本稿のテーマは、「シスジェンダーによるトランスジェンダーの歴史の乗っ取り」問題です。
1800年代のイギリスに生きた「アーネスト・ボールトンとフレデリック・パーク」(Thomas Ernest Boulton and Frederick William Park)。
インターネットで検索すると、「女装家」や「ドラァグクイーン」であったと紹介されます。
たとえば、BBCの2023年2月1日「History's most incredible drag queens and kings」という記事。
しかし、その生涯を読む限り、彼女らは「トランスジェンダー」であると表現するのが、妥当だと思われます。すなわち、トランスジェンダーであるが、時代背景的に「B面」(男の姿)を持たざるを得なかったのではないかということです。
当時はトランスジェンダーという言葉はなかったでしょう。が、仮に彼女らが今の時代にワープできるとしたら、トランスジェンダーとしてのアイデンティティをお持ちになるのではないでしょうか。
たとえば、Wikipediaにある以下のような点です。
トランスジェンダーの「自分史」に出てきそうなエピソードがいくつか見られますね。GID診断、おりるかもしれません(譬えの話ですよ)。
以上より、彼女らのことを「女装家」「ドラァグクイーン」(いずれもシスジェンダーによって名乗られるのがほとんど)とアイデンティファイするのは、結構微妙でしょう。
彼女らをシス男性(ゲイ)であったと表現するのは、トランスジェンダーの歴史を、(ゲイを含む)シスジェンダーの人たちが奪ってしまっているかもしれない、ということです。
場合によっては、人を傷つける可能性すらあるということは、理解されてほしいものです。
次の文献は、両名について語るには必読でしょう。
また、彼女らを「アーネスト・ボールトン」と「フレデリック・パーク」という男性名で呼称することも、彼女らにとっては侮辱的かもしれません。
Joyce(2018)も、彼女らを「ファニーとステラ」と呼んでおります。
歴史叙述において、この問題(すなわち、シスジェンダーによるトランスジェンダーの歴史の乗っ取り問題)はもっと問題視されていくべきでしょう。
以下、Wikipediaの記事をGoogle翻訳したものを転載しておきます。