[兼業]WEBシステム開発ベンチャーを経営する清水正樹さんのパラレルキャリア
清水正樹 プロフィール
大学在学中にWEB動画マーケティング事業で起業。その後、株式会社オールアバウトに新卒入社、メディア運営・EC事業の立ち上げなどに携わる。2011年に同社より株式会社エンファクトリーがスピンアウト。現在では同社の取締役副社長、株式会社ロベリア
取締役、株式会社飼育係 代表取締役社長、合同会社flasco 代表。
本業の傍ら、合同会社flascoを立ち上げ「社内交流ランチ」をローンチ
ーどんなきっかけで、合同会社を立ち上げたんですか?
本業のen factoryで働きながら、2013年にエンジニアと2人で「社内交流ランチ」というサービスを立ち上げました。立ち上げの数年前、当時はAll Aboutに在籍していたんですが、社内で「横のつながりを増やして仕事をやりやすくしよう」という話がよくされていたんですね。でも、会社主催の飲み会や運動会だと縦の圧力も働きますし、運営に新卒が駆り出されるものの社内のツテも少ないから効率が悪くなりがちで、別のいい方法はないかなと常々思っていました。
そこで、「普段のランチの時間を使って、システム化された交流制度を会社の予算でやったらいいんじゃないか」と思いついてはじめたのが「社内交流ランチ」という企業向けのサービスです。社員が自分のプロフィールやどんな人とランチに行きたいかなどの希望を登録しておくと、システム上のロジックでランチ仲間をマッチングします。ロジックによってシャッフルすることで、不平等感もなくなるしゲームっぽくなるので参加者が楽しんでくれるんですよね。ランチが終わったら、アンケートを入力して人事が確認して、どんなコミュニケーションが生まれたか会社側が知ることもできます。サービスを企業向けに広く展開するために、合同会社flascoを設立しました。
ー素朴な疑問なんですが、どうして合同会社にしたんですか?
BtoBのビジネスをするなら、個人事業主より法人の方が企業から信頼されやすいので法人化しました。株式会社ではなく合同会社にしたのは、小回りがきくのでスモールビジネスにちょうどいいからですね。株式会社は決算やら取締役会やら何かにつけて書類が必要ですし、設立時のコストも高くなります。資金調達をせず大企業にがっつり売り込む予定もなければ、合同会社で十分なケースも多いと思います。
ニッチな需要を見つけて、ECネットショップ向けにメッセージカード事業を開始
ー社内交流ランチの次は、どんな事業をはじめたんですか?
今もフラスコの収入のメインになっている、EC事業者向けのメッセージカードASPを立ち上げました。ECネットショップで、ギフトのラッピングをするときにメッセージカードを同封するサービスです。贈り物をするときに「すてきなカードに自分のメッセージを入れたいな」というニーズは多いと思うんですが、ECサイトではそんなサービスはほぼなかったんですよ。当時、メッセージを同梱したいときは、送付先情報の備考欄に無理やり書き込むとかアナログでオシャレじゃない方法でやるしかなかったんですね(笑)。だから、手軽に写真を選んで、自分でメッセージを入れて購入ボタンを押すだけで、オリジナルのメッセージカードを同梱できるサービスをつくりました。
ー正直なところ、勝算はあったんですか?
類似サービスの少なさとマーケットサイズから考えて、いけると思ってましたね。楽天で買い物をするときもメッセージカードの同梱サービスはほぼなかったので、ニッチな需要をつかめるはずだと思いました。かつ、ニッチなので毎月数千万円の売り上げにはならないので、そのサイズのマーケットなら大手の強豪が後乗りで参入してくるリスクも少ないと踏みました。新規事業を立ち上げるときは、「アップサイドはどれくらい?マーケットサイズはどれくらい?」と考えて判断するものですが、ある程度の規模の会社だと月次数百万円程度にしかならない事業には参入しにくいですから。スモールビジネスって、拡大し続けなきゃいけない訳じゃないんです。競合がワイワイいるところで勝負すると続かないし勝ちにくいですよね。規模は小さくても、安定的に続いて、日々ブラッシュアップを続けながら利益を出すことが大切です。
スモールビジネスの成功のカギは、「安定性」と「メンバー」
ー本業は副社長、兼業も経営者でどうやって両立してるんですか?
サービスをはじめたころでも、僕は月に10時間くらいしか使っていませんでした。事業の骨組みをつくって、その後は隙間時間に興味がありそうな会社にメールを送るくらいですね。最近はインバウンド中心で、企業への新規開拓営業もしていません。事業をはじめようとする人は、どうしても「自分の手足をフルで使わないと価値が出ない」と思い込みがちです。でも、ASPのように価値が提供できるシステムを作ってしまえば、毎月の売り上げが立つんです。スモールビジネスの作り方のコツですね。エンジニアなどスキルのある人にとっては、企業向けのニッチな課題を解決する月額サービスは、仕組みさえつくれば安定して収益化しやすいのでオススメですね。
ーこれから、flascoをどうしていきたいですか?
今後のことは内部で検討中ですね。少人数でやるビジネスの方向性は、参画しているメンバーの志向や得意分野に大きく左右されます。そういう意味で、スモールビジネスってバンドみたいですね。メンバー全員の音楽性が合って、それぞれのパートで力を活かさないと、いい音楽が生まれないのと同じ。志向が同じ仲間を見つけて、違う得意分野を掛け合わせることができれば、ビジネスの走り出しはスムーズになると思います。起業を目指しつつ実現に時間がかかっている人は、バンドを組むくらいのイメージでやってみてもいいかもしれませんね。
文・編集:高村エリナ
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