

    • 呼気延長: 気管支喘息や肺気腫、気道狭窄時に、息を吐くのに時間がかかる状態。

    • チェーンストークス呼吸: 深い呼吸と無呼吸が交互に繰り返される異常呼吸。呼吸中枢の異常や重度の心不全、脳の低酸素状態に関連します。

    • 奇異呼吸: 胸壁が吸気時に陥没し、呼気時に突出する。胸郭や横隔膜の損傷が原因。

    • 口すぼめ呼吸: 気管支喘息や肺気腫の患者に特徴的な呼吸で、呼吸困難を軽減するための戦略です。


4. 脈拍と血圧の評価

  • 奇脈: 心タンポナーデや収縮性心膜炎で見られる不整脈。吸気時に収縮期血圧が異常に低下することが特徴です。

  • 橈骨動脈で触知できる最低収縮期血圧: 80mmHg。

  • 大腿動脈で触知できる最低収縮期血圧: 70mmHg。

  • 総頸動脈で触知できる最低収縮期血圧: 60mmHg。この情報はショック状態の患者の評価に使用されます。


5. 意識障害と神経症状

  • 失語の観察: 失語症の診断には、言語理解、発語、復唱の順で評価します。言葉を理解し、発することができるか確認します。

  • 構音障害: 口蓋音(k音など)、口唇音(p音など)、舌音(t音など)を組み合わせて言葉が正常に発音できるか確認します。

  • 除皮質肢位: GCSスコアで運動応答が3点の場合に見られる。脳の大脳皮質が損傷を受けた状態。

  • 除脳肢位: GCSスコアで運動応答が2点の場合に見られる。脳幹に深刻な損傷がある状態です。


6. その他の重要ポイント

  • 皮下気腫: 空気が皮膚の下に入り込み、膨張する状態。肺や気管、気管支、食道の損傷が原因となり、縦隔気腫(胸腔内に空気が漏れる状態)を引き起こすことがあります。

  • 浮腫: 細胞組織の間に余分な液体が溜まり、腫れを引き起こします。心不全や腎不全、肝疾患などでよく見られます。

  • 甲状腺腫大: 甲状腺が異常に大きくなること。甲状腺機能亢進症や甲状腺腫瘍が原因となることがあり、首の前部に腫瘍が見られることがあります。

  • アダムス・ストークス症候群: 徐脈(異常に遅い心拍)によって、一時的な意識喪失や痙攣を引き起こす状態です。心臓の電気系統の異常が原因です。


問題

  1. バイタルサインは________数、脈拍数、血圧、体温、意識である。

  2. SAMPLEでSは主訴、Aはアレルギー、Mは________、Pは既往歴、Lは最終食事時間、Eは受傷機転を示す。

  3. 呼吸の測定方法として視診、________、血中酸素飽和度がある。

  4. 傷病者や家族、関係者から質問を得る方法として自由的質問、重点的質問、________的質問、多項目的質問、中立的質問がある。

  5. 呼吸音の異常で肺気腫、無気肺、気胸、胸水貯留では呼吸音________が見られる。

  6. 呼気延長が認められるのは________、肺気腫、気道狭窄である。

  7. 浮腫は細胞組織の細胞間質液と________のバランスが崩れて起こる。

  8. 皮下気腫は肺、気管、気管支、________損傷、縦隔気腫で見られる。

  9. 甲状腺の腫大を認めたならば甲状腺機能亢進症、________が疑われる。

  10. 脳動脈硬化症を基盤とした疾患では感情の________が多く、怒ったり、泣いたりする。

  11. 口すぼめ呼吸は________や気管支喘息の傷病者に特徴的である。

  12. チェーンストークス呼吸を伴うのは呼吸中枢の異常、重度の________、脳の低酸素状態である。

  13. 吸気時に胸壁が陥没し呼気時に突出する呼吸を________呼吸という。

  14. 奇脈は________、収縮性心膜炎に伴って見られる。

  15. 高度の徐脈では意識消失発作や________を起こすことがある。

  16. 徐脈により失神や痙攣が起こることを________症候群という。

  17. 橈骨動脈で触知できる収縮期血圧の最低値は________mmHgである。

  18. 大腿動脈で触知できる収縮期血圧の最低値は________mmHgである。

  19. 総頸動脈で触知できる収縮期血圧の最低値は________mmHgである。

  20. 失語の観察では________理解、発語、復唱の順番で失語障害を確認する。

  21. 構音障害では________音、口唇音、舌音などの音を組みあわせて構音障害の有無を確認する。

  22. 除皮質肢位のGCSの運動による応答は________点の評価である。

  23. 除脳肢位のGCSで運動による応答は________点の評価である。

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解答

  1. バイタルサインは呼吸数、脈拍数、血圧、体温、意識である。

  2. SAMPLEでSは主訴、Aはアレルギー、Mは服用薬、Pは既往歴、Lは最終食事時間、Eは受傷機転を示す。

  3. 呼吸の測定方法として視診、聴診、血中酸素飽和度がある。

  4. 傷病者や家族、関係者から質問を得る方法として自由的質問、重点的質問、直接的質問、多項目的質問、中立的質問がある。

  5. 呼吸音の異常で肺気腫、無気肺、気胸、胸水貯留では呼吸音減弱が見られる。

  6. 呼気延長が認められるのは気管支喘息、肺気腫、気道狭窄である。

  7. 浮腫は細胞組織の細胞間質液と血液のバランスが崩れて起こる。

  8. 皮下気腫は肺、気管、気管支、食道損傷、縦隔気腫で見られる。

  9. 甲状腺の腫大を認めたならば甲状腺機能亢進症、甲状腺腫瘍が疑われる。

  10. 脳動脈硬化症を基盤とした疾患では感情の動揺が多く、怒ったり、泣いたりする。

  11. 口すぼめ呼吸は肺気腫や気管支喘息の傷病者に特徴的である。

  12. チェーンストークス呼吸を伴うのは呼吸中枢の異常、重度の心不全、脳の低酸素状態である。

  13. 吸気時に胸壁が陥没し呼気時に突出する呼吸を奇異呼吸という。

  14. 奇脈は心タンポナーデ、収縮性心膜炎に伴って見られる。

  15. 高度の徐脈では意識消失発作や痙攣を起こすことがある。

  16. 徐脈により失神や痙攣が起こることをアダムス・ストークス症候群という。

  17. 橈骨動脈で触知できる収縮期血圧の最低値は80mmHgである。

  18. 大腿動脈で触知できる収縮期血圧の最低値は70mmHgである。

  19. 総頸動脈で触知できる収縮期血圧の最低値は60mmHgである。

  20. 失語の観察では言語理解、発語、復唱の順番で失語障害を確認する。

  21. 構音障害では口蓋音、口唇音、舌音などの音を組みあわせて構音障害の有無を確認する。

  22. 除皮質肢位のGCSの運動による応答は3点の評価である。

  23. 除脳肢位のGCSで運動による応答は2点の評価である。



練習問題

問題1
バイタルサインに含まれないものはどれか?
A) 脈拍数
B) 呼吸数
C) 体温
D) 血圧
E) 血糖値

答え: E) 血糖値


問題2
SAMPLEのうち、Aが示すものはどれか?
A) 既往歴
B) 主訴
C) 服用薬
D) アレルギー
E) 最終食事時間

答え: D) アレルギー


問題3
呼吸の測定方法として適切でないものはどれか?
A) 視診
B) 聴診
C) 触診
D) 血中酸素飽和度
E) 以上すべて適切

答え: C) 触診


問題4
傷病者や家族から情報を得るための質問方法に該当しないものはどれか?
A) 自由的質問
B) 重点的質問
C) 中立的質問
D) 集中的質問
E) 直接的質問

答え: D) 集中的質問


問題5
呼吸音が減弱する疾患に該当しないものはどれか?
A) 肺気腫
B) 無気肺
C) 気胸
D) 気管支喘息
E) 胸水貯留

答え: D) 気管支喘息


問題6
呼気延長が認められる疾患はどれか?
A) 気管支喘息
B) 肺炎
C) 心不全
D) 脳梗塞
E) 腸閉塞

答え: A) 気管支喘息


問題7
浮腫の原因として正しいものはどれか?
A) 細胞組織の脂肪分と水分のバランスが崩れる
B) 細胞組織の細胞間質液と血液のバランスが崩れる
C) 血中酸素濃度が上昇する
D) 体温の上昇による血管収縮
E) 血圧の急上昇

答え: B) 細胞組織の細胞間質液と血液のバランスが崩れる


問題8
皮下気腫が見られる可能性があるのはどれか?
A) 心臓損傷
B) 胆嚢破裂
C) 食道損傷
D) 小腸穿孔
E) 脾臓破裂

答え: C) 食道損傷


問題9
甲状腺の腫大が見られた場合、疑われる疾患はどれか?
A) 心筋梗塞
B) 肺炎
C) 甲状腺機能亢進症
D) 糖尿病
E) 肺気腫

答え: C) 甲状腺機能亢進症


問題10
脳動脈硬化症に関連する症状はどれか?
A) 記憶喪失
B) 感情の動揺
C) 失語
D) 皮膚の痙攣
E) 胸痛

答え: B) 感情の動揺


問題11
肺気腫や気管支喘息の傷病者に特徴的な呼吸法はどれか?
A) 腹式呼吸
B) 口すぼめ呼吸
C) 深呼吸
D) 頸式呼吸
E) 鎖骨呼吸

答え: B) 口すぼめ呼吸


問題12
チェーンストークス呼吸を伴う疾患に該当しないものはどれか?
A) 呼吸中枢の異常
B) 重度の心不全
C) 脳の低酸素状態
D) 気管支喘息
E) 以上すべて該当

答え: D) 気管支喘息


問題13
吸気時に胸壁が陥没し、呼気時に突出する呼吸の名称はどれか?
A) 奇異呼吸
B) 鎖骨呼吸
C) 腹式呼吸
D) 深呼吸
E) 狭窄呼吸

答え: A) 奇異呼吸


問題14
奇脈が見られる可能性がある疾患はどれか?
A) 心タンポナーデ
B) 肺炎
C) 動脈瘤
D) 胃潰瘍
E) 腎不全

答え: A) 心タンポナーデ


問題15
高度の徐脈で発症する可能性がある症状はどれか?
A) 意識消失発作
B) 高血圧
C) 吐血
D) 胸痛
E) 便秘

答え: A) 意識消失発作


問題16
徐脈により失神や痙攣が起こる症候群はどれか?
A) ウェルニッケ・コルサコフ症候群
B) ギラン・バレー症候群
C) カーサ・スピネリ症候群
D) アダムス・ストークス症候群
E) クッシング症候群

答え: D) アダムス・ストークス症候群


問題17
橈骨動脈で触知できる収縮期血圧の最低値はどれか?
A) 100mmHg
B) 90mmHg
C) 80mmHg
D) 70mmHg
E) 60mmHg

答え: C) 80mmHg


問題18
大腿動脈で触知できる収縮期血圧の最低値はどれか?
A) 100mmHg
B) 90mmHg
C) 80mmHg
D) 70mmHg
E) 60mmHg

答え: D) 70mmHg


問題19
総頸動脈で触知できる収縮期血圧の最低値はどれか?
A) 100mmHg
B) 90mmHg
C) 80mmHg
D) 70mmHg
E) 60mmHg

答え: E) 60mmHg


問題20
GCSの運動による応答で除皮質肢位の評価点は何点か?
A) 6点
B) 5点
C) 4点
D) 3点
E) 2点

答え: D) 3点

参考文献:救急救命士標準テキスト


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「聴いて学ぶ」救急救命士標準テキスト

22_観察総論・全身状態の観察
 ①音声解説
 ②聞き流し1問1答

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