見出し画像

SNS時代の就職・転職市場における違和感

2008年4月に新入社員として外資系大手人材会社に入社し、リーマンショック、派遣法改正、労働契約法改正、同一賃金同一労働、障害者法定雇用率の上昇 etc 常に変化する労働市場・転職市場に身を置いて13年目。

ますます就職・転職市場への違和感が強くなっている。

本日は、就職・転職市場に抱く12年間の違和感を現代の就職・転職市場の成り立ちを含めて書いてみたいと思う。

1.求人媒体の歴史と仕組み

まず求人媒体の歴史を遡ると1960代まで遡ることになる。

まだTVやラジオなどのメディア広告も数は少なく、費用も高かった時代。
インターネットは当然なく、各商店は人材を募集したくても求職者へ一斉にスムーズにリーチする方法は存在していなかった。

隣接する県はもちろん、となり町にさえ求人情報を掲載する方法がなかった。

そこで登場したのが、新聞や折り込みチラシを活用した求人媒体であり、これが人材業界の誕生である。

日本に求人媒体が存在する理由の起源はここにある。

つまり、ポイントは、求職者へリーチする方法が存在していない!

だからこそ、各商店は求人媒体やメディアに費用を支払い、代理でリーチしてもらう必要がある。

これが求人媒体の仕組みである。

現代の求人媒体の特徴としては、マスメディアになるため求人職種を問わず、企業名や求人を宣伝するツールであり、求人媒体は広告の意味合いが強くなる。

そのため、専門職よりも一般職・営業職、理系より文系と日本の中で経験した人数の母数が多い職種において効果を発揮しやすくなっている。

また、紙媒体かWEB媒体か、掲載サイズや掲載期間によりピンキリで数万円単位から100万単位のものも存在するが、集客力を保有している媒体の1回の平均掲載相場は40~80万前後ではないだろうか。

1回の求人掲載で複数名の採用が実現できると採用単価を圧縮することができるが、採用が実現しないと、2回、3回と求人掲載をしなければいけなくなってしまう。

2.転職エージェントの歴史と仕組み

では、転職エージェントはどうかというと、
歴史を遡るとなんと江戸時代から存在していたと言われ、手工業の職工などが中心に仲介業者が存在しており、現在のホワイトカラーやエンジニアを中心とするイメージとは大きく異なる。

インターネットを活用したWEB求人媒体が誕生して以降、拡大の一途を辿る中で、現在の転職エージェントによる転職市場を形成した大きな要因としては、1999年の職業安定法の改正に伴う、民間の有料職業紹介事業の原則自由化だ。

対象職種が広がり、2000年12月から2002年1月までの「ITバブル崩壊」による景気悪化が先行投資型の求人媒体にリスク意識を抱かせ、成功報酬型の転職エージェントの仕組みを根付かせた。

転職エージェント(人材紹介サービス)の特徴としては、成功報酬という名の通り、原則求人掲載は無料、求職者の採用が決定した際に紹介料が発生する仕組みである。

求職者へリーチできるかどうかもわからないのに費用を掛けるのは嫌だ。

リクナビ、マイナビ、en-japanなど求人媒体の種類が増え、求人媒体を活用する企業数も増加する中で、費用対効果を疑問視する企業が増え、成功報酬型の転職エージェントが2000年代以降、急成長を遂げたのである。

成功報酬型は、先行投資のリスクを避ける代わりに、採用時に想定年収の35%(300万円の場合、105万円)と高額な紹介料が発生する。

そのため、複数名の採用を計画する場合には費用対効果として適しておらず、専門職などのピンポイント人材を採用する際には効果を発揮しやすい特徴を持つ。

3.人事部の新卒・中途採用の違和感

求人媒体・転職エージェントの歴史と仕組みを認識したうえで、現代の人事部の人材採用における機能の違和感を説明したい。

もちろん全てではないが、個人的な感覚としては80%以上の人事部に対して違和感を感じざるを得ない。

日本において人材採用を補完する外部サービスは主に求人媒体と転職エージェントの2つである。

いずれも示した通り、

1)求職者へリーチする方法が存在しない
2)求職者へリーチするかどうかわからない

この2つに当てはまる場合には、外部サービスは費用対効果を高めることができる。

では、現代はどうだろうか?

2010年頃からFacebook、Twitterが日本全国に広がり、今ではLineにInstagramとSNSを通じて、企業と個人が繋がるチャンスが無限に存在している。

求人企業が求職者にダイレクトに語り掛けることさえできれば、費用を掛けず、効率的に採用することも夢ではない!!

まさにこれを実現してこそ人事部の採用力と言えるのではないか??

しかしながら、現実は異なり、SNSを多用している企業はごくわずか。

更新頻度が多い、炎上したらどうしよう、会社の顔として発信するのが不安、、、

確かにハードルは高いのかもしれないが、SNSで企業のファンを増やしていくことで、驚くほどダイレクトに採用を完結することができる事実は否定する余地はないはず。

しかし、1990年以降続くインターネットによる求人媒体や転職エージェントのサービス以外に活用したことがない人事部には、どうすれば良いのか正解がわからないというのが本音ではないだろうか。

30年近く同じ手法を繰り返し、それが採用だと思い込むあまり、新たな思考が生まれないのである。

現代の人事部は採用担当というより、求人媒体や転職エージェントなどの外部サービスが集めてくれた求職者の母集団を仕分けして捌く作業を行っているに過ぎない。

現場の課長・部長・役員・社長の面接に向けたお膳出てであり、配属後の低評価による社内クレームを避けるがためのスクリーニングをしているに過ぎないのではないか?

人事部の在り方について、日々社内で議論がされているのだろうか、甚だ疑問が残るばかりだ。

4.求人媒体と転職エージェントの罠

この状況に笑いが止まらないのが人材業界である。

人材業界として求人企業がSNSを活用し、ダイレクトに求職者に繋がってしまうと商売は成り立たない。

できるだけ求人企業には求職者に辿り着かずに迷子になってほしいと願うばかりだ。

求人企業がSNSを活用した場合、求職者と出会う確率は『1 対 複数』である。

しかし、求人媒体を活用した場合、求人企業は自ら競合他社の求人と求職者を奪い合うことになるため確率は『複数 対 複数』になるのだ。

つまり、人材に出会う確率が著しく下がるために、求人企業は多額の費用を求人媒体に投下する必要性が出てくるのである。

それでは、転職エージェントではどうだろうか。

先行投資型ではないから、求職者と出会うまでに時間を要しても問題ないのではないか?

そういうわけではない。

ほとんどの企業が求人媒体と転職エージェントの使い分けができておらず、一般事務、営業事務、経理などの事務職も専門職と合わせて転職エージェントに依頼している。

本来、リーチするかどうかからない母数の少ない専門職種に対して、転職市場から人材を見つけ出すことは難易度が高く、いつ見つかるかもわからない。

だからこそ、先行投資リスクを避けて成功報酬。

だからこそ、成功報酬額を想定年収の35%に設定している。

しかし、事務職であればどうだろうか?

人材のデータベースを保有してさえいれば、探す手間はほとんどなく、短い期間で採用に繋げることができるため、転職エージェントは人件費を最小限に抑え、求職者を紹介することができる。つまり、簡単に収益を伸ばすことができるのである。

そして、転職エージェントの場合、求職者と接点を密に持ち、コントロールできるため仮にA社の紹介料が35%、B社の紹介料が40%だとすれば、A社ではなく、B社に優先的に求職者を紹介していくことになる。

つまり、求人企業はSNSを駆使してダイレクトに求職者に出会う機会があるにも関わらず、敢えて求人媒体と転職エージェントの操作性が存在する箱に飛び込んでいることになるのだ。

現在、無料の求人媒体も多くなっているが仕組みは同じである。

なぜ無料なのか?

それは求人数を多くなれば、求人は埋もれてしまう。埋もれてしまえば結局求職者の目には届かないから、企業は費用を投下してリスティング広告を行う。

ここが狙いである。

求人企業が少子高齢化の中で先行投資のリスク意識が増加すると、転職エージェントは人材不足を理由に、事務職や新卒採用などノンスキルやポテンシャル採用であっても紹介料を35%から40%に釣り上げていく。

ここが狙いである。

本当はそれほど深刻な人材不足と言えるほどでなくても、求職者とダイレクトに接点を持つ術を持たず、就職・転職市場を理解していない人事部はまんまと騙されてしまうのだ。

5.現代の人事部のあるべき姿

もうお分かりだと思うが、人事部の採用部隊の役割は、集まった人材の母集団を捌くことになく、母集団を開拓することに価値がある。

■人事部がやるべきこと

1)大学への就職課との連携強化
2)大学内での説明会や各種イベントの提案
3)SNSによる社内イベントや業界知識などの継続的なアップ
4)地元の交流会やイベントへの参加

これはごく一部ではあるが、つまり、人事部の仕事は営業であり、広報活動である。

いかにファンを構築するか。

とはいえ、ファン獲得の道のりは長く、2年、3年のスパンで検討する必要がある。

現状は通常通り、求人媒体と転職エージェントに頼りながらも、ターゲットに合わせて、使い分けたり、求人内容や選考過程などプロセス改善をすることで費用対効果を高める必要がある。

2年、3年後に1万人以上のファンが獲得できたのであれば、求人媒体や転職エージェントへの依存度を減らし、フォロワーに向けて求人を発信して、求職者にダイレクトに語り掛けていこう。

現代の採用のプロフェッショナルは、営業やSNSのプロフェッショナルにならなければいけない。

『企業は人なり』

採用戦略は営業戦略であり、経営戦略である。

30年以上も変化のない就職・転職市場に対し、疑問を抱き、現代に合わせた採用方法を確立させることが、10年、20年続く企業経営にとって何よりも重要な根幹である。


以上、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

私の経営するキャリアートは障害者専門の就職支援会社として活動しながらも、個人的には人材業界での経験値と経営者としての経験値を活かして、経営コンサルや人事コンサルの依頼も受けており、近年はますます違和感を募らせているところです。

現代の就職・転職市場に疑問を抱き、停滞した人材市場に新たな刺激を与えるために現在2020年12月に向けて新たな取り組みを準備中ですので、ぜひ期待していてください。

また、障害者と健常者の共生社会を作るべく、広報活動も積極的に行っていきますので、フォロー&応援コメントもいただけると嬉しいです♪♪

6.その他キャリアートの活動について

1)名古屋MID-FM761ラジオ放送『パラちゃんねる』
■Youtube(動画配信)

ぜひチャンネル登録をお願いします!!
#パラちゃんねる にてコメントもお待ちしています♪♪

■Podcast(音源配信)

『パラちゃんねる』は障害者関連施設や障害者アスリートをゲストに招き、インクルーシブ社会の実現を考えるラジオ番組。 
Podcastからはリクエスト曲も聞けますよ♪♪

■『パラちゃんねる』って?
『パラちゃんねる』は障害者関連施設や障害者アスリートをゲストに招き、インクルーシブ社会の実現を考えるラジオ番組。
放送局:名古屋MID-FM761
放送日:第2・第4土曜日 午前11時00分~11時15分
出演者:中塚翔大 ハヤフジナオキ etc
■皆様からのリクエスト曲、質問・感想もお待ちしています。

次回5月23日(土)の放送はブラインドサッカーチーム Mix Sense名古屋の代表 杉山弘樹さんをゲストにお招きしますので、お楽しみに♪♪

2)障害者雇用の面接対策のコツ


■Twitter

■Facebook

■Instagram


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?